【サンリオ】株価40%下落!今が買い時?懸念と将来性を解説

一時期、大きな注目を集め、株価も大きく上昇していたサンリオですが、ここに来て株価が下落しています。

今回は、長期的な観点からサンリオが今後どのような状況になりそうか、そして足元で株価が下がっている原因について解説します。サンリオに興味のある方は、ぜひ最後までご覧ください。

サンリオ株価の現状と変動の背景

2024年初頭からの株価推移

サンリオの株価は、2023年から特に2024年にかけて大きく上昇しました。2024年の半ばには約3,000円だった株価が、一時期は8,000円を超える水準にまで上昇しました(約2.5倍の上昇)。しかし、足元では下落し、現在は約5,300円となっています。

出典:Google

株価変動の一般的な要因と注目銘柄のリスク

株価が大きく上がった銘柄は、どこかで反転して下がるのが一般的です。特にサンリオのように注目度の高い銘柄は、ボラティリティ(アップダウン)が大きくなる傾向があります。

また、株価が上昇した結果、割高になりすぎたという側面も考えられます。その状態で、成長鈍化などを示す少しでも悪い材料が出ると、株価は下がりやすくなります。

投資家として留意すべき点として、大きく上昇し注目を集めている銘柄ほど変動率が大きい点です。成功すれば大きな上昇益を得られますが、少しのミスで大きな損失を計上する可能性があるため、注目されている銘柄ほど慎重になった方が良いと言えます。

株価急上昇を支えた実態と経営改革

サンリオのこれまでの株価上昇は、単なる人気化やテーマ的な上昇ではなく、実態を伴うものであったと考えられます。これは過去の業績推移を見れば明らかです。

長期的な業績の変遷とコロナ以降の急伸

2001年からの長期的な業績推移を見ると、サンリオは長らく低迷していました。営業利益は赤字すれすれになったり、一時的に回復してもまた下がるという繰り返しでした。

出典:マネックス証券

しかし、コロナ禍以降、特に2022年からは利益が急激に伸びており、グラフで見ても急上昇していることがわかります。

辻社長による経営改革と戦略転換

この急成長の背景には、サンリオの経営改革が間違いなく存在します。特に、創業者の孫にあたる現社長の辻さんが就任して以来、サンリオは大きく変わりました。

新たな戦略は、「サンリオのキャラクターを活かし、その価値を増大する」という一点に全振りしたものです。

キティちゃん依存からの脱却とIP多角化戦略

かつてはハローキティが大人気でしたが、ブームとしては落ち着いている状況でした。しかし、現在のサンリオは、キティちゃんだけでなく、ポムポムプリンやマイメロディなど、他のキャラクターの人気が非常に高まっています。総選挙なども行われ、ある意味でキャラクター間の熾烈な争いが繰り広げられています。

業績拡大の秘密は、キティちゃん一人に任せるのではなく、様々なキャラクターがそれぞれ「何十周年」といったイベントを起こすことで、次から次へと話題を提供できるようになった点にあります。直近のキティちゃん50周年に加えて、キティちゃん以外のキャラクターが生きてきたことが、成長の大きな要因です。

グローバル展開と高収益ライセンスビジネスモデル

海外市場での貢献度の高まり

サンリオは、国別で見ても大きく成長しており、元々日本が中心でしたが、日本以外の地域も非常に頑張っています。特に中国とアメリカ市場での貢献が目覚ましいです。

グラフを見ると、米国と中国を中心とするアジアが利益をグイグイと伸ばしていることが確認できます。

出典:マネックス証券

米国市場での戦略的な取り組み

米国での成功の一例として、YouTubeチャンネルの活用があります。サンリオはYouTubeでアニメを流す戦略を打ち出しました。チャンネル「Hello Kitty Friends」の登録者数は、今や453万人に上ります。

アニメによってキャラクターにストーリーを持たせ、視聴者がキャラクターを好きになり、その結果、グッズを購入するという流れを作り出し、売上と利益を大きく伸ばしました。これは、これまで偶然性に頼りがちだった海外展開を、戦略的実行していることの表れです。

利益率の高いライセンスビジネスの貢献

サンリオのビジネスモデル、特に海外でのビジネスの多くはライセンスビジネスです。これは自社でグッズを製造するのではなく、サンリオのキャラクターを日用品や玩具などの商品に使用することを許可し、その使用料として収益を得る仕組みです。

このビジネスの最大の強みは、原価がかからないことです。メーカーと契約を結ぶだけで売上や収入が得られるため、元手がかからない高収益ビジネスとして、利益の急上昇に大きく貢献しました。

株価が下がる「本当の」原因:ブームの一巡と市場の懸念

絶好調な直近の全体業績

これだけ成長の実態があり、経営改革も進んでいるため、サンリオが注目されるのは当然です。

にもかかわらず株価が下落しているのはなぜでしょうか。実は、業績自体は依然として悪くありません。直近の決算説明資料では、上期の業績は売上高が前年同期比39.6%増、営業利益が同66.1%増と絶好調です。通期でも情報修正が実施されており、売上高27.2%増、営業利益35.5%増を見込んでいます。

