【半導体戦争:後編】海外投資家が日本に熱視線を送る本当の理由

引き続き半導体の話となりますが、今度は半導体と日本の関わりについて見ていきたいと思います。

◆前編はこちら◆
米国が「台湾有事」を煽るのはなぜ?世界経済と地政学の鍵を握る半導体の話(前編)

これからの世界で日本が大活躍する?

今、半導体業界を握っているのは台湾のTSMCという会社ですが、この状態がアメリカにとって良くないという話を前編でしました。

実は日本はかつて、今の台湾に劣らないくらい半導体製造ランキングの上位を占めていました。(東芝、富士通、日立など)
しかし、この時に日本は半導体の世界で”成功しすぎた”のです。
高度経済成長期に、アメリカの技術をとにかく吸収し、アメリカより良い製品を安く作り続けた結果、アメリカには到底太刀打ちできない価格で良い製品を作れるようになりました。
アメリカとしてはそれが面白くないということで、日米貿易摩擦が発生し、アメリカに輸出できる製品の数を制限しました。
日本に対してはアメリカに工場を作るよう誘致したりと、今台湾にやっていることと同じようなことをやっていたのです。
日本企業としては少しやりづらくはなりましたが、業績が非常に好調ということで、大きな投資をやり続け、自ら過剰投資を招いてしまい、値下がりなどで財務的に厳しくなり、やがて最終メーカーとしては脱落してしまいました。

実は当時の日米貿易摩擦の時には、アメリカに工場を作るという流れにはなりませんでした。
良い半導体を作るためには原子レベルの細かい作業を行える勤勉な労働者が必要で、かつ賃金を安く抑えなければならず、アメリカはそのどちらも無かったからです。
そこでアメリカは、韓国や台湾に工場を作って彼らに半導体を作ってもらおうとしました。
その流れが、今のTSMCやSamsungの台頭へと繋がっているのです。

これを踏まえて今の状況を考えてみましょう。
アメリカとしては中国に持っていかれかねないTSMC(台湾)に半導体を握らせたままにしておくわけにはいかないものの、アメリカに工場を作るメリットはあまりありません。
そこで、アメリカの友好国で、中国の影響が及びにくい、日本に工場を作るということが、次善の策として十分考えられるのではないでしょうか。
バブル崩壊後、賃金がなかなか上がっていない状況ではありますが、メイドインジャパンの品質や国民の勤勉さは失われておらず、円安も重なって、世界から見た日本は低賃金・高品質の国となっていて、ここを使わない理由は無いわけです。
今後、最先端半導体工場が日本に入ってくることになれば、中国の危険回避地でありアメリカに都合の良い土地として日本が選ばれる可能性は十分にあると思われます。
TSMCの工場が熊本にできましたが、いまだに強い力を持っているインテルも日本に工場を建設することを計画していると言われています。
日本は労働力の供給はもちろんですが、工場ができるということになれば、そこに納入する企業は地場の企業で調達できたら輸送コストを下げることになりますし、人が来るということになるのでサービス業などもにぎわってくることになります。

東芝、富士通、日立といった最終メーカーは第一線から脱落してしまった部分はありますが、半導体製造装置や素材の分野など、細かい作業や一点を深堀りするところに日本は強みを持っています。
TSMCやインテルをはじめとする半導体メーカーのニーズに応えることでどんどん技術を進化させてきていて、目立ってはいなかったもののしっかりと力をためてきていたのです。
例えば、半導体を重ねる時に必要となるフィルムには、アミノ酸の研究をしていた味の素の技術が使われていて、これからの半導体に必要なものとして味の素の株価が上がっています。
このように、今後半導体を作るのに日本の技術が必要になる場面がますます増えてくるのではないかと考えられます。
アドバンテストやディスコ、東京エレクトロンなどの半導体ど真ん中の企業はもちろんですが、これまで培ってきた技術を半導体に活かせるという企業も伸びてきています。

最終メーカーではなく、部材や素材の供給などのニッチな分野になりますが、その分野に関しては間違いなく、それなくして最先端の半導体を作ることはできないという不可欠な存在となっている日本の企業群があります。
その企業群が日本の経済、日経平均株価を押し上げることになるのではないかと私は考えています。

日経平均5万円なるか?

足元で日経平均株価は上昇を続けていて、PERは15倍となり、割安感は薄れています。
ここから上昇を目指すには利益を増やすことと、ROE(資本効率性)を上げる必要があります。
資本効率性を上げる最も確実な方法は産業自体を伸ばしていくことです。
アメリカ株がこれだけ上がってきたのはGAFAMのような巨大IT企業が大きく伸びたからで、もしそれらの企業が無かったらそれほど伸びていないという現状があります。
日本にはエース的な企業があるわけではないですが、いろいろな企業が半導体の製造に関わって少しづつ利益を伸ばしていくことがこれからの日本に必要なことです。
だからこそ日本政府もこの分野にすごく力を入れていて、直近だと産業革新機構がJSRを買収するということがありました。
政府系ファンドはJALの例のように苦しくなった企業を助けるために動くものでしたが、今回は真逆で、優良企業であるJSRを買収ということで、それほど政治的な半導体の重要性は日本においても高まっているということです。

今、生成AIブームで、それに使われるGPUにはこれまで使われていたCPUと比べてより多くのチップが必要になります。
製造においてもこれまで以上にたくさんのチップが必要になるということで、そこで重要になるのが「生産能力」「集積技術」です。
日本企業はこの「生産(工場)」と「技術」の両方を満たす可能性を秘めていると思われます。

これまでの半導体を取り巻く環境にはPCやスマートフォンなどの市場がありましたが、生成AIはそれで儲けられるものではないので完全に楽観はできないですが、一方で生成AIを作っているGoogleやMicrosoftにはお金があって、互いに負けないように開発を続けなければなりません。
時代の大きな流れを考えると、これまでGAFAMのようなソフトウェア産業がため込んできた利益をハードウェアの方に吐き出すターンになるのではないかと考えられます。

これまでの話はあくまで仮説であって本当にこの通りに進んでいくかどうかは分かりませんが、一定の仮説を立てて、その仮説の中で有力な企業を探していくことが大切となります。


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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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