トヨタ・NRIも放置されている?企業価値で見抜く割安株分析4選

株価が高止まりするなか、「今から何を買えばよいのか」「暴落を待つべきなのか」と悩んでいる方は少なくないでしょう。
つばめ投資顧問が長期投資で重視しているのは、流行している銘柄を追いかけることではなく、素晴らしい企業を安く買うことです。

今回は、現在の市場環境をどのように捉え、どこから投資候補を探し、何を確認して投資判断へ進むのかを詳しく解説します。
そのうえで、市場から相対的に評価されていない業種のなかから、ベルク、トヨタ自動車、野村総合研究所、塩野義製薬の4社を取り上げます。

目次

人気の中心ではなく、資金が抜けた場所に目を向ける

慎重な投資家であれば、まず「暴落待ち」という戦略が考えられます。
最も条件のよい局面を待って買う方法には合理性があります。
しかし、本当に暴落が来るか、いつ来るかは誰にも分かりません。
現金を持ったまま待ち続ければ、相場上昇の恩恵を受けられない可能性もあります。

そこで重要になるのが、全面的な暴落を待つだけでなく、好調な市場のなかで置き去りにされている業種や企業を探す視点です。
市場全体が上がっていても、資金は均等には配分されません。
人気テーマへ資金が集中すれば、その裏側では、業績や競争力に大きな問題がなくても売られる銘柄が生まれます。
そこに、長期投資家の機会が隠れていることがあります。

話題のテーマ株を追うだけでは長期投資にならない

現在の人気テーマとしては、半導体、データセンター、防衛などが挙げられます。
また、金利上昇を追い風に銀行株も大きく上昇しました。
こうした分野のなかにも、長期的な成長性を持つ素晴らしい企業は存在します。
すでに保有している成長企業については、伸びる芽をそのまま伸ばす考え方も有効です。

ただし、盛り上がっているという理由だけで、上昇後の銘柄へ無理に手を出すことには慎重であるべきです。
企業が長期的に成長しても、買値が高すぎれば、しばらく含み損に耐える展開になりかねません。
長い目では報われる企業でも、期待が先行した高値で買えば投資成果は低下します。

投資で本当に大切なのは、流行を当てることではなく、企業価値と市場価格の差を見極めることです。
企業価値とは、その企業が将来にわたって生み出す利益やキャッシュフローを現在価値で捉えたものです。
十分な価値があるにもかかわらず、市場価格がそれを下回っている状態が理想です。
そして、そのような価格差は、多くの投資家が注目する場所よりも、市場に見過ごされた場所で生まれやすいのです。

短期は人気投票、長期は重量計

株式市場については、「短期的には投票機だが、長期的には重量計である」という有名な考え方があります。
短期の株価は人気や期待、需給に左右されますが、長期では企業が実際に生み出す価値が問われます。
美人投票の比喩で知られるケインズの考え方に対し、ベンジャミン・グレアムは長期的な価値の重要性を「重量計」と表現しました。
グレアムは、ウォーレン・バフェットの師としても知られています。

価値のある企業であれば、時間の経過とともに、その“重さ”が株価に反映される可能性があります。
だからこそ、目先の人気ではなく、企業の本質的な価値を見据えて投資する必要があります。

つばめ投資顧問が実践する5段階の銘柄選定

1.マクロ環境と市場の物語を把握する

まず、半導体やデータセンターが盛り上がっている、金利上昇で銀行株が買われている、といった市場全体の流れを把握します。
人気企業についても、なぜ評価されているのか、成長を支えるファンダメンタルズは何かを確認します。
ただし、人気テーマの分析と、実際にそこで新規投資をすることは別問題です。

2.人が見ていない場所を探す

次に、人気分野へ資金が集中した結果、相対的に資金が抜けている業種や企業を探します。
有名ファンドマネジャーのピーター・リンチも、華やかな名前の会社より、地味で人が関心を持ちにくい事業に投資機会が潜むと説いています。
また、著名なバリュー投資家ジョン・テンプルトンも、上昇率ランキング上位ではなく、誰もが敬遠したくなるセクターに目を向ける考え方を実践しました。
日本の相場格言「人の行く裏に道あり花の山」にも通じる姿勢です。

3.評価されない理由を見極める

株価が下がっているだけでは買いの根拠になりません。
業績悪化が一時的なのか、事業構造そのものが損なわれているのかを分けて考える必要があります。
一時的な原材料高や景気循環による落ち込みで、回復の根拠があるなら機会になり得ます。
一方、需要の消滅や競争力の喪失といった構造的な悪化であれば、安値に見えても投資は難しくなります。

