長期投資で成功するにはどうしたらいいか

この企業は成長しそうだから株は上がるだろう―。このような考えで株式投資を行ってはいないでしょうか。一見正しそうに見える話ですが、そこには大きな落とし穴が潜んでいます。半世紀以上にわたる株式のリターンを研究した著作『株式投資の未来』から解説します。

『株式投資の未来』概要

著者でペンシルベニア大学ウォートン校教授のジェレミー・シーゲルは、S&P500採用銘柄について、1950年から50年以上持ち続けた場合のリターンを分析しています。その結果は意外なものでした。

わかりやすい対比として例示されているのが、IBMとスタンダード・オイルです。IBMはコンピューター関連、スタンダード・オイルは石油会社です。IBMは時代の最先端を追ってきた企業であり、スタンダード・オイルは旧態依然とした業界に身を置いています。

業績では明らかにIBMが成長しています。ところが、両社の株式を持ち続けた場合のリターンを比較すると、スタンダード・オイルが勝っているのです。この2社に限らず、S&P当初採用銘柄(いわゆるオールド・エコノミー)のリターンはその他の新規採用銘柄の運用成績を上回っています。

成長のわな

成長する企業に投資をしても、思うようなリターンをあげられないことを「成長のわな」と言います。

成長のわなに陥る理由はシンプルです。誰もが成長すると思う企業の株はみんな買いたがります。買いたいと思う人が多ければ多いほど、株価は上昇します。その結果、企業が本来持っている価値を大きく上回る株価が付いてしまうのです。

期待が期待を呼んで、株価が上がればそれでいいというわけにもいきません。実体のない株価上昇とは”バブル”のことです。資本主義の歴史において、バブルは発生と崩壊を繰り返してきました。成長ばかりを追い求めていたら、いずれバブルに巻き込まれてしまうでしょう。

メッキから純金を探すか、砂利から砂金を探すか

成長のわなにはまらないためには、バリュエーションを徹底的に重視することです。バリュエーションとは、PERなどの投資指標のことです。成長期待が高まっている企業のPERはとても高く、ときには100倍を超える数値が付いていることもあります。このような銘柄には手を出さないことです。

だからといって、PERの低い銘柄ばかりに投資すればいいというわけでもありません。PERが低いということは、衰退しているか、他の銘柄と比較して高いリスクを取っている可能性があるということです。

唯一の正解は、「市場の期待を上回る業績を上げる銘柄」に投資することです。投資の世界では「期待どおり」の成果を出しても平均以上のリターンを上げることはできません。年率50%で急成長していても、市場の期待が80%だったなら株価は下落するでしょう。逆に成長率が1%でも、市場の期待が0%なら株価は上昇します。

あとは探し方の問題です。金メッキが施された石の中から本物の金を探すのか(成長株)、砂利の中から砂金を探すのか(割安株)の違いです。前者はすべて純金として高額な代金を払わなければなりませんが、後者は砂利を買うためのわずかな金額を払えば十分です。前者はすべてメッキの可能性がありますが、後者は地道に探し続ければいずれ見つかります。これがバリュー株投資の本質です。

「複利効果」と「割安株投資」

『株式投資の未来』には、もう一つ重要な教訓が書かれています。配当再投資の重要性です。

オールド・エコノミー企業のリターンを高めた重要な要素が、配当利回りの高さだったのです。研究では、配当は同じ銘柄に再投資することにしていましたから、複利効果で雪だるま式に資産が増えていったのです。

また、市場からの期待が高くないオールド・エコノミー企業のバリュエーションは長い間割安に抑えられているので、再投資する際も高値づかみすることはありません。冒頭のケースでは、スタンダード・オイルの勝因は「複利効果」「割安株投資」ということになります。

研究は一つの銘柄を保有し続けることを前提としていましたが、受け取った配当をより割安な株式に投資することができれば、より高いリターンを上げられた可能性があります。

長期投資で成功するには・・・

以上の話を総括し、当社では「長期的に生き残る企業の株を、市場の期待が落ち込んだ時に割安な価格で買い、配当をさらに割安な株に再投資する」方法を推奨しています。

上記は半世紀以上にわたる長期投資の研究のため、短期では効果を発揮しないこともあるでしょう。しかし、長期ではこれからも有効であることは間違いありません。一生を見据えた資産運用をするなら、つばめ投資顧問が必ずお役に立ちます。

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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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