今回はNTTについてです。
2023年度の決算発表を受けて、株価が大きく下落しています。
株式分割によって、低い金額から投資できるようになったということで、多くの個人投資家、特に初心者の方が参入した銘柄だと思います。
今回下落したNTTに対してどのように振る舞うかによって、投資に対する見え方が変わってくると思いますので、ぜひこれを学びの機会にしていただきたいです。
決算発表のどこが悪い?
NTTの主な事業としては、携帯電話事業(NTTドコモ)、固定電話事業、インターネット回線、NTTデータ(システム開発)などがあります。
NTTについての過去の記事もぜひお読みください。
◆NISAランキング1位!NTTを買うメリットとリスクを解説!◆
業績は基本的には安定していて、今回の決算も大きく減益というわけではなく、実績に関してはむしろ増収増益となっています。
一方で株価は、5月10日の決算発表後に大きく下がっています。
下がった理由を端的に言うと、業績予想が悪かったからです。
株式投資では、過去の実績よりも、今後どうなるのかというところに注目が集まります。
したがって、期末の決算で大きな意味を持つものは「業績予想」ということになります。
その業績予想が、売上高はなんとか854億円のプラスとなっていますが、営業利益は1,129億円の減益、当期利益が1,794億円の減益となっていて、増収・減益の予想となっています。
減益決算ということで、基本的にはネガティブに捉えられます。
NTTのこれまでの業績を見てみると、2020年3月からずっとプラスで推移してきました。
投資家としては、今後も増収・増益を見込んでいた部分があると思われ、減益ということになるとその期待が裏切られたような形になります。
減益発表は”意図的”?
なぜ今回の決算が減益になったのかを詳しく見てみると、この減益はあまり問題ではないと思えます。
これは「ウォーターフォールチャート」といって、その年の売上や利益の変動の要因を表したグラフです。
総合ICT事業(インターネット、携帯電話)は増収・増益、グローバルソリューション事業(NTTデータ)も増収・増益の予想となっています。
ところが、地域通信事業(固定電話)が減収・減益となっています。
ここで会計の話をすると、将来払うはずだった費用を先に計上したりすることで、損益計算書はある程度意図的に動かすことができます。
地域通信事業だけが大幅な減収・減益になっているというところに私はかなり強い意図を感じます。
NTT法の呪縛
今のNTTにとっては、『NTT法』の改正・廃止の議論が重要となっています。
直近の国会でNTT法の改正が行われて、外国人の役員を入れられるようになったり、NTTが開発したものは公表しなければならないとされてきたものが公表しなくてもよいということになりました。
ただ、NTTの悲願としては、NTT法の廃止というところまで踏み込みたいと考えているようです。
NTT法が廃止されれば、NTTはユニバーサルサービスの呪縛から開放されます。
ユニバーサルサービスとは、固定電話サービスが利益にならなかったとしてもインフラとしてNTTが維持しなければならないというもので、NTTが電電公社の頃からNTT法によって負わされている義務です。
この義務は民間企業としては当然不利になってしまいます。
NTTはこのユニバーサルサービスという足かせから外れたいという思いがあります。
その思いが強く現れているのが3月5日に行われた説明会の資料のグラフです。
固定電話や公衆電話での「メタル設備」と呼ばれるものが、利用者が減る一方で設備の維持コストがかかり続け、損失が膨らんでいくということをNTT自身が言っています。
このままいくと、2045年までに累積で1.9兆円の損失になるということです。
わざわざ損失をアピールすることには意図があり、NTTの置かれている状況を考えると、その意図というものはNTT法を逃れたいということになります。
そのために、地域通信事業のマイナスを大きく出しているのではないかと私は思っています。
今なぜNTT法廃止の議論が行われているかというと、国、あるいは自民党としては、今持っているNTTの株式を売って財源にしたいからです。
NTT法によって、株式の33%は国が持たなければならないことになっていて、売却するためにはNTT法の廃止や何らかの改正が必要ということになります。
NTTの時価総額が約15兆円なので、その33%の約5兆円を財源にできるとなれば、自民党としては放っておく手はないでしょう。
しかし、このNTT法廃止の議論は今苦しい状況に立たされています。
直近の国会までは、NTT法は今後廃止に向けて議論するとなっていたものが、廃止も”含めて”議論するという風にトーンダウンしています。
この議論を主導していたのが自民党の萩生田氏で、安部派であり、今回の政治資金問題でNTT法どころではなくなってしまいました。
それによって、NTT法の廃止が後ろ向きになってしまい、NTTには危機感があったのではないかと見て取れます。
それが今回の減益予想に現れたのだと思われます。
下落に慌てるべからず
NTTにとってネガティブな状況が続くかというと、私はそんなことはないと考えています。
NTT法が廃止された暁にはコストを削っていくことができますし、今回、会計上の費用を前倒しにするような動きを行ったのだとしたら、当然どこかでその逆の動きが起こることになり、前倒ししたコストの分だけ利益が大きくなります。
NTT法の廃止はNTTにとってプラスに働くもので、NTTはそれに向けて粛々と動いているように私には見えます。
今回の決算発表でポジティブな内容もあり、配当に関しては今期も増配になるということですし、NTTはこれまで自己株式取得を粛々と行ってきて、特に政府から直接自己株式を取得することもあって、これも政府にとっての財源となっていました。
今後も自己株式取得を行っていくならば、仮に利益が伸びなくても1株あたりの利益が伸びていくことになり、それによって株価も上昇する可能性があります。
株主還元が継続的に行われるということは、長期的に見てもポジティブな要素だと言えます。
自己株式取得で株数が減ることによって1株あたり利益が伸びていくことは、NTTの大きな強みであるということは覚えておいてください。
そもそもそこまで大きく伸びる銘柄ではなく、少しずつのプラスとたまにマイナスを繰り返しながら年数%伸びていくといった銘柄となっています。
自己株式取得と地道な利益の伸びによって成長していく銘柄だと思っておきましょう。
今回、株価としてはピークから20%下がったしまいましたが、配当を受け取りつつじわじわと伸びていくのであれば、仮に現時点で20%マイナスになっていたとしても、1年、2年と経つうちに配当も含めてプラスになっている可能性は高いと思います。
もしNTTをたくさん買いたいと思っているのであれば、今のような下がったタイミングで買うことでプラスになるタイミングが早まると言えでしょう。
最も良くないことは、今、狼狽売りしてしまうことです。
その企業が売るべき悪い企業だったら売る必要がありますが、良い企業だと思っているなら買い増す時ですし、悪い企業でなければ株価が戻ることもあるので、売るにしてももう少し後の話になります。
下がった時は成長のチャンス
株価が下がった時に、下がった理由であったり、株価の動きについて本気で勉強し始めた人がやがて投資家として成長して、そのうち自分が本当に買うべき良い銘柄に巡り合うことができます。
だからこそ、株式投資では下がった時の動きが重要となるわけです。
銘柄の良し悪しはすぐに判断できるものではありません。
2年、3年という期間を見てみて始めて掴めてくるこのなので、ぜひ気を長く持って取り組んでいただきたいと思います。
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