投資顧問という仕事を通じて多くの方のポートフォリオを拝見する機会がありますが、実はその一覧をパッと眺めるだけで、その方の投資の腕前が上手いか下手か、瞬時に分かってしまうということに気がつきました。
端的に申し上げますと、投資がうまくいっていない人のポートフォリオには、含み損を抱えた赤字の銘柄がずらりと並んでいるという特徴があります。
一方で、投資がうまい人のポートフォリオはその逆で、ほとんどが含み益の状態にあり、かつその利益の数字が非常に大きくなっています。
これは単なる偶然ではなく、明確な「勝てるモデル」が存在しているのです。
目次
理想のモデル
投資の成功者として私たちが目指すべきモデルは、ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイのポートフォリオです。
彼らのアニュアルレポートには、取得金額(コストベーシス)と現在の時価(マーケットバリュー)が一覧で記されていますが、その大部分が凄まじい黒字になっています。
具体的に2025年のレポートから主要な銘柄を抜粋してみましょう。
Appleは62億ドルで取得したものが、今や620億ドルと10倍になっています。
アメリカン・エキスプレスに至っては12億ドルが560億ドルと40倍以上、コカ・コーラも12億ドルが279億ドルの20倍以上、ムーディーズにいたっては2億ドルで取得したものが126億ドルと、実に60倍以上に膨れ上がっています。
もちろんバフェットは投資の神様ですから当然と言えば当然ですが、注目すべきは細かい銘柄まで遡っても、ほとんど赤字がないという点です。
これこそが、投資で成功している人のポートフォリオの正体なのです。
なぜあなたのポートフォリオは「真っ赤」になってしまうのか
一方で、投資が下手な人のポートフォリオは、このバフェットの例とは真逆の状態、つまりほとんどが赤字という悲惨なことになっています。
足元の相場が好調であるにもかかわらず、自分のポートフォリオが真っ赤であるならば、それは「投資が下手である」と認めざるを得ない厳しい現実があるかもしれません。
では、なぜそうなってしまうのでしょうか。
最大の要因の一つは「高値掴み」です。
多くの人が賑わっている、一番盛り上がっているところでブームに乗っかって買ってしまうタイプの方は、相場のピークで掴んでしまうため、その後に調整が来るとどうしようもなくなってしまいます。
これが、投資家が最初に落ちる罠と言えるでしょう。
なぜ「10倍株(テンバガー)」を逃してしまうのか
高値掴みを卒業し、安値で拾おうと努力している人でも、なかなかうまくいかない場合があります。
その理由は、利益確定(利食い)と損切り、そしてナンピンのやり方に問題があるからです。
まず利益確定についてですが、多くの投資家は「自分の買った値段から何%上がったか」という基準で判断してしまいます。
これは行動経済学で「アンカリング効果」と呼ばれる心理事象です。
30%や50%上がったから売る、という考え方は、マーケット全体ではなく「自分」を中心に考えてしまっている証拠です。
また、過去に「あの時売っておけば良かった」という、一時的に上がって下がった経験が心に残っていると、10%や20%の利益ですぐに確定させたくなってしまいます。
しかし、実際に投資で大きく儲けている人で、20%や30%の利益確定を繰り返している人はほとんどいません。
資産を爆発させる「芽を摘まない」保有戦略
投資の利益を最大化する秘訣は、大きく伸びる銘柄を持ち続けることにあります。
全ての投資が成功するわけではありませんが、その中でたった1銘柄でも10倍、20倍と大きく伸びるものがあれば、それが資産全体の利益を支えてくれます。
事業の調子がいいからこそ株価が伸びているのに、30%程度の利益で売ってしまうことは、将来10倍になる可能性という「芽」を自ら摘んでしまうことに他なりません。
バフェットがアメリカン・エキスプレスやコカ・コーラを50年も持ち続け、ムーディーズをリーマンショックの時に仕込んで今も保有しているように、良い銘柄は利益が出ている時こそ持ち続けるべきなのです。
プロスペクト理論がもたらす「腹を刺すような痛み」
利益確定はあっさりやってしまう一方で、多くの人が極端に苦手とするのが「損切り」です。
人間には「プロスペクト理論」が働き、10%の利益を得る喜びよりも、10%の損失を出す痛みの方を遥かに敏感に感じてしまいます。
