ウォーレン・バフェットが投資したことにより、投資家の間で総合商社の人気が高まっています。
しかし、各社の特徴についてきちんと理解している人は少ないのではないでしょうか?
そこで、今回は5大商社の特徴を解説します!
それぞれを一言で表すならば?という視点で分析し、そう考える理由を説明します。
それでは早速見ていきましょう!
三菱商事:商社の王者
- 企業規模の大きさ:売上・総資産・連結子会社全てトップ
- 事業構造のバランス:資源と非資源の割合が55:45
- ネットワーク:三菱G、セグメント間、世界ネットワークいずれも強い
まず、業界トップの三菱商事です。23年3月期の最終利益は1兆1,180億円、総資産22兆円という、とても大きな規模でビジネスを行っている企業と言えるでしょう。
三菱商事の資源と非資源の割合は55:45、ほぼ半々の非常に良いバランスです。
三菱商事の事業セグメントは10種に渡りますが、三菱商事の強みは、セグメント間のネットワークです。
出典:統合報告書
例えば、傘下に三菱自動車があります。その三菱自動車に対して、金属資源グループから銅金属を提供したり、総合素材セグメントでEV用の素材を提供するなど、自動車セグメントだけ見ても、様々なセグメントと関係があります。
このように、セグメントを超えたグループシナジーが三菱商事の強みであり、今後も様々なシナジーを利用して成長していくことが見込まれます。今後は、事業環境に対応した循環型成長モデルを掲げ、成長を加速する、としています。
様々な業界へのネットワークを活かすことで、新規投資先においてもより効果的な事業経営を行えるセグメント構造が強みです。
やはり総合商社を代表する企業、総合商社の王者は三菱商事です。
三井物産:資源に強み
- 資源利益:資源利益割合6割は業界最大
- 業績回復:資源高の恩恵をうけ、業界2位の経常利益を誇る
- 再生可能エネルギー:今後は洋上風力、燃料アンモニア、インドで大規模再エネに取り組む
総合商社業界2位の企業は、三井物産です。三井物産のセグメントを見てみると、金属などいわゆる資源系のセグメントの利益が大きいことが分かります。
出典:23年3月期 決算会説明資料より作成
23年3月期は資源高の追い風を受けて、それまで伊藤忠と競い合っていた業界2位の座を奪還しました。
主力の金属資源セグメントでは主にオーストラリア・チリなどにおいて鉄鉱石・石炭・銅鉱山などの事業に参画しています。エネルギー事業では天然ガス・LNGや石油、石炭、原子燃料などの事業投資や物流取引を通じ、エネルギー資源の確保と安定した供給体制の確立を目指している事業です。
両事業共に戦後から現在にかけて資源関係を取り扱う事業として、日本を支えてきました。今後の成長戦略である3つの軸を見てみましょう。
- クリーンな低炭素社会へのLNG(液化天然ガス)や再生可能エネルギーなど次世代エネルギーとなるアンモニアや水素などへ移行するための案件を進める
- ヘルスケアや、病気を未然に防ぐ“未病”の分野。アジアで病院事業を手掛けているが、チャンスがある。
- 国内外のサプライチェーンの高機能化
1のクリーンエネルギーへの移行は、総合商社業界全体の課題であり、今後成長性が見込まれる領域です。そこに注力するのは三井物産の事業構造を考えて、合理的です。
伊藤忠商事:消費者目線
- 非資源利益:非資源利益が7割を占める
- 関連会社:傘下にはコンバース、ファミマなど消費者と距離が近い
- 消費者×データ:消費者接点とデータ分析を活かして消費者目線の成長を目指す
続いては業界3位の伊藤忠商事です。
伊藤忠商事の特徴は、非資源分野の利益割合が高いことです。
出典:各社23年3月期 決算会説明資料より作成
伊藤忠商事の関連会社を見てみると、converse・Reebok・デサント・アンダーアーマー、ほけんの窓口、外為どっとコム、Dole、evian、ロータスそしてファミリーマートなど私たちがよく知っている企業・商品が存在しています
このように財閥系総合商社と違い、「え!あそこも伊藤忠なの!?」となるケースが多く、消費者との接点が多いことが大きな特徴です。このような事業構造であるため、非資源分野に、おいて強みを発揮しているのです。
今後の経営戦略は、消費者接点の多さを活かした顧客ニーズ分析に基づいた事業変革です。伊藤忠商事は子会社に伊藤忠テクノソリューションズというデータ分析やシステム開発を行う企業が存在し、グループとしてデータ分析の技術があります。