業績が悪化していないのに、人気がないというだけで下がる株もあります。
ただし、その下落が単なる不人気なのか、市場が将来のリスクを先に織り込んでいるのかは慎重に検証しなければなりません。
企業を一社ずつ調べ、下落理由を言語化する作業が不可欠です。

4.競争優位性と将来業績を検証する

流行の有無から離れ、企業の事業内容、ブランド、顧客基盤、コスト競争力、乗り換えの難しさなどを調べます。
そして、今後の売上、利益、キャッシュフローがどう推移するかを考え、本当に競争優位性があるかを見極めます。

5.企業価値を数値化し、十分に安ければ長期保有する

将来の業績見通しをもとに企業価値を見積もり、現在の株価がその価値より十分に安いかを判断します。
安全余裕があると考えられる価格で投資し、市場が価値を再評価するまで長期保有する。
これが基本的な流れです。

実例:不振期の良品計画に投資し、再評価を待つ

この考え方が成果につながった例の一つが良品計画です。
つばめ投資顧問では2019年頃から同社へ投資していましたが、その後もしばらく業績と株価が振るわない時期が続きました。
コロナ禍で株価が大きく下落し、いったん回復した後も再び半値近くまで下がるなど、厳しい期間が長く続きました。

しかし、「無印良品」のブランド価値そのものは失われていないと判断しました。
また、ファーストリテイリング出身で、以前から良品計画の役員を務めていた堂前宣夫氏が社長に就任し、地域への土着化や店舗改革を進めました。
在庫回転率などの改善が進み、その経営戦略が成果として表れたことで株価も見直されました。

つばめ投資顧問では、改革が成果を上げる可能性を見込み、株価が安い時期にも追加投資を続けました。
その結果、取得価格から見ておよそ5倍に達する投資成果となりました。
重要なのは、単に下落したから買ったのではなく、ブランドという実態が残り、経営改革による回復の根拠があったことです。

 

業種別の騰落率から、見過ごされた4社を探す

2026年7月17日時点の株式市場は全体として好調で、多くの業種が上昇していました。
非鉄金属、ガラス・土石、電気機器などは、半導体やデータセンター向け素材・部品への期待から大きく上昇しました。
金利上昇を受けて銀行業も買われています。

一方、その他製品では任天堂などのエンターテインメント企業が重しとなり、空運ではJALやANA、陸運ではJR各社などが相対的に冴えませんでした。
原材料価格の高騰を受けた小売業や鉄鋼、自動車などの輸送用機器、AIによる代替懸念が意識された情報・通信、コロナ特需の反動が続く医薬品も、人気分野に比べて評価が低い状況でした。

そこで、相対的に評価されていない業種から、小売業のベルク、輸送用機器のトヨタ自動車、情報・通信の野村総合研究所、医薬品の塩野義製薬を取り上げます。
以下の分析は投資判断の“入口”であり、推奨や断定ではありません。
実際の投資前には、さらに深い調査と企業価値評価が必要です。

企業 市場が懸念する点 注目すべき強み・論点
ベルク 原材料高、利益率の低下 標準化された店舗運営、従業員生産性、安定した成長
トヨタ 減益、関税・原材料高、EV競争 世界最大級の販売基盤、低コスト生産、バリューチェーン収益
野村総研 AIによるSI・SaaS代替、海外事業の減損 金融システムの高い乗り換えコスト、AI実装需要
塩野義製薬 パテントクリフ、M&Aによる借入増 感染症領域の強み、新薬群の拡充、低いPER

注目企業1:ベルク――地味だが堅実なローコスト経営

ベルクは埼玉県鶴ヶ島市に本社を置く食品スーパーマーケットです。
埼玉県を地盤に、群馬、東京、千葉、茨城、神奈川へ店舗を展開しています。
華やかな成長テーマとは距離がありますが、業績は長期にわたりきれいな右肩上がりを続けています。

出典:マネックス証券

株価低迷の背景

5年程度の株価チャートでは、おおむね横ばいに見え、現時点では7,000~8,000円程度だった高値から6,500円前後まで、ピーク比で20%弱下落していました。

出典:Google

売上高や営業利益は基本的に成長している一方、売上高営業利益率には低下傾向が見られます。

出典:マネックス証券

原材料価格や人件費などの上昇により、今後も利益率が圧迫されるのではないかという懸念が、株価の重しになっていると考えられます。

競争力は店舗運営の標準化

ベルクの強みは、特定の大ヒット商品ではなく、店舗フォーマットを標準化したローコストオペレーションです。
運営方法を揃えることで効率を高め、従業員1人当たり売上高は他のスーパーを大きく上回る水準にあります。
地味ではありますが、堅実に利益を積み上げる仕組みを持っています。