出典:サンリオ決算説明資料

また、株価の期待値を示すPER(株価収益率)を見ても、以前は40倍を超える水準(2024年終盤)だったのに対し、現在のPERは約27倍であり、極端に高すぎる水準ではありません。このことから、全体業績やPERだけを見れば「割安ではないか」と考える人もいる状況です。

懸念材料1:米国市場の急速な鈍化

株価下落の原因は、個別市場の細かい数字に現れています。

これまで業績拡大を牽引してきた米国市場の利益が、2026年3月期に入ってから2期連続で下がってしまっているのです。

出典:サンリオ決算説明資料

米国におけるブーム的なところが一巡し、終わってきたのではないかという懸念が生じています。

実際、質疑応答資料などからも、米国の小売業者がサンリオキャラクターグッズの仕入れを少なくしている(在庫が積み上がってきたため、発注を抑えている)という状況が読み取れます。

懸念材料2:中国・アジア市場のボラティリティと一時的なブーム

現在のサンリオの業績を支えているのは、日本とアジア(中国)の好調さです。しかし、サンリオが根本的に抱える問題として、流行り廃れによる変動の大きさ(ボラティリティ)があります。

特に中国市場は、いわゆる「トレンディトイ(流行り物のおもちゃ)」が一時的に伸びる傾向があり、その名の通りブームがあればどこかで縮む可能性があります。足元で好調な日本市場に関しても、万博関連グッズによる伸びなど、ブーム的な要素が含まれており、万博終了後の状況が懸念されます。

現在は、米国が鈍化しても日本やアジアが好調という形で「デカップリング」がうまくいっていますが、これが全ての地域でしぼんだ時は厳しくなる可能性があります。株価は、こうしたブーム終焉の可能性を織り込み、調整期に入っていると見ることができます。

長期的な成長に向けた次のステージ:コスト増を伴う土台作り

これまでの成功と今後の課題

辻社長による改革以前は、サンリオの経営はグダグダで、素晴らしいキャラクターIPを持ちながらもそれを発揮できていませんでした。これまでの成功は、YouTube活用やライセンス契約など、比較的お金をかけずに「やれば伸びる」施策が中心でした。

しかし、ブームが去った後、業績を維持し、さらにベースを広げていけるかどうかが、長期的な焦点となっています。

「塔」のビジョン:IPを軸とした接点拡大戦略

サンリオは、長期ビジョンとして「塔」と呼ぶ戦略を掲げています。これは、サンリオのIP(キャラクター)を軸に、笑顔になる人数を増やし、サンリオに費やす時間を増やすことを目指すものです。

出典:サンリオ決算説明資料

具体的には、単に物を売るだけでなく、商品購入、体験、動画コンテンツの視聴、ゲーム、応援、勉強など、多様な接点を増やすことを計画しています。最近では、他社IP(例:ちいかわ)との連携など、様々な取り組みを進めています。これはサンリオの土台を築く上で非常に重要な活動です。

成長のための先行投資:数十億円規模の支出

これまでの経営転換では、お金がかからない方法で利益を出してきましたが、ここからさらに広げようとすると、資金が必要になります。

サンリオは最近、積極的な投資を始めています。

  • アニメ制作会社IGポートとの資本業務提携に17億円を支出。
  • バーチャルコンテンツ制作会社である「具現化」を子会社化。
  • 大分ハーモニーランドのリゾート化計画に数百億円をかける計画。

これらの投資は、長期的な成長に必要な「塔」を完成させるために必要ですが、当然、目先の業績を一時的に圧迫する可能性もあります。

長期投資家にとってのサンリオの魅力

調整期を乗り越えた先に見えるもの

現在のサンリオは、株価的にも業績・事業的にも「調整期」にあると言えます。目先では、米国でのブーム終焉懸念や、長期成長のための投資によるコスト増が足かせとなり、業績が一時的に頭打ち、あるいはマイナスになる可能性もあります。

しかし、経営陣は長期的な成長のために必要な土台作り(お金のかかる施策)を「良いこと」として実施しており、長期投資の目線で見れば非常に評価できる状況です。現在のPER27倍は、割高すぎず、妥当感がある水準です。

高いIP戦略実行力と今後の期待

サンリオのIP戦略(YouTubeの活用やキャラクター総選挙など)は非常に優れており、他の日本のIPを持つ会社のお手本になるレベルです。

長期的な成功の可能性として、2028年にはアメリカで映画が公開される予定があります。これは、任天堂の『スーパーマリオブラザーズ』の映画が成功したように、サンリオでもうまくいく可能性を秘めています。サンリオは任天堂やポケモンと並び、IPでお金を稼ぐ方法を身につけてきた企業の一つと言えるでしょう。

サンリオは、ゲーム機のような唯一無二のプラットフォームを持つ任天堂とは異なり、無形資産(IP)が中心ですが、根強いファンが多いという強みがあります。

高値で掴んでしまった投資家にとって、短期的にはすぐに株価が上がらない可能性が高いですが、長期的な視点で見れば、良い方向性を持った会社であり、注目に値します。焦らず、経営の中身を見て投資することが、結果的に良いパフォーマンスを生むでしょう。

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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