従って、強みの消費者接点を活用しながら、今後の経営戦略を掲げており、尚且つその実現可能性も高いように感じます。
三井物産と伊藤忠商事のさらに詳しい解説は、以下の記事でご覧ください。
住友商事:特徴がないことが特徴
- 幅広いビジネス:他社に比べて大きな特徴がなく、幅広いビジネスを行う
- メディア事業:JCOMなどのテレビメディアは他社は持っていない
- 北米鉄鋼事業:資源分野では北米における油井管シェア4割
業界4位に属しているのが、住友商事です。
事業として際立った特徴が少なく、なんでも行う商社です。
他社があまり進出していない事業、例えばデジタル・メディア事業があります。
具体的にはTV通販を行うSHOP CHANELやケーブルテレビのJCOMを持っています。またスーパーのサミットやドラッグストアのTomod’sもグループ企業です。
出典:住友商事 個人投資家説明会資料
23年3月期の決算では業績が拡大しました。
その背景には、やはり資源高の影響があります。住友商事は北米鋼管事業において強みを発揮しています。具体的には油井管(ゆせいかん)という石油や天然ガスを汲み上げるパイプで北米におけるシェア4割を占めています。
過去の利益の変動推移を見ても、変動が激しいことから基本的には資源価格の変動を受けやすい企業と言えるでしょう。
丸紅:食料に強み
- 食料事業:金属に次いで食料セグメントが台頭している
- 電力事業:資源高、円安で現在苦しい状況
- 今後:再生可能エネルギーの拡大を目指す
最後に紹介するのは丸紅です。こちらも金属セグメントが最も利益を稼いでいますが、2位に食料セグメントがきていることが特徴です。
出典:丸紅 23年3月期 決算会説明資料より作成
金属セグメントは豪州の石炭・鉄鉱石チリの銅山などへの権益ビジネスであるため、他の総合商社と差はありません。
食料第二セグメントではアメリカ・豪州を中心に牛肉などの畜産物・畜産加工品やトウモロコシや大豆、菜種などの穀物の販売及び輸出入を行っています。アメリカのヘレナ社という農薬肥料の米国第2位の農薬肥料の販売会社へ出資を行っています。
再び伊藤忠との比較になりますが、伊藤忠が消費者接点、いわゆる川下に強みがあるのに対し、丸紅は加工前の牛肉や穀元など川上に強みがあると言えます。
そして、丸紅といえば電力事業!というイメージを持たれている方もいらっしゃいますが、現状は芳しくありません。円安と資源高によって電力事業は苦しい状況が続いています。
そんな丸紅の中期経営計画は、グリーン・エコに全振りという内容です。
出典:丸紅 中期経営計画
金属資源・食料・電力など環境問題に直結しているセグメントが利益上位にきている現状を考えると、環境負荷の低減、循環経済・脱炭素(天然ガス・LNG)への移行を行うことで新たなビジネスを生み出すという方針は理解できます。
現在はカタールで太陽光発電事業を行い、ワールドカップで電力が使用されるなど実績もあります。
これが食料に強みがあり、環境負荷の軽減を通じて成長を目指す丸紅の現状です。
総合商社は業界内順位変動が激しい
最後に、各社の特徴と市場評価を一覧表にまとめました。
やはり、三菱商事の強さが目立ちますが、この業界は資源価格の変動リスクが高く、毎年業界内の利益高ランキングに変動があります。
例えば、2016年や2021年などの資源価格下落局面では伊藤忠商事が業界首位になった年もあります。非資源に強みがあることが株価にも反映されていて、見ごたえがありますね。
このように、総合商社はそれぞれが特徴を持ち、激しい争いを繰り広げています。つばめ投資顧問では、今後も総合商社業界の動向を追っていきますので、見逃さないようにメールマガジンの登録をお忘れなくお願いいたします!
執筆者
佐々木 悠(ささき はるか)
つばめ投資顧問 アナリスト 1級ファイナンシャル・プランニング技能士
東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。
協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。
銀行勤務時は投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。
2022年につばめ投資顧問へ入社。
プレゼント①『株式市場の敗者になる前に読む本』
プレゼント②『企業分析による長期投資マスター講座』第一章
プレゼント③『YouTubeプレゼン資料』
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