永久保有銘柄は本当に存在するか?


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ウォーレン・バフェットは、理想的な株の保有期間を聞かれると「永遠」と回答します。バフェットが支持する先人のフィリップ・フィッシャーは、素晴らしい企業を生涯持ち続けることを是としました。彼らの言うような「永久保有銘柄」は存在するのでしょうか。

「生涯の伴侶となる銘柄を探す」フィッシャーの投資哲学

2017.09.17

超長期保有で成果をあげるが、売却も厭わない

バフェットが保有する代表的な銘柄に、コカ・コーラアメックスウェルス・ファーゴ(銀行)などがあり、バフェットはこれらの銘柄を長らく持ち続けています。単に気に入っているから持ち続けていると言うわけでもなく、投資成績に大きく貢献しています。

※コカ・コーラの株価推移、バフェットは1988年から保有

一方で、全ての銘柄を持ち続けるわけでもありません。特に最近話題となったのがIBMの売却です。「ハイテク音痴」と言われたバフェットが満を持して投資した銘柄で、永久保有銘柄になるかもしれないと言われていました。

ところが、今年に入り保有分の3分の1を売却したことが明らかになりました。全てを売却したわけではありませが、業績低迷が続く同社に対してしびれを切らした上での決断と見られます。

いつ「永久保有銘柄」を売るのか?

IBMに限らず、バフェットは売る時は売っています。それは、過去からのポートフォリオの変遷を見れば明らかです。では一体どのような時に保有銘柄を売却するのでしょうか。

一つは、株価が上昇しすぎた時です。かつてバフェットはペトロチャイナに投資し、一時は筆頭株主にまでなりましたが、その後全株を売却しました。売却のタイミングは中国株ブームが巻き起こっており、同銘柄も大きく上昇していました。

ペトロチャイナを売却した理由は、「株価が上がりすぎたから」です。バリュー投資の基本である「価値」を基準に判断を行なった結果、価値よりも株価が大幅に上回ったと考えたのです。

株価は長期的には価値に収束します。それは株価が価値より高い場合も同様です。株価が価値を上回った時は、絶好の売り時といえます。ペトロチャイナはその後、中国株ブームの終焉と共に下落しています

※ペトロチャイナの株価、バフェットは2007年に売却

もう一つの売却タイミングは、自分の判断が誤りだったと認めた時です。バフェットといえど人間ですから、判断を誤ることはあります。また、投資してから考える中で自分の判断が変わることもあります。IBMはそのような流れで売却したと考えられます。

最大の教訓は、自分の間違いを認めることです。投資するとやがて自分の考えに固執し、客観的に物事を見られなくなることが少なくありません。いつまでも間違った考え方のままでいると、やがて大きな損失につながってしまいます。常に謙虚になり、自らに「ノー」と言える姿勢が、投資家として長く生きていくのには不可欠です。

「永久に保有したい」と思える銘柄を買う

私は、正真正銘の永久保有銘柄は存在しないと考えています。世の中は常に移り変わり、会社の中身も変わってしまいます。そんな中で、永遠に成長を続けることは不可能と考えます。

株式会社が誕生してからまだ数百年しか経っていませんが、その間でも成長し続けた会社はありません。歴代の国家・王朝を見ても、どこかで必ずつまずき、滅亡しています。「栄枯盛衰」という言葉があるように、どんな銘柄も常に移り変わっているのです。

バフェットも、本当に永久保有銘柄があるとは考えていないのではないでしょうか。それでも、バフェットが「永久」を強調する理由は、以下の発言に集約されています。

初めから売りを考えて買うような株は、10分たりとも持ってはいけない

長期投資をする以上、株を持つということはリスクを伴う行為です。そのリスクを少しでも低減するためには、少なくとも買う時点では売るべき事象が考えつかなくなるほど徹底的に調べて、保有すべきかどうか判断しなければならないということです。

そこまでやって見つけた優良銘柄でも、事業を続けている以上失敗したり、投資家に嫌われて株価が値下がりしてしまうこともあります。そんなことでいちいち売却するかどうか迷っていたら、悩む時間が無駄になりますし、軸のない長期投資は本当の上昇を逃してしまいます

現実的には永久保有銘柄は存在しないかもしれません。しかし、少なくとも買う時点の「理想」としては、永久に保有したいと思えるものを探すのが、バリュー株投資の本質だと私は考えます。

※本記事は会員向けレポートの一部を抜粋したものです。

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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