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東芝が中国企業の美的集団に白物家電事業を売却するというニュースが出ました。先日の東芝メディカル売却と併せ、リストラが着々と進んでいる印象です。一方で株価はこの1年間で大幅に下落しています。この記事では、東芝の買い時について考えてみます。
東芝がリストラを続ける理由
なぜ東芝がこれだけのリストラを進めているのかというと、電力・エネルギー事業や家電事業の採算が悪化していることと、昨年発覚した不適切会計の影響で市場からの資金調達が困難になっていて、少しでも現金と資本を確保する必要があるからです。2015年度は7,100億円の最終赤字予想となっており、何としてでも債務超過を回避する必要が出てきているのです。
幸いにして、東芝メディカルを高値で売却したことで当面の危機は回避できたと言っていいでしょう。しかし、それで問題は解決しません。家電事業は過去4期に亘って営業赤字を計上しており、今期で5期連続となる予想となっています。ここを何とかしなければ、今後の東芝の復活はあり得ません。
家電事業は、東芝に限らず日本メーカーの苦戦が続いています。日本国内ではまだいいですが、グローバルで見れば韓国・中国メーカーに完全に競争力で負けています。過去米GEが日本メーカーに敗れて家電事業から撤退したのと同じことを、今度は日本メーカーがされているわけです。
はっきり言って、自力での家電事業復活は難しかったでしょう。産業革新機構が画策していたシャープとの統合も頓挫した今、外資企業への売却は必然だったと言えます。
東芝には何が残っているか
メディカル事業と家電事業を売却した東芝に残っている事業は「電力・社会システム」「コミュニティ・ソリューション」「電子デバイス」です。この3つで売上高のほぼ3分の1ずつになり、事業構成としてはとてもシンプルになりました。
電力・社会システム事業は、原子力発電をはじめ、世界のインフラ設備の受注を担っています。この分野、アメリカのGEやドイツのシーメンス、フランスのアレバなどの名だたる企業熾烈な受注競争が繰り広げています。受注を増やそうと思えば、多少の利益は犠牲にしなければなりません。昨年の不適切会計の温床にもなった事業であり、今後も利益を出すことは容易ではないでしょう。
コミュニティ・ソリューション事業は、ビルの空調や照明、エレベーター、POSシステムなどの製造・管理を担います。重電メーカーとシステムメーカーの間の子のような事業で、日立や三菱電機が競合となります。一度作ってしまえば、その後のサービスなどでストック型の収益が期待できる事業で、これまで一定の利益を確保しています。
電子デバイス事業は、世界第2位のシェアを誇るNANDフラッシュメモリをはじめとする半導体を製造しています。特にスマートフォン市場が急拡大したことにより需要が急増し、ここ数年の東芝の業績を下支えしていました。しかし、最近はスマートフォンの出荷台数減少や、サムスン電子をはじめとする海外勢との競争激化により価格が下落し、見通しが怪しくなっています。
時価総額1兆円は割ったが…
さて、本題です。将来の見通しを考えて、今の東芝の株価は割安なのでしょうか。
明るい見通しとしては、このリストラにより、少なくとも業績の改善は見込めます。人員削減や不採算事業の減損処理が終了すれば、その先数年は費用を削減が見込めるでしょう。また、損失を計上したことにより、しばらく法人税が減少しますから、純利益のかさ上げも見込めます。事業面では、コミュニティ・ソリューション事業が安定した利益を計上するようになるでしょう。
一方で、電力・社会システム事業と電子デバイス事業は今後も大きなリスク要因となります。電力・社会インフラ事業は受注競争で利益を出しにくい構造となっています。また、電子デバイス事業は、製造のため大きな設備投資が必要な上、サムスンなどグローバルで熾烈な競争が繰り広げられる、シャープにおける液晶と同じような構造となっています。半導体という意味でも、過去にエルピーダメモリが破綻したように、非常に厳しい業界です。
確度の高い利益といえば、コミュニティ・ソリューション事業の500億円程度です。それに対し、東芝の時価総額は約9,000億円あります。1年前に2兆円を超えていたところからはかなり下がりましたが、バリューハンターとしてはまだまだという印象です。東芝が輝きを取り戻すにはもっと踏み込んだ経営改革を行う必要があると思います。
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