バフェットの格言で分かるバリュー株投資


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私の考え方は基本的にウォーレン・バフェットの考え方をベースにしています。バフェットは投資手法について詳細に語りませんが、バリュー株投資家にとって重要な示唆を短い格言で残しています。本記事では、バフェットの格言を私なりに解説し、皆さんにバリュー株投資についての理解を深めていただきたいと思います。

世界一有名なバフェットの、知られざる投資哲学

2017.10.01

【1】1ドルのものを40セントで買う哲学を学んだ

この言葉こそが、バリュー株投資を最も端的に表しています。バフェットはベンジャミン・グレアムに、価値よりも大幅に安い価格が付いている銘柄を買うことを教えられました。

価値と価格の差のことを「安全域」と呼び、安全域が大きい銘柄ほど魅力的と考えられます。長期的には価格は価値に近づいていきますから、安全域の大きさだけ利益を出せる可能性が高いからです。

また、確かな安全域を確認できれば、買値よりも多少値下がりしたところで動じる必要はなく、再び上昇するまで安心してその銘柄を持ち続けることができます

【2】株券ではなく事業を買う

多くの投資家は、企業が行っている事業の詳細を調べることなく、漠然としたイメージと株価の動き(チャート)だけを見て売買を行っています。しかし、それは「価値」を買うバリュー株投資にとっては全く意味のないことです。

株式の価値の源泉は、企業が生み出す利益であり、利益は事業から生まれます。事業を知らないことには、株式の本当の価値を判断することはできないのです。

事業を知る方法を挙げればきりがありませんが、最もまとまっている資料はアニュアルレポート(日本では有価証券報告書)でしょう。バフェットもアニュアルレポートを読み込むことで事業を理解し、銘柄を発掘しています。私も基本的な情報源は有価証券報告書です。

【3】「経済の堀」を持つ企業に投資する

「経済の堀」とは、他の企業が真似することのできない参入障壁やブランドのことです。経済学的にも利益の源泉は競合企業との差別化であるとされており、利益を出し続ける「価値の確かな」企業はその理由が明確になっています。

例えば、携帯電話会社はそれぞれ周波数が割り当てられていますが、今から参入しようとしても新たに電波の割当を受けることはできません。どうしても参入しようと思えば、大手携帯電話会社に回線を借りた上で、格安価格で参入しなければなりません。

しかし、格安で参入しても利益を出せる可能性は低く、最終的には参入障壁を獲得している大手携帯電話会社だけが生き残る形となります。大手携帯会社は広い経済の堀を持っており、その価値は簡単に崩れることはありません。(実際にNTTドコモ、ソフトバンク、KDDIは時価総額で上位にランクインし続けています。)

逆に、経済の堀を持っていない企業は、ちょっとした環境の変化で利益を出せなくなる可能性があります。携帯電話会社の例で言えば新規参入組で、彼らは一時的に利益を出せたとしても、より格安な競争相手が出てくれば簡単に淘汰されてしまうでしょう。

経済の堀を持たない企業への投資は、いくら株価が割安に見えても非常に難しいものです。

【4】簡単なことをやれ

投資で利益をあげようとして、自分の知らない銘柄に手を出し、大きな損失を出してしまう投資家は少なくありません。そんなことを繰り返していては、いつまで経っても資産を増やすことはできません。

「投資の世界には見送り三振がありません」と言ったのもバフェットですが、いくら魅力的に見えても、自分が理解できないものであれば投資する必要はありません。

このことを忠実に守り、バフェットはITバブルにおいて、他の投資家から一線を画してハイテク銘柄に手を出すことはありませんでした。当時は「時代遅れ」とまで言われましたが、その後のバブル崩壊で損失を免れたことは有名な話です。

大きく儲けようと思ったら、何か難しいことをしなければならないと考えてしまいがちですが、決してそんなことはありません。その必要がないことは、バフェット自身が証明しています。投資においては難しいことに手を出すよりも、自分を信じることの方が重要なのです。

【5】買いを入れるのは他の投資家がレミングのごとく一斉に売りに傾くとき

バフェットの投資哲学を見ていると、ただどっしりと構えていればいいように見えますが、勝負どころでは大きく出るのも重要な特徴です。そのタイミングとは、レミング(ねずみ)が一斉に海へ向かって行くように、投資家がパニックに陥っているときです。

【参考】レミングの行進

投資家がパニックに陥って売りに徹しているときは、株価は大幅に下落します。すると、本来価値のある企業の株も売られ、安全域が大きく広がる瞬間があります

実際に、バフェットはリーマン・ショックの際に、破綻したリーマン・ブラザーズと同業のゴールドマン・サックスに投資して大きな利益をあげました。

これは単に「逆張り」のことを言っているわけではありません。いくら株価が下がっていても、価値のない企業に投資したら最悪倒産してしまうかもしれないからです。あくまで、大きな「安全域」を意識したものに他なりません。

ショッピング・モールで「大安売り」が行われていれば、人々は大挙して買い物をしますが、株が「大安売り」になると投資家は逆に逃げていきます。このような投資家の行動が合理的でないのは明らかですが、どういうわけか幾度となく繰り返されるのです。それが人間の性なのかもしれません。

「価値」に投資している以上、ものを買うことと投資することに大きな違いはないのです。

※本記事は会員向けレポートの一部を抜粋したものです。

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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