損を確定させるという行為は、自分で自分の腹を刺すような痛み、あるいは自分の判断が間違っていたと自分を否定する苦しみを感じさせます。
その結果、含み損の銘柄を売ることができず、いつまでも放置してしまいます。
利益はすぐ売る、損失は売れない。
その結果として、ポートフォリオは赤字のものばかりが残る「真っ赤」な状態になってしまうのです。
ナンピンの罠
さらに状況を悪化させるのが、誤った「ナンピン」です。
多くの人は「10%下がったから平均単価を下げるために買う」という、株価変動だけを根拠にしたナンピンをしてしまいます。
しかし、その銘柄が元々割高だった場合、株価は適正な価値に戻るまで下がり続けます。
自分の判断を肯定したいがために「買えば下がる」を繰り返し、泥沼にはまっていく人が後を絶ちません。
具体的な例として「M3(エムスリー)」のチャートを見てみましょう。
コロナ禍で注目され、株価は2000円から1万円まで5倍に伸びましたが、PERが極端に高い状態でした。
その後、成長が緩やかになると、期待が剥落してズルズルと落ち続け、今やコロナ前の2000円すら下回る状況です。
株価は「業績」や「ファンダメンタルズ」という重力には逆らえないのです。
「花を積み、雑草に水をやる」という愚行
伝説のファンドマネージャー、ピーター・リンチは、こうした投資家の行動を「花を積み、雑草に水をやる」と表現しました。
利益の出ている銘柄(花)を売ってしまい、ダメな銘柄(雑草)にナンピンという名の水をやり続けることで、ポートフォリオ全体を真っ赤な雑草だらけにしてしまう。
これこそが多くの投資家が陥る失敗の典型例です。
真っ赤なポートフォリオを「一旦全部売る」という勇気
もし、あなたのポートフォリオが赤字ばかりになっているのであれば、私からのアドバイスは極めてシンプルです。
一旦、全部売ってください。
そのようなポートフォリオになっている時点で、投資のポリシーや軸、買い方が定まっていない、いわば野球で言う「フォームが崩れた状態」で投げ続けているのと同じです。
一度リセットして、失敗を認め、損切りの痛みを経験してみてください。
実際に全部売った方からは「まずスッキリした」という声をよくいただきます。
失敗を避けることが「成功への最短ルート」
リセットして現金を作った後は、最初から全額を使わず、少しずつ実験しながら、良い銘柄を持ち続け、悪いと思ったら早々に損切りし、割安な銘柄を慎重に拾っていくという「負けない投資家」の習慣を身につけていくべきです。
バフェットが言うように、最も大事なのは「失敗をしないこと」です。
成功は運に左右されることもありますが、失敗は確実な学びを与えてくれます。
プラスに伸びていくことが前提の株式市場において、致命的な失敗を避けて生き残りさえすれば、やがて資産が大きく伸びる可能性は自ずと高まっていくのです。
失敗学を武器に、初心者から脱却
今回お話しした内容は、新著『投資の失敗学』という電子書籍およびペーパーバックに詳しくまとめています。
【目次】
第1章 売買判断の失敗 ── 高値づかみ・割安の罠・ナンピン・利確の落とし穴
第2章 感情に振り回される ── なぜ人は「わかっていても」間違えるのか
第3章 ポートフォリオの失敗 ── 「何をどれだけ持つか」の盲点
第4章 自分の軸がない ── 投資法のブレが招く迷走
第5章 自信過剰と知識不足 ── 「わかったつもり」の怖さ
第6章 続けられない・やめてしまう ── 継続こそ最大の武器
第7章 失敗しない投資家の習慣 ── 上手な人はここが違う
感情に振り回される、自分の軸がない、知識不足、そして続けられずにやめてしまうといった、誰もが陥る「やらかし」の事例と対策を網羅しました。
一見、当たり前の一般論のように思えるかもしれませんが、読み進めるうちに投資家として背中を押され、「怖がらずに勉強していこう」という勇気が湧いてくる内容になっています。
負けないことこそが、資産形成への最短ルートです。
この本が皆様のポートフォリオを黒字へと変える一助となることを願っています。
YouTubeでも詳しく解説しておりますのでそちらもぜひご覧ください。
プレゼント①『株式市場の敗者になる前に読む本』
プレゼント②『長期投資家への登竜門』
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