(2023年6月)NTT株はなぜ下落?初心者へ本音のアドバイス

先日、私が「初心者におすすめ」としてご紹介したNTTですが、その後すぐに株価が5%ほど下がり、不安になった方もいらっしゃるかもしれません。

株式投資初心者向け銘柄『NTT』

しかし、なぜNTTを買ったのかということが分かっていればうろたえることはありません。

今回のNTTの下落は問題なし!

非常に安定感があるということで初心者向けとしてご紹介したNTTですが、直近で下がっています。

ただ、このくらいの下落は株式投資の世界では日常茶飯事です。特に何もなくても下落するときは下落します。
”何もない”と言うと言い過ぎかもしれませんので、考えられる原因を探すとなれば、一つには割安株に対する調整があります。
ここ最近、NTTのような割安株が大きく上昇してきました。一旦上がったものは下がる時があるということです。
世の中のお金は、安定しているけど株価が安い「割安株」と、どんどん成長するけど株価が高い「成長株」の間を行き来するもので、今、半導体市場が特に盛り上がっていて、これまで割安株に流れていたお金が成長株の方に移ったという風に見えます。

もう一つは、投資信託のリバランスが考えられます。
5月は日本株が非常に好調でした。そういう時に、投資信託はバランスを取ろうとするのです。

上がったものを売る、あるいは下がっているものを買うことによってバランスを整え、偏ったポートフォリオにならないようにするものです。
したがって、株価が上がった時の月末はリバランスによって下がりやすいということがあります。

NTTの株価が下落した理由を見出すとしたらこの割安株の調整とリバランスといったところですが、これは毎回同じように起こるわけではありませんし、この理由も後付け的なところがあります。

投資家として見るべきなのは、隠れたところに本当にヤバい部分は無いかということです。
特に長期投資において気を付けるべきなのは、業績の状況が悪くなっていたり、悪くなる兆候が見られるかというところです。
それを確認するときに私がよく使うものは「株探」です。

この「ニュース」のタブのところに、どういう要因で株価が動いたか、どういう決算があったかなどの情報がまとまっています。便利なのでぜひ使ってみてください。

NTTのニュースを見る限り、株価に影響を与えるようなニュースは特に入ってきていません。
それでも5%くらいの下落は起こり得るということをまずは経験値として知っておいていただきたいです。
数日~数週間の動きは長期にしてみれば誤差の範囲なので、まずは「気にしない」ことが大事かと思います。

本当にヤバい兆候

ただ、どうしてもヤバい時もあります。

ファンダメンタルズの変化

一つはファンダメンタルズの変化です。
例えば業績予想の下方修正があったり、減配を発表したなど、業績やビジネスが今後まずくなる兆候が見られた時にはしっかり見る必要があります。
怪しいと思ったら一旦売ることも考えるべきだと思います。

NTTに関しては今回そういうことは起こっていないのでご安心ください。

大株主の売り

業績の悪化や減配など明確に表れていないものでも気をつけるべきは大株主の売りです。

大株主というと、創業者だったり機関投資家だったりしますが、彼らは個人投資家よりも情報を持っている可能性があります。
もちろんインサイダー取引は厳禁ですが、「業績が悪くなる”かもしれない”」くらいであればインサイダーにあたりません。
それを元に売っているのだとしたら、勘ぐってみる必要があるかもしれません。

大株主の売買状況も先ほどの「株探」で見ることができます。

キャピタル・グループなどの本格的にファンダメンタルズを調べる投資家が売っているのだとしたら気をつけて見るべきだと思います。

下落が止まらない

3つ目は株価の下落が本当に止まらないという時です。

株価は上がったり下がったりするものなので今のNTTくらいであれば気にする必要はありませんが、これがずっと下がり続けるようであれば、自分が間違っている可能性があると考えるべきかもしれません。

単純な需給要因によって下げるケースももちろんありますが、不安があるようなら一旦ポジションを外して冷静になってみることも大事です。
そうすればその後大きな材料が出てきて取り返しのつかない下落になった場合の大けがを防げることになります。
そういう時のために、例えば「買った時から10%下落したら機械的に売る」というようなマイルールを設定しておくことも一つの選択肢かもしれません。

私も、自分の分析が合っているんだと信じるあまりいつまで経っても損切りできず傷口を広げてしまうという経験があるので、皆さんには同じような経験をしてほしくないと思います。
株価の下落があった時には、「自分は間違っているかもしれない」と思うことが大切です。

彼を知り己を知れば百戦危うからず~「己を知る」大事さ

投資において私が大切にしているのが「彼を知り己を知れば百戦危うからず」という言葉です。

敵のことをよく知ることはもちろん大事ですが、さらに大事なのが”己を知る”という部分だと考えています。
あなたがこの投資において「何をやりたいのか」ということをもう一度考えてみると良いのではないかと思います。
配当をもらいたかったのか、株価上昇を狙いたかったのか、どれくらいの期間で考えていたのか…ということです。
もし目先の急騰を狙ってNTTの株を買っていたのだとしたら、選んだ銘柄が間違っていたということで手仕舞いするべきなのです。

「NTTがなんとなく良い」と思って買ったのだとしたら、それは順番が逆なのではないかと思います。
まずは戦略です。自分がどうしたいかという考えに基づいてそれに合った銘柄を選ぶ必要があります。
例えば、短期間で大儲けしようという人はNTTは買うべきではありません。
逆に、それほど大きく上がらないのは分かっているけどそこそこ配当もあって安心して持っていたいというのであればNTTを買う選択があります。

私が初心者にNTTをおすすめした理由としては、「練習台」として最適だと思ったからです。
よっぽどのことが無い限り事業が崩れることはなく、1株あたりの成長を安心して見ていられる、その上で持っているだけで安定した配当が高い確率で入ってくるという配当のメリットも得られるというものです。

基本的には安定した業績を眺めながら配当を受け取っていればとりあえずよしとしますが、それだけだとそこで終わりになってしまうので、そこから先の話としては、今のNTTのように株価が下落したとすれば、なぜ下落したのか、株式市場はどんな仕組みで動いているのか、ということを自分の頭で考えてみると、株式市場に対して見えてくるものがあるかと思います。
株式市場について少し分かってきたら、自分はその中でどういう取引をしたいのか、どうやって儲けていきたいのか、ということを考えてもう一度戦略を練り直すという、自分と相手を行き来しながら戦略を固めていくというのが私がおすすめする投資の勉強法です。

「自分がどういう投資をしたいのか」ということを言語化してみると良いのではないかと思います。

結局どういう投資が良いのか、悩むこともあるかと思います。
しかし、その答えはあなたの中にしかありません。
ぜひあなたなりの投資を見つけて、納得した投資生活を送っていただきたいというのが私からのアドバイスです。


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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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