本多静六に学ぶ、普通の人が人生を豊かにする投資法


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本多静六という人物をご存知でしょうか。明治~昭和初期に活躍した造園家・林学博士で、日比谷公園をはじめとする数々の有名な公園の設計に携わりました。しかし、それ以上に一介の学者でありながら投資で100億円以上(現在の価値に換算)の資産を築いたことで有名です。

単なる学者が大資産家になった「教科書的」な方法

もともと貧乏な暮らしをしていた本多は、金銭的に余裕がなければ生活に自由がなくなってしまうと考え、投資の世界に足を踏み入れます。

そうはいっても、貧乏育ちで雇われの学者にすぎなかった本多が、いきなり大金をつぎ込むことは困難です。そのため、まず行ったのが「四分の一天引き貯金法」です。

これは、給料のうち四分の一を投資の元手のために貯金するというものです。簡単そうに見えますが、当時の駆け出しだった本多の給料は微々たるもので、おまけに養わなければならない家族が大勢いたため、最初は相当な貧乏暮らしだったようです。

苦労して貯めた資金で、まず投資したのが「山林」です。山は彼の専門分野であり、当時は広大な山が二束三文で売られていたことから利用価値のある山を次々に買い集めました。

しばらくすると日露戦争により大量の材木需要が生まれます。二束三文で買った山は70倍にもなって、多額の利益を得たのです。

山林だけではありません。株式投資にも積極的に乗り出しました。

特に大きな成果を出したのが、関東大震災のときです。震災により急落した東京電灯(現・東京電力)株を「いくらなんでも下がりすぎだろう」と資金が許す限り買い増しし、本人が「一番うまくいった」と評するほどの成功を収めました。

相場の見方については、変動を気にせず「好景気時代には勤倹貯蓄を、不景気時代には思い切った投資を、時機を逸せずに巧みに繰り返す」と語っており、まさにバリュー株投資に通じるものだと考えられます。

本多静六の投資術から学べるエッセンスは以下のようなところでしょう。

  1. まずは節約により元手を確保する(「四分の一天引き貯金法」
  2. 得意分野に投資せよ
  3. 総悲観は最大のチャンスである

特に3つ目はバリュー投資の大家であるジョン・テンプルトンにも通じるところがあります。

「悲観の極みは最高の買い時」テンプルトンの投資哲学

2017.09.12

資産運用の目的は「人生を豊かにすること」

投資術も目を見張るものがありまうすが、注目すべきは本多の生き方だと思います。

投資を始めたきっかけは、経済的な不安をなくし、自由に生きることが目的でした。そのために、初期は節制に励み、「四分の一天引き貯金法」でせっせと元手を蓄えたのです。

投資に成功し、一生働かなくてもいいお金を手にした本多でしたが、決して仕事を辞めることはありませんでした。それどころか、一層仕事に精を出したのです。その結果が、彼が設計した全国にある数多の有名な公園です。

本多はこれを「職業道楽論」と呼びました。経済的な余裕を手に入れたからこそ、自分のやりたい仕事を精一杯やって人の役に立つほど、幸せなことはないという考えです。

よくある儲け話の売り文句に「経済的な自由を手に入れる」とありますが、そのイメージは大儲けしてビーチでゴロゴロ過ごす姿です。少しの休暇なら楽しいでしょうが、そんな生活を何年も続けていて果たして充実した人生と呼べるでしょうか。

本多の生き方は、現代の普通の人にとっても現実的な「投資人生」を教えてくれるものでしょう。こつこつと元手を蓄え、投資により資産を増やすことが出来れば、いつ会社を辞めても大丈夫という気持ちを持ちながら、かえって自由に自分のやりたい仕事に取り組めます。

会社に忠誠を示すことによる出世を望まなければ、自分の仕事を済ませて定時で帰っても何も不安になることはありません。有給休暇も100%消化できるでしょう。

資産運用で最後に大切なのは「いくら儲けたか」ではなく「資産を増やしてどうするか」だと思います。本多は莫大な資産で贅沢するわけでもなく、引き続き質素倹約に励み、当時では珍しかった海外旅行をささやかな楽しみとしていました。余裕があるからこそ、公園設計でもいい仕事ができたのでしょう。

資産を増やして人生を豊かにする ― 当社ではこの理念を大切に、皆さまのお手伝いをできればと考えています。

【参考】私の財産告白(Amazon)

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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