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日本経済新聞に2016年3月期の上場企業純利益ランキングが掲載されました。純利益は会社の価値と密接な関係があり、純利益が大きいほど時価総額が大きくなる傾向があります。しかし、単純に純利益が大きいからといって、それだけ時価総額が上がるわけではありません。
PER=時価総額÷純利益
2016年3月期に純利益が最も大きかった企業はトヨタ自動車です。それに比例し、時価総額も最も大きくなっています。一方で、ランキングを見ると、純利益と時価総額の大きさが必ずしも一致していないことがわかります。例えば、純利益が4番目に大きい日産自動車の時価総額は、この20社の中だけでも16位にとどまります。
純利益と時価総額の比率を表すのがPERです。PERは一般的には「株価÷1株当たり利益」で計算されますが、「時価総額÷純利益」として計算してもほぼ同じ数値となります。ランキングからPERを計算すると、業種により水準に違いがあることが分かります。
以前にもこのサイトで取り上げましたが、PERとは「成長期待-不安」を示したものです。PERが低いということは、「成長期待が低い」か「不安が大きい」ことを表しています。
PERが低い自動車メーカー、高い携帯キャリア
純利益ランキングで20位以内にランクインしているトヨタ自動車、日産自動車、富士重工などの自動車メーカーのPERは一桁です。一方で、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクなどの携帯キャリアは15倍以上の高い水準になっています。
自動車メーカーの成長性はある程度の人口に比例ので、爆発的な成長こそ望めないものの、グローバルで見ると一定程度成長することが予想されます。一方で、最大のリスクと言えば為替です。ここ数年の円安より、自動車業界は好業績をあげていましたが、為替水準が円高に振れるにつれて利益水準の低下が想定されています。為替リスクの高さがPERを引き下げていると考えることができます。
一方、携帯キャリアはここ数年で劇的な成長を遂げてきました。スマホブームも相まって、これからも安定した成長が見込めるでしょう。さらに、各社とも数千万もの契約者を抱え、1人あたり毎月1万円に及ぶ料金を得ることができます。仮に景気が悪くなったとしても、料金収入が劇的に減ることは考えにくく、業績変動のリスクは小さいといえます。つまり、成長性が高く、安定的な業績が見込めることが高いPERにつながっているのです。
PERを見て投資家が採るべき行動とは
このように、業種や企業の特性によってPERはある程度妥当な水準があるものです。したがって、ただ単にPERが低いからといって、一概に割安ということもできません。同様に、PERが高いからといって、必ずしも割高というわけでもありません。
バリュー株投資家が行わなければならないのは、今付いているPERと企業の実態との間に「差」を見つけることです。例えば、自動車メーカーは円安のリスクにさらされていますが、実体は海外生産の拡大により、実態としての為替リスクはかなり小さくなっているかもしれません。為替リスクが市場が考えているよりも小さければ、自動車メーカーのPERはもっと高くてもいいはずなのです。
市場はある程度妥当な水準を知っていますが、いつも正しいというわけでもありません。あなたが正しい認識を持っていて、市場が誤っていると気づくことができれば、その「差」に収益機会を見出すことができます。将来的に、実際に企業があなたの認識どおりの業績を収めたときに、市場は株価の修正を行うのです。
PERに対する正しい認識を持っていれば、株価の上下に一喜一憂することはありません。重要なのは「成長期待」と「不安」を見極め、なぜそのPERが付いているかをじっくり考えることです。つばめ投資顧問は、皆さまに正しい知識を伝え、投資を通じて資産を増やすサポートをしたいと考えています。
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