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本物のバリュー株とは、単にPERやPBRが低い銘柄のことではありません。低い数値には大抵の場合それなりの理由がありますし、何より数値だけなら誰でも見つけることができます。私が探すのは、正当な理由なく割安に評価されている銘柄です。この記事ではその探し方を示します。
マクロ・アプローチ
ひとつの方法は、経済全体を眺めて調子がいいところはどこか、逆に悪いところはどこかを探すやり方です。例えば、円安であれば輸出企業の調子が上がる一方、内需系企業の調子は悪くなります。
私が注目するのは、調子のいい企業ではなく、むしろ調子の悪い企業です。
調子のいい企業は業績も良く、投資家の期待も高まっていますから、株価が実力以上に評価されて割高となっている可能性があります。割高な株は下落リスクが大きく、バリュー株投資家は手を出すべきではありません。
一方、調子の悪い企業は、業績も期待も低くなるので、本来の実力よりも過小評価されている可能性があります。過小評価されている割安株は、実績を積み上げることでいつか正当な評価を受けます。
単に業績の悪い企業を選べばいいというわけではありません。恒常的な経済状況の変化が要因であれば、企業の価値は減退します。円安で株価が下がった内需企業であっても、ただ国内にとどまっているだけの企業には衰退が待っているでしょう。
調子が悪い要因が一時的で、過去の業績や将来の見通しからみたPERやPBRが低い銘柄こそが本物のバリュー株です。円安や原油安は短期的には需給に影響されますが、長い目で見ればファンダメンタルズ(経済の本質的価値)に落ち着くものなので、一時的な要因となる可能性があります。
ミクロ・アプローチ
もうひとつは、企業を個別に見て割安かどうかを判断する方法です。しかし、何となく1社1社の企業を見ていたのでは時間がいくらあっても足りません。たまたま見た銘柄が投資に値するほど割安である可能性も決して高くないでしょう。
私が注目するのは、不祥事などの特殊要因によって株価が急落した企業です。
不祥事は業績に与える影響は大きくない場合がありますし、特殊要因による業績悪化はその時限りの業績悪化にとどまるものがあります。そこに市場が過剰反応した時がチャンスです。
2011年にオリンパスは会計不祥事で株価が急落しましたが、業績や事業に与える影響はわずかなものでした。上場廃止さえ免れれば、企業本来の価値は失われていなかったのです。オリンパスの株価はその後最大で約10倍になりました。
企業の不祥事や特殊要因による株価急落は “バーゲンセール” と捉えるべきなのです。
最も見るべきは人の心理
単純にPERやPBRが低い銘柄を選べばいいわけではない理由は、市場の原則にあります。企業に関連する新たな情報が出れば株価は瞬時にそれを織り込むので、不当に割安または割高に放置される可能性は低いのです。これを効率的市場仮説と言います。
しかし、効率的市場仮説は完全ではありません。物理学で言うところの真空状態のようなもので、実際の市場にはさまざまな雑音が入ります。雑音の最たるものが人の心理です。
人の心理は移ろいやすいものです。ひとたび悪い話があれば、それまでどんなに良かったとしても急に不安になります。津波のあとに、遠く離れた地域でも低地の家が急に全く売れなくなるのと似ています。
心理に惑わされると、人は合理的な判断をすることが難しくなります。マスコミよる追加的なネガティブなニュースはそれに追い打ちをかけます。機関投資家も例外ではなく、そのような株を買おうとしても稟議が下りないでしょう。
そんなネガティブなニュースも、時間が経つと人々の頭から忘れ去られていきます。その後の業績が順調であれば、株価はじわじわと戻ってくるものです。そんな時値上り益を手にしているのは、日本のマスコミに触れる機会が少なく、合理的な判断ができた外国人投資家であることが多いのです。
ネガティブなニュースはバリュー株投資家にとって宝の山です。つばめ投資顧問は “バーゲンセール” 情報をいち早く皆さまにお届けします。
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