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日産自動車が三菱自動車へ2,370億円を出資し、発行済株式の34%を取得することになりました。日産は筆頭株主となり、三菱自動車を事実上傘下におさめることになります。三菱自動車の株価は一時ストップ高まで上昇しました。事例を踏まえ、企業買収とバリュー株投資の関係について考察します。
燃費不正の三菱自動車は割安か?「逆張りバリュー投資」成功の条件
”バーゲン価格” で三菱自動車を購入
記事の中で、私は三菱自動車を「バリュー株」として紹介しました。燃費不正により株価は発覚前の半分程度にまで落ち込みましたが、同社の事業は欧州やアジアなどの海外がメインであり、問題が海外にまで波及しない限り企業価値の低下は限定的という主張です。
もちろん、日産による出資は想定していませんでした。見方を変えれば、日産がバリュー株投資を行ったと言えます。出資の前提となった株価は468円と、不正発覚後の低い株価を基準としたものです。日産はそれまでも三菱自動車との提携を模索していたとのことですが、このタイミングで ”バーゲン価格” で株を取得できたことになります。
企業の価値を一番よく分かっているのは、投資家ではなく事業家です。競合他社の株価がバーゲンセール状態となっているなら、すかさず買収することで低コストで事業拡大を行うことができるのです。これを徹底している事業家が、日本電算の永守社長でしょう。
イー・アクセスの買収
同じような事例にイー・アクセスがあります。「イー・モバイル」のブランドで携帯電話事業を展開していた会社で、2012年にソフトバンクに買収されました。
買収公表前、イー・アクセスの株価はPER 5.8%、PBR 0.6倍、配当利回り5.3%と非常に割安に放置されていました。業績は巨額の初期投資による赤字から抜け出し、これから利益を出していこうとする段階まできていたので、なぜこんなに割安なのかと不思議に思ったのをよく覚えています。
割安なイー・アクセス株に対し、ソフトバンクは時価の3.5倍もの評価を与えて買収に踏み切りました。それほどまでに高い評価をした理由は、電波帯の割当です。割当は総務省が行うもので、自社ではどうすることもできません。ドコモやauにおくれをとっていたソフトバンクは、何としても電波帯を獲得して、自社のつながりやすさを改善したかったのです。そのためには、買収に高い対価を払ってもお釣りが来るという計算だったのでしょう。イー・モバイルの価値は電波帯にあったのです。
イー・アクセス株は、最終的に買収公表前の4倍にまで上昇しました。企業に確かな価値があり、株価がそれを下回る水準で放置されているなら、いつかきっと価値が実現するという事例です。ちなみに、これによりもうけたのは、イー・モバイルの大株主となっていたゴールドマン・サックスをはじめとする外国資本でした。
バリュー株投資家に訪れる幸運
当社が推奨する「バリュー株投資」は、企業本来の価値を算定し、それより割安な価格で買うものです。本当に価値があるなら、割安な状態に事業家を含む誰かがきっと気がつきます。
最初から買収を想定して取引することはできませんが、原則どおりにバリュー株投資をしていれば、いつかこのような幸運も訪れることもあると覚えておいてください。
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