フリーキャッシュフローも、直近では投資負担などによりマイナスとなった期があるものの、長期ではプラスの期が多く、安定経営を示しています。

出典:マネックス証券

現時点の指標はPER約10.8倍、PBR約1.11倍、ROE約11%でした。
一般的なROEの合格ラインとされる8%を上回り、収益性に対して株価は割安に見えます。
利益率低下が一時的か、価格転嫁や効率化で回復できるかを確認できれば、検討対象に入る企業です。

注目企業2:トヨタ自動車――1,000万台の顧客基盤を収益化できるか

トヨタは一時、時価総額首位の座をソフトバンクグループ、キーエンス、三菱UFJフィナンシャル・グループなどに譲る場面がありました。
しかし、時価総額順位の低下だけを見て、企業そのものが衰えたと判断するのは早計です。
収録時点では首位へ復帰したとの話題もありましたが、重要なのは順位ではなく、低評価が妥当かどうかです。

外部環境による減益と、依然として強い本業

本期予想まで含めると3期連続の減益が見込まれていました。
足元では原材料価格の高騰や、前期のトランプ関税など外部環境の悪化が利益を圧迫しています。
ただし、長期の業績は比較的右肩上がりで、ROEも10%を超え、目安となる8%を上回っています。

電気自動車一辺倒だった市場の見方が変化し、ガソリン車やハイブリッド車の安定性が再評価される流れもあります。
内燃機関車やハイブリッド車の技術、作り込み、低コスト生産ではトヨタの競争力は高く、世界販売台数は年間約1,000万台に達します。

バリューチェーン事業という成長余地

注目したいのが、販売後の顧客接点から利益を得るバリューチェーン事業です。
トヨタは毎年約1,000万台を販売し、世界に膨大なオーナー基盤を持っています。
新車販売だけでなく、修理、部品、アップグレード、金融などを通じて、保有期間全体から収益を得ることができます。

例として、アルファード向けに静粛性を高めるアップグレードをディーラーで提供すれば、愛車へのこだわりが強いオーナーから追加収益を得られます。
また、残価設定型クレジットは金融事業であり、金利収入を生みます。
車両購入時の金融から、購入後の整備・機能向上までを一体化できることは、トヨタの大きな強みです。
バリューチェーン事業は、収録時点で営業利益の半分以上を占めると説明されています。

これまで評価の中心だった新車販売台数に加え、長年積み上げたオーナー基盤を低い追加資本で収益化できれば、ROEの改善が期待できます。
現時点ではPBRが1倍を下回る水準であり、三菱UFJと比べて純資産が大きくても、低いPBRによって時価総額が抑えられていました。
ROEの上昇がPBRの見直しにつながるかが焦点です。

株価はピークの約4,000円から3,000円前後まで約25%下落していました。

出典:Google

これは衰退の表れなのか、それとも一時的な逆風による低評価なのか。
バリューチェーン事業の伸長を含めて判断する価値があります。

注目企業3:野村総合研究所――AIは脅威か、それとも追い風か

野村総合研究所(NRI)は、企業のシステム構築や運用を担う大手SIerです。
野村證券を母体として発展した経緯から金融分野に強く、大手金融機関の重要なシステムを数多く担っています。

「SaaSの死」と海外事業の減損

株価は高値の約6,300円から一時3,000円台へ、半値近くまで下落しました。

出典:Google

背景には、生成AIによってソフトウェアを低コストで作れるようになり、既存のSaaSやシステム開発会社が不要になるのではないかという「SaaSの死」への懸念があります。

野村総合研究所の場合、懸念だけでなく実害も発生しました。
買収した海外のシステム構築会社で、顧客がAIを使って自社開発する方針に転換し、仕事を失う事例が生じました。
その結果、買収価格のうち純資産を上回る部分として計上していた「のれん」の価値を引き下げ、減損損失を計上しました。
これにより利益が大きく落ち込んだことが、市場の不安を強めています。

金融の基幹システムは簡単に置き換えられない

一方、日本国内の主要顧客は大手金融機関です。
振込、証券取引、投資信託などのシステムは停止が許されず、安全性、規制対応、長年の運用知識が不可欠です。
顧客が生成AIだけで短期間に内製化したり、価格だけを理由に別会社へ乗り換えたりする可能性は、一般的なソフトウェアより低いと考えられます。
金融システム障害が社会へ与える影響の大きさを考えても、既存基盤には高いスイッチングコストがあります。

