絶対的に「いい株」は存在しない

バリュー株投資の基本は、「いい株」を「割安な価格」で買うことです。価格はPERやPBRなどの指標を駆使して割安かどうかを判断しますが、「いい株」はどのように判断したら良いのでしょうか。

PERとPBRの本当の意味と使い方

2016.04.15

スクリーニングは無意味

「いい株」とは「いい企業」のことです。企業の特性から、投資に値する銘柄を探そうとする考え方は広く普及しています。

例えば、「ROE10%以上」や「5期以上連続増収増益」など、財務数値でスクリーニングする考え方があります。しかし、単純な数値による選別がうまくいく可能性は高くありません。ちょっとしたツールを使えば誰でも見つけることができるので、人に先んじることが難しい上、過去の実績が将来も続く保証はどこにもないからです。

数値ではなく、企業の定性的な特性から考える人もいます。「業界1位のシェア」「財閥グループ」「IT関連企業」などです。企業の強みを表すものにはなりますが、絶対ということはありません。業界1位でも縮小している業界ではどうしようもないですし、財閥だから絶対的な力を持っている時代でもありません。

企業の評価は時価総額に表れる

私の考え方を率直に言えば、「投資において絶対的にいい株なんて存在しない」ということです。どんな企業でもいいところがあれば、必ず悪いところがあります。企業も人間と同じで、完璧なものはありえません。

それでも、企業が人間と違うところは、評価の良し悪しが最終的に数値として表されることです。数値とは株価のことで、もっと言えば時価総額です。日本で最も時価総額の大きいトヨタ自動車を「悪い企業」という人はほとんどいないでしょう。

時価総額を決めるのは、まずは「業績」です。端的に言えば純利益で、純利益が大きな企業ほど基本的には時価総額が大きくなります。

次に、将来の「成長性」です。あくまで一般的な話ですが、同じ純利益であっても成長性が高そうなIT関連のビジネスは、あまり成長しなさそうな地方銀行よりも高く評価されるでしょう。

最も厄介なのが「リスク」です。リスクとは、業績が安定して続くか、それとも大きく変化し続けるかということです。たとえ平均の業績が同じであっても、良くなったり悪くなったりするよりは安定しているほうが高い評価を受けます。したがって、業績の安定に寄与する「業界におけるシェア」や「企業ブランド」が企業の評価を決定する要因になり得ます。

あるべき評価と市場価格の差に投資

上記の要素をすべてひっくるめて出てくるのが、時価総額です。いい企業は高い時価総額で評価されますし、逆もまたしかりです。

しかし、時価総額の大きい企業の株に投資すればもうかるわけではないのはよくお分かりでしょう。ここに投資のマジックがあります。

単に「いい企業」に投資しても、株価はそれで止まってしまいます。値上がりする株を見つけるには、「ある程度いいけど、なぜか評価されていない企業」を見つけなければならないのです。

そのためには、「業績」「成長性」「リスク」を細かく分析する必要があります。その上で現在の時価総額を確認し、自分の感覚と市場の評価がずれていると感じた場合に「なぜそのずれが生じるのか」を洗い出します。それでも合理的な理由が見つからない場合は、ニュースへの過剰反応など「非合理的な理由」で割安に評価されている可能性があるのです。

つばめ投資顧問では、徹底したロジカル分析を通じて、企業本来の価値と市場価格との差に投資することを信念としています。当社のサービスは現在準備中なので、気になる方は下記のフォームよりメールアドレスをご登録ください。

Print Friendly, PDF & Email

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

詳細はこちら

気に入ったらシェアしてもらえると嬉しいです!

2 件のコメント

  • コメントを残す

    Popular Article - よく読まれている記事Popular Article

    • 【紅麹問題】それでも小林製薬の株価はなぜ暴落しないのか
      今回は小林製薬を改めて取り上げます。 前回、小林製薬を取り上げてから約3ヶ月が経ちましたが、そこからの進捗と、今何が起こっているのかを示して...
    • 本田技研工業 配当利回り4% PBR0.65倍は投資チャンスか?
      本田技研工業(以下、ホンダ)の株価が好調です。 出典:株探 月足チャート 過去20年の平均PERは約10倍ですが、24年7月9日現在のPER...
    • 配当利回り 3.4%のキリンHDに投資して良い?成長性を考える
      今回は国内大手のビールメーカー、キリンホールディングス(以下、キリン)を分析します。株価は2018年にピークをつけた後、2,000円前後でほ...
    • ヤクルトの株価下落が止まらない!その原因と今後の見通しをアナリストが解説
      今回はヤクルトについてです。 ヤクルトの株価が下落し続けていますが、その理由と今後の見通しについて解説したいと思います。 長期的に成長してい...
    • 次の出世株を探せ!中小型株編【1】
      普段私が取り上げている企業は、やはり皆さんが注目する企業ということになりますが、実際の投資は必ずしもそういった動きにはならないかもしれません...

    Article List - 記事一覧Article List

    カテゴリから記事を探す