データセンターで激変する電力関連、注目銘柄は?

現在、株式市場ではデータセンター関連の動きが非常に活発になっています。AIを動かすためのデータセンターには膨大な電力が必要であり、世界的に「電力が足りない」という事態が現実味を帯びています。この需要増を背景に、電力を「作る(発電)」「運ぶ(送電)」「配る(配電)」というプロセス全体に関わる企業への関心が急速に高まっています。

多くの投資家は、電力会社の名前は知っていても、そのシステム全体でどのような企業がどのような役割を果たしているかを詳しく理解していません。今回は、電力網の仕組みを紐解き、データセンター時代の恩恵を受ける注目銘柄を解説します。

電力供給の仕組み:発電から家庭・工場に届くまでのプロセス

電力が私たちの元に届くまでには、非常に複雑かつ合理的な流れが存在します。まず、発電所で作られた電気は、送電のために「高電圧」へと昇圧されます。この高電圧の電気をそのまま家庭や工場に届けてしまうと、圧力が強すぎて実用的ではなく、非常に危険です。

これを水の勢いに例えると、発電直後は凄まじい噴射のような状態です。そのため、消費地に近づくにつれて、変電所を介して徐々に電圧を落としていく必要があります。この「電圧を下げながら枝分かれさせて届ける」という流れの中で、変圧器や遮断機、開閉器といった様々な装置が活躍しています。

出典:東京電力パワーグリッド

【フェーズ1】発電:電力を生み出し、送電の準備を整える

電力供給のスタート地点である発電所では、巨大な回転体であるタービンや発電機が主役です。ここで作られた電気を遠くへ送るために、まずは昇圧変圧器で電圧を高めます。

この分野の主要プレイヤーは、三菱重工業日立製作所東芝富士電気といった日本を代表する重電メーカーです。特に三菱重工業は、世界のガスタービン市場でGE(ゼネラル・エレクトリック)と覇権を争うほどの巨大なシェアを持っており、その技術力は不可欠なものです。

また、昨今注目されている原子力発電においても、日本企業は設計・製造能力を維持しています。世界市場ではロシアのロスアトムや中国企業、フランスの企業が上位を占めていますが、三菱重工業や日立製作所も依然として有力なプレイヤーです。小規模原子力発電(SMR)などの新しい議論も、今後の材料となるでしょう。

【フェーズ2】送電・変電:消費地へ効率よく電気を運ぶ

発電所で作られた電気を効率よく運ぶプロセスが、送電と変電です。ここでは超高圧の変圧器や、電気の流れをコントロールする開閉装置が必要になります。

関連企業としては、三菱電機や、住友電工グループの日新電機、そして変電・受電設備の中堅企業である明電舎が挙げられます。また、電気の通り道である送電線(電線)も極めて重要です。住友電気工業古河電気工業藤倉コンポジットといった電線大手は、送電網の複雑化やデータセンター内の光ファイバー需要の両面で注目を集めています。

これらの日本企業の製品は、国内だけでなく米国や中国などへも輸出されており、世界のサプライチェーンにおいて重要な位置を占めています。

【フェーズ3】配電:街中の電柱から家庭・オフィスへ

電力が街中まで届くと、今度はより身近な設備が登場します。電柱の上に乗っているバケツのような物体を見たことがあるでしょうか。これは「柱上変圧器」と呼ばれるもので、家庭で使える電圧まで下げる役割を持っています。

この分野では、柱上変圧器でトップシェアを誇るダイヘンや、中部電力系で変圧器大手の愛知電機が活躍しています。また、東電系の東光高岳は配電機器や計測器に強く、戸上電機製作所は配電用開閉器で高いシェアを持つニッチトップ企業です。

興味深いことに、米国のインフラ老朽化に伴う物量不足から、これらの日本企業に対して「米国仕様で製造してほしい」という依頼が舞い込む例も増えています。

【フェーズ4】需要家側:データセンター・ビル内部の受電設備

電力供給の最終地点であるビルや工場、そしてデータセンター内部には、届いた電気を施設内で安全に分配するための「受変電設備」が設置されます。これには、配電盤、分電盤、制御盤、監視盤といった装置が含まれます。

ここで圧倒的な存在感を示すのが日東工業です。同社は電気の箱(キャビネット)におけるニッチトップ企業として知られており、国内でデータセンターが建設される際には、ほぼ確実に同社の製品が活躍することになります。現在は国内市場がメインですが、その安定感と成長への期待から市場の注目を集めています。

投資家としての展望:どの分野が最も「買い」なのか

これら一連の電力関連銘柄を分析すると、投資のヒントが見えてきます。データセンター建設という具体的なイベントがあるタイミングでは、下流(需要家側)の製品売上が一時的に急増する可能性があります。

しかし、より手堅い成長が期待できるのは上流から中流にかけてかもしれません。発電や大規模な送電設備は、装置自体が巨大で電圧も高いため、製造には非常に高度な技術と信頼性が求められ、参入障壁が極めて高いからです。また、単なる製品の提供だけでなく、電力をいかに効率よく送るかという「制御システム」を兼ね備えている企業は、今後の電力高度成長期において強い競争力を持つでしょう。

市場の評価(バリュエーション)は、かつての「安定企業」から「成長産業」へと見直しが進んでおり、業績の伸び以上に株価が評価される局面も増えています。

長期投資家として次の一歩を踏み出すために

電力セクターは、これまで見過ごされがちでしたが、今やAI時代の基盤を支える最重要分野の一つとなりました。長期的な需要増はほぼ間違いありませんが、投資にあたっては、各企業の強みとバリュエーションを冷静に分析することが求められます。

この電力という巨大な潮流を味方につけ、着実な投資を続けていきましょう。

執筆者

執筆者:元村 浩之

元村 浩之(もとむら ひろゆき)

つばめ投資顧問 アナリスト
県立宗像高校、長崎大学工学部卒業。 大手スポーツ小売企業入社後、店舗運営業務に従事する傍ら、ビジネスブレークスルー(BBT)大学・大学院にて企業分析スキルを習得。
2022年につばめ投資顧問に入社。 長期投資を通じて顧客の幸せに資するべく、経済動向、個別銘柄分析、運営サポート業務を行っている。

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