現在、株式市場で大きな盛り上がりを見せているのが「フィジカルAI」という概念です。このテクノロジーがどのようなもので、私たちの未来をどう変え、そしてどの企業がその恩恵を受けるのかを詳しく解説していきます。
目次
フィジカルAIの火付け役:NVIDIAジェンスン・フアン氏の予言
フィジカルAIに大きな注目が集まった発端は、半導体大手NVIDIAのジェンスン・フアンCEOの発言にあります。トレードマークの革ジャン姿で知られる彼は、動画を通じて「次はヒューマノイドロボットだ」と明言しました。
NVIDIAは単なる半導体メーカーの枠を超え、AIをロボットに組み込み、現実世界(フィジカル)で人間の代わりとなる存在を創り出そうとしています。この「世界を動かすAI」という発言は、投資家にとって極めて大きなインパクトを与えました。
テクノロジーの進化:プログラミングから「学習」するロボットへ
これまでのロボットは、決められた動作を正確に行うために複雑なプログラミングが必要でした。しかし、NVIDIAが提供する開発プラットフォーム「GR00T(グルート)」により、AIが自ら機械学習を行い、人間に近い動きを習得する開発が驚異的なスピードで進んでいます。
一見するとスローな動きに見えるかもしれませんが、AIに「何を識別し、どう動くか」を学習させることで、ドラえもんのような世界がいよいよ現実味を帯びてきているのです。
市場のポテンシャル:2035年に11兆円市場へ急拡大
日経の報道等によれば、フィジカルAI市場は2035年に約11兆円規模に達すると予測されています。これは現在の市場規模の25倍〜30倍という驚異的な成長率です。
特に期待されているのが、人間がやりたがらない「きつい、汚い、危険」といった、いわゆる3K現場での代替です。介護現場や肉体労働の分野で、これまで「人間にしかできない」と思われていた作業をロボットが代行できるようになれば、市場のポテンシャルは計り知れません。
社会実装への高い壁:技術・コスト・信頼性の課題
一方で、バラ色の未来だけではありません。社会実装までには多くの壁が存在します。
- メンテナンスの壁:車のメンテナンスのように、オイルを差すといった物理的な維持管理が不可欠ですが、そのコストを誰が負担するのかという問題があります。
- 費用の壁:一般家庭に1台導入できるレベルまで価格を下げられるかが焦点です。ルンバのような感覚で普及するにはまだ時間がかかるでしょう。
- 信頼性と安全性の壁:自動運転が普及しきらない理由と同様に、誤作動による被害や損害のリスクが、大きな障壁となります。
究極的には、「人間は飯さえ食わせておけばイレギュラーにも対応できる」という圧倒的なコストパフォーマンスを、ロボットが超えられるかどうかが経済性の鍵となります。
【銘柄分析①】ファナック:産業用ロボットとAIの融合
フィジカルAI関連銘柄としてまず名前が挙がるのがファナックです。
ファナックはすでに、ロボットがロボットを作るという高度な自動化を実現しています。これにAIを実装し、ロボットに「目と脳みそ」を持たせることができれば、これまで反復作業しかできなかったロボットが、イレギュラーな状況にも自動認識で対応できるようになります。人間が担当していた「最後の仕分け」などの工程にファナックの製品が導入されれば、さらなる売上増が期待できます。
【銘柄分析②】安川電機:精密制御の要「サーボモーター」の世界シェア
続いて注目すべきは安川電機です。同社は、狙った場所で正確に止めるための制御用モーターである「サーボモーター」で世界トップシェアを誇ります。
サーボモーターは、ロボットの肘、肩、腰、膝といった「関節部分」に大量に必要となります。特にヒューマノイドロボットの指を動かすような、より緻密でハイエンドなモーター需要が今後激増すると予想されています。
NVIDIAがフィジカルAIの社会実装に向けた協業パートナーとして、安川電機や富士通を選定したというニュース(昨年10月)も、同社への期待値を押し上げる要因となっています。
グローバル競争の構図:日本のハイエンド技術 vs 中国のゼロベース開発
産業用ロボットの分野で、日本はドイツと並び世界屈指の技術力を持っています。
- 日本の強み:長年の技術の延長線上にある「超高度な技術」。反動体分野と同様に、安川電機などの「なくてはならない部品」を持つ企業が活躍する可能性が高いです。
- 中国の脅威:中国は現在ロボット開発を猛烈に進めており、ゼロベースで概念を組み替えてくる可能性があります。
しかし、米中対立の文脈から、NVIDIAが中国企業と組むことは難しく、その分、日本のハイエンド技術を持つ企業への期待値が高まっているのです。
未来の逆転現象:AIが会話を担当し、人間が肉体労働をする?
ここで一つ興味深い、皮肉とも言える事例を紹介します。介護現場ではすでにAIが導入されていますが、AIが行っているのは「おばあちゃんとの会話(脳トレ)」です。一方で、人間は依然として「肉体労働」を担当しています。
これは、会話などのソフトウェア処理はAIの方がコスパが良いのに対し、複雑な肉体作業は依然として人間がやった方が早いしコスパが良いという、現在の技術とコストの逆転現象を表しています。ヒューマノイドロボットがこの「肉体労働のコスパ」で人間に勝てるようになるまでには、まだ相当な時間がかかるかもしれません。
個人投資家が取るべき長期的な視点
フィジカルAIは非常に夢のあるテーマですが、ソフトウェア領域でビジネスとして成立させるには、まだ多くの課題が残っています。投資家としては、単純な物量増だけでなく、安川電機のように「特定の企業しか作れないハイエンドな部品」が求められる路線になるかを見極めることが重要です。
執筆者
元村 浩之(もとむら ひろゆき)
つばめ投資顧問 アナリスト
県立宗像高校、長崎大学工学部卒業。
大手スポーツ小売企業入社後、店舗運営業務に従事する傍ら、ビジネスブレークスルー(BBT)大学・大学院にて企業分析スキルを習得。
2022年につばめ投資顧問に入社。
長期投資を通じて顧客の幸せに資するべく、経済動向、個別銘柄分析、運営サポート業務を行っている。
プレゼント①『株式市場の敗者になる前に読む本』
プレゼント②『企業分析による長期投資マスター講座』第一章
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