結局割安株と成長株はどっちが有利なのか?私のポートフォリオ戦略

バリュー投資家は、割安株を追い求めるがために、企業が持つ成長性を見過ごしてしまいがちです。

割安株と成長株の期待値

例えば、以下のような2銘柄があったとしましょう。

  1. PER10倍、業績は手堅く横ばい
  2. PER20倍、業績は伸びる余地はあるが確実ではない

この2択だと、バリュー投資家としてはどうしても1番を選んでしまいがちです。

業績が手堅くPERが10倍なら、下値余地が小さいと考えます。相場が上向きになり、PERが15倍になれば50%の利益を得られます。

すなわち、100万円投資したときの利益の期待値は50万円です。

一方で、2で業績が伸びずにPERが15倍になると、株価はマイナス25%となります。逆に利益が2倍に伸びれば、PERが20倍のままだとして株価も2倍となります。

それぞれ起きる確率が50%だとすると、100万円投資したときの利益の期待値は37.5万円(100万円×50%-25万円×50%)となります。

バリュー投資家はこのように考えて、期待値の大きい1を選んでしまうのです。(数値はかなり簡略化しています。)

成長株は「人気化」とセットで考える

しかし、利益が2倍になる銘柄への人気は高まるものです。そこで、利益が2倍になったときにPERが30倍になったとしましょう。

株価は利益2倍×PER1.5倍で3倍となります。利益の期待値は87.5万円(200万円×50%-25万円×50%)となり、1を上回ります。

割安株成長株
(失敗)
成長株
(成功)
成長株
(人気化)
X年EPS10
PER10
株価100
EPS5
PER20
株価100
EPS5
PER20
株価100
EPS5
PER20
株価100
X+3年EPS10
PER15
株価150
EPS5
PER15
株価75
EPS10
PER20
株価200
EPS10
PER30
株価300

これが成長株に投資する人の考え方です。すなわち、業績がいい銘柄は、同時に投資家の期待も上昇すると考えるのです。そして、必要以上に投資家の期待が高まった時こそ売り時と考えます。

割安株へ投資する際は、人気の上昇を考慮しません。あくまで、「適正価格」と現在の価格との乖離が解消されるのを待ちます。そのため、なかなか乖離が解消されない「バリュートラップ」にはまってしまうことがあるのです。

「バリュートラップ」を避けよ!

2016.08.30

結局どっちが儲かるの?相場環境で異なる期待値

それでは、どちらの方が儲かるのでしょうか。

もちろん、一概には言えません。ただ、その時々の相場状況で銘柄選択が変わってくるべきだと思います。

例えば、成長株の平均PERが30倍のタイミングなら、そこから更にバブルが起きない限りはPERの上昇は見込みにくいでしょう。したがって、成長株投資は必ずしも有利ではありません。

逆に、成長株の平均PERが15倍のタイミングなら、PERが30倍の相場になるだけで2倍の利益が見込めます。(もちろん、成長株であり続けることが前提です。)

つまり、相場が良いときは無理に成長株に投資せず、相場が悪くなった時に成長株に投資すると、より高いパフォーマンスが望めるのです。

割安株は下値を抑えることでトータルのパフォーマンスを上げることを目指すものですから、相場にかかわらず有効性は高いと言えます。ただし、劇的なリターンをあげられるものでもありません。

つまり、相場が悪いときにこそ成長性を重視し、逆に相場が良いときは割安株またはキャッシュで守りを固めるのが王道です。PER等の指標を長年定点観測していれば、今が良い時なのか悪い時なのか見極められるようになります。

今はどうすべきか?私のポートフォリオ戦略

足元で言えば、中国の景気指標は明らかに悪化しています。10年にわたって続く世界的な景気拡大も終盤を迎えつつあり、不穏な空気が続いています。あえてPERの高い成長株に投資する局面ではありません

もちろん、個別銘柄で安くて良いものを探しているのですが、それがわんさか出てくるような状況ではないのです。どの銘柄も方向感がつかめません。

だからこそ、私は大きく下げた時に備えて、買うべき成長株をリストアップしています。いわば準備期間です。価格を気にせず分析していると、買いたい銘柄がどんどん出てきます。

これから大きく下げた時はチャンスです。その時は、残しておいた資金を積極的に投入し、かつ一部の割安株を売却してリストアップした成長株に入れ替えることで、ポートフォリオの期待値を上げることができると考えます。

もし割安株で含み損が出ていたとしても、それは仕方がありません。相場の先行きは読むことが困難だからです。入れ替えのために損切りすることは、決して悪いことではないのです。

このように、状況に応じてポートフォリオの入れ替えを行うことも時には必要です。自分なりの相場感を持ち、ポートフォリオの期待値を最大化することが、投資家にとって必要なスキルの一つなのです。

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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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