AIによるコスト低下を利益にできるか

AIがコードを書くようになれば、従来必要だったプログラマーの工数を減らし、開発コストを下げられます。
価格を据え置けるなら利益率の改善要因です。
ただし、顧客から値下げを求められれば、効率化の利益は顧客側へ移ります。
野村総合研究所と顧客の力関係が重要になります。

さらに、企業がAIを導入する際の設計・実装・運用を野村総合研究所が担えれば、AIは既存事業を壊すだけでなく、新たな需要を生む追い風にもなります。
既存の金融システム収益を守りながら、AI実装を成長事業にできるかが焦点です。
過去のフリーキャッシュフローはおおむね良好ですが、将来像には不確実性があります。
収録時点のPERは約24.5倍と決して低くないため、単に株価が下がったという理由だけでなく、成長シナリオを精査する必要があります。

注目企業4:塩野義製薬――パテントクリフをM&Aで乗り越えられるか

塩野義製薬は感染症領域に強みを持つ新薬メーカーです。
新型コロナウイルス治療薬や、インフルエンザ治療薬「ゾフルーザ」などを手がけ、海外の製薬会社とも協力しながら世界市場で製品を開発しています。
業績は年度ごとの変動があるものの、足元では大きく伸びる局面もあり、基調としては成長しています。

出典:マネックス証券

新薬企業が抱える二つの大きなリスク

第一のリスクは、開発中の新薬がFDAなど規制当局の承認を得られないことです。
上市への期待が高まった後に承認されなければ、期待が剥落し、研究開発費も回収できません。

第二のリスクが「パテントクリフ」、すなわち特許切れです。
利益を稼いでいた薬の特許が切れると、安価なジェネリック医薬品が参入し、売上と利益が急減する可能性があります。
新薬メーカーは、主力薬の特許が切れる前に次の稼ぎ頭を育て続けなければなりません。

買収で製品群を広げる一方、財務リスクは上昇

塩野義製薬はパテントクリフへの対応として、JTが保有していた医薬品事業の関連会社を完全子会社化するなど、外部の医薬品事業を取り込んでいます。
HIV治療薬に関する権利を自社へ取り込む取引も行い、将来の製品群と収益源を広げようとしています。

一方で、M&Aに伴い、従来ほとんどなかった有利子負債が一気に増えました。
現在の説明では、新規借入は約6,000億円規模とされ、フリーキャッシュフローも買収支出によって大きくマイナスになりました。

出典:マネックス証券

好調に見える足元の利益の裏側で、財務リスクを取って成長投資をしている点を見落としてはいけません。

市場はこのリスクを織り込み、現時点のPERは約11倍まで低下していました。
株価も直前に大きく上昇した後で下落し、5年程度で見るとほぼ横ばいです。

出典:Google

ただし、企業が成長するために適切なリスクを取ることは必要です。
買収した事業や新たな製品群が成果を上げれば、現在の評価には割安余地がある可能性があります。
医薬品は成果予測が難しいため断定はできませんが、ネガティブに評価されている今だからこそ継続して調べる価値があります。
株価が下がるほど、企業価値との乖離を検証する重要性は高まります。

4社に共通するのは「不人気の理由」と「反転の条件」があること

今回の4社は、単に株価が下がっているというだけではありません。

ベルクには原材料高と利益率低下、トヨタには外部環境による減益とEV競争、野村総合研究所にはAIによる代替懸念、塩野義製薬にはパテントクリフとM&A後の財務負担という、評価されない理由があります。

同時に、ベルクの標準化経営、トヨタの巨大なオーナー基盤、野村総合研究所の金融システムにおける高いスイッチングコスト、塩野義製薬の感染症領域の知見と製品群拡充という、反転の条件になり得る強みもあります。
投資判断では、悪材料を無視するのでも、悲観論をそのまま受け入れるのでもなく、悪材料が一時的か構造的か、強みがそれを上回るかを検証します。

まとめ:見過ごされた企業を深く調べ、価値が価格を上回る時に買う

逆張りをすれば必ず成功するわけではありません。
勢いのある成長企業へ投資した方がよいケースもあります。
それでも一般論として、多くの人が見ていない銘柄には、人気銘柄よりも企業価値と価格の差が生まれやすいと考えられます。

今回取り上げた4社も、この時点で投資対象として確定したわけではありません。
ここまでの分析は入口にすぎず、事業、競争優位性、財務、経営者、将来のキャッシュフローをさらに深く調べ、企業価値を見積もる必要があります。
そのうえで現在の株価が十分に安ければ投資し、価値が市場に評価されるまで長期保有する。これが、つばめ投資顧問が考える長期投資の基本です。


YouTubeでも詳しく解説しておりますのでそちらもぜひご覧ください。

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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