先日公開した記事の中で、さくらインターネット、住石ホールディングス、三井E&Sを「仕手株」として取り上げました。
◆【さくらインターネット/住石ホールディングス/三井E&S】売るべきか買うべきか◆
しかし、特に三井E&Sに関して、「仕手株」という扱いをしたことを非常に反省しております。
三井E&Sの株価上昇は他の2社と比べて、確かな実績と背景を伴うものでした。
気分を害された皆さま、誠に申し訳ございませんでした。
多数のご指摘を受けながら、三井E&Sの注目度の高さを感じました。
今回は改めて三井E&Sがどのような会社で、なぜ株価が乱高下しているのか、深掘りしたいと思います。
三井”造船”ではない
三井E&Sは元々「三井造船」という名前でしたが、内容としては”造船”というところから離れてきています。
これが業績の推移ですが、2018年3月から5期連続で営業赤字を継続していて、かなりまずい状況でした。
日本の造船事業は、中国や韓国に押されて収益性がままならない状況が続いていて、三井造船もその中の一つとなっていました。
そのことから、継続企業の前提にかかる疑義、いわゆるゴーイングコンサーンに黄信号が灯る会社でもあったのです。
この状況を打開すべく、ここ数年はリストラを行っていました。
リストラというと主に事業売却です。
”常石造船と資本業務提携”とありますが、売却に近いものです。
このように、三井E&Sは造船事業から事実上撤退していて、三井造船の頃とは全く違う会社になっています。
造船業が全体的に調子が良いということで注目が集まっている部分もあると思いますが、三井E&Sはその恩恵の全ては受けられない体質になっています。
”港湾関係”は期待できる?
では、三井E&Sは今何をやっている会社なのでしょうか。
一つは産業機械です。
工場などで使われる大きな機械を作っています。
他の大きな事業としては船用エンジンを作っています。
IHIからエンジン事業を引き受けて、船自体は作らないものの、船用エンジンは強化しようという流れになっています。
また、港湾にある大きなクレーンなども作っています。
この”港湾関係”の部分が今回の株価上昇の一つのミソとなっているのです。
アメリカの港湾で中国のクレーンを使っていたのですが、安全保障上の問題でそれをやめようということになり、三井E&Sの米国子会社は、クレーンの米国内生産を再開する方針を示したということです。
しかし、報道はされたものの実際には何も決まっていない状況で、三井E&Sが受注できるとも限らず、かなり眉唾物の話だと思います。
判断材料として考えられるものではありません。
上方修正の内実
一方で業績は好調で、業績予想の上方修正を行っています。
これまで収益性が低く赤字になっていた事業を切り離して、利益が出るところでがんばっているようです。
外部環境が良いことも確かですが、それだけが上方修正の要因ではなく、利益が増えた主因は「受注工事損失引当金の取崩し」にあるのではないかと私は考えています。
これは、過去に、これから損が発生するかもしれないということで損失を計上していたものを、想定よりも損失が出なかったということで、マイナスを戻したということです。
実態として利益が出ているわけではなく、過去との会計上の調整ということになります。
この戻された金額がいくらくらいか問い合わせたところ、約20億円ということでした。
この20億円は一回限りのもので、事業で生み出した利益ではないので、これは差し引いて考える方が妥当だと言えます。
実質的なPER
三井E&SのPERは10.5倍程度となっていますが、実態を加味したPERを割り出したいと思います。
まず、経常利益160億円から損失引当金取崩し分の20億円を差し引いて、140億円とします。
また、これまで大きな赤字を計上してきていたので、その赤字の繰り越しで目先では法人税を払わなくてよいことになっていますが、今後は利益が出て、法人税を支払う必要があり、税率は約35%となります。
(160-20)×(1-0.35)=91
91億円という数字が妥当な純利益ということになります。
PERは、【時価総額÷純利益】で求めることができ、三井E&Sの時価総額は約2,000億円なので、2000÷91=21.97となり、実質的なPERは21.97倍ということになります。
PER22倍というと、決して割安とは言えない数字です。
今後、造船がさらに活気づいていったり、三井E&Sが事業を成長させていけるのであれば妥当といえる水準ですが、これまでリストラを行うなど苦しい状況に陥っていた中で成長していけるかというと難しい部分があると思います。
ビジネスとしては昔ながらの重厚長大型であり、大きな利益を出し続けたり、成長していく会社ではないのではないかと考えます。
少なくとも、実質のPERは22倍ほどで割安とは言えず、表面上のPER10.5倍という数字だけで判断するべきではありません。
以上、私の見解を述べさせていただきました。
皆さんの投資判断に役立てていただければと思います。
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