ZOZO前澤氏はなぜヤフーに株を売るのか?それぞれの思惑とこれからの行方

ヤフー(4689)がZOZO(3092)に対しTOB(株式公開買い付け)を行うことが発表されました。順調に行けば、ZOZOはヤフーの連結子会社となります。ZOZO株式の36%を保有する前澤氏が30%を売却するということで、成立は確実視されています。

金持ちなのに「金欠」だった前澤氏

TOB価格は2,620円です。発表を受け、両社ともに株価は上昇しています。

私もこの発表を受けて驚きました。特に、前澤氏が株を売却し、ZOZOの社長を退任するという点は青天の霹靂です。

前澤氏の最近の金遣いの荒さは際立っていました。高額の絵を買い漁ったり、Twitterで現金をばらまいたり、果ては宇宙旅行を買ったりと、常人には考えられない豪遊っぷりです。

しかし、多くの創業者の資金源は、自社株を担保に出すことによる銀行借入です。ZOZOの株価はここのところ低迷していましたから、銀行から追加の担保を要求され、前澤氏は金持ちなのに「金欠」になっていた可能性があります

大量の自社株はなかなか売れるものではありません。自らの売りが株価を下げることになりますし、売却が明らかになったら投資家の負の憶測を呼びます。そこへヤフーが株を買ってくれると言ってきたら、まさに渡りに船だったわけです。

業績の足を引っ張るショッピング事業「起死回生策」

一方のヤフーにとっても、この買収は起死回生の策です。同社はこれまで出店料無料化などによりショッピング事業に力を入れてきたものの、利益は一向に上がらず業績の足を引っ張っていたのです。

ショッピング事業が軌道に乗れなかったのは、楽天とAmazonとの競争により、ヤフーが独自のポジションを打ち出せなかったからでしょう。結局大量のポイント付与によりコストばかりがかさむ状況となっていました。

そこへ、アパレルでは押しも押されぬ最大手のZOZOを取り込めれば起死回生となる可能性があります。ヤフーはここで勝負をかけたのです。

うわ・・・ヤフーの株価安すぎ・・・?コマース事業の拡大は吉と出るか凶と出るか

2019.03.29

「前澤リスク」排除は成長を後押しするか?

一方のZOZOにとっても、悪い話ではなさそうです。

株式の直接的な売却要因は前澤氏の懐事情が大きいと見ていますが、経営的にも「前澤リスク」が大きくなっていました。過激な発言が「炎上」を招くだけでなく、ZOZOスーツの失敗や独自割引制度による出店企業離れを招いていました。

ZOZOTOWNとユニクロの全面戦争勃発!アパレル業界の覇権を握るのはどっちだ?

2018.09.25

あくまで私見ですが、アパレルのネットショッピングはまだまだ黎明期で、その筆頭であるZOZOに求められるのは奇策ではなく、王道だと思います。しかし、前澤氏はその特徴的なキャラクターゆえに、普通のことでは満足できない部分があるのでしょう。

ここで日本のインターネット社会を牽引してきたヤフーに道を譲ることで、着実な成長に邁進できると考えます。

ヤフーよ、そんなに急いでどこへ行く

一点気になるのが、ヤフーについてです。

本来、ポータルサイトで何の心配もいらない会社なのですが、最近はショッピングやPayPayなど、やたらとお金をかけてもがいている印象です

そこへ4,000億円をかけてZOZOを買収するのです。財務的には問題ないのですが、「そんなに急いでどこへ行く?」という印象を持ちます

おそらく、ソフトバンクの孫社長から発破をかけられているのでしょう。ビジョンファンドと同じような動きをしています。もうかつてのヤフーと同じように見ないほうが良いのかもしれません

Print Friendly, PDF & Email

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

詳細はこちら
サイト訪問者限定プレゼント
あなたの資産形成を加速させる3種の神器を無料プレゼント

プレゼント①『株式市場の敗者になる前に読む本』
プレゼント②『企業分析による長期投資マスター講座』第一章
プレゼント③『YouTubeプレゼン資料』

メールアドレスを送信して、特典をお受取りください。
メールアドレス *
※送信したメールアドレスに当社からのお知らせやお得な情報をお送りする場合があります。

※個人情報の取り扱いは本>プライバシーポリシー(個人情報保護方針)に基づいて行われます。
※送信したメールアドレスに当社からのお知らせやお得な情報をお送りする場合があります。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取扱いには十分留意してください。

気に入ったらシェアしてもらえると嬉しいです!

1 個のコメント

  • 皆さんがZO ZOをアパレルの覇者みたいに言われていますが、ちと時代に疎いと呆れています。
    私も呑屋談議の総合でしかありませんが、 ZO ZOスーツの失敗、高いマージン等で優良テナントが随分と流出しました(①)。
    ZO ZOシューズなんて断末魔にしか見えません。
    これに連れて高額顧客も随分、減ったとか(②)。
    「 ZO ZO離れ」で検索すれば色々、出て来ます(①、②とも)。
    私から見れば ZO ZOは賞味期限切れかと。
    むしろヤフーはどこに勝算を見つけたのか?
    まあ、今ではヤフーはIT企業では無くM&A屋さんですし、孫氏は「走りながら考える」性ですから、「ヤフーショップに欠けている部分だし、先ず補充して、合体してから考えよう。後でリストラも出来るし」てな所かと。
    報道ほど筋は良く無いかと。

  • 高瀬 昌也 へ返信するコメントをキャンセル

    Popular Article - よく読まれている記事Popular Article

    • 銀行株は今後どうなる?そろそろ売り時?
      今回は銀行株についてです。 銀行株が上がりましたが、もう売るべきなのか、まだ持ち続けるべきなのか、悩んでいる方はぜひお読みください。 売るか...
    • 【紅麹問題の小林製薬】株価20%下落はチャンスか? 過去の成功・失敗事例から学ぶ
      騒動の発端は2016年に遡る 紅麹は米などで紅麹菌を繁殖・発酵させたもので赤い色をしています。コレステロールの抑制作用や血圧低下、リフレッシ...
    • 【アステラス製薬の下方修正】1年で株価40%下落 営業利益90%減少の理由。今は買い?売り?
      アステラスの業績の変化 2024年4月12日、アステラス製薬は下方修正を発表しました。   その内容は、 「24年3月期第4四半期...
    • 株価20%上昇の大林組 3倍になった配当金は続くのか?今から投資するべき?
      大林組はゼネコン業界のNo.2の企業である 大林組はいわゆるゼネコン業界に属している企業です。 ゼネコンとは、ゼネラル・コントラクターの略称...
    • 【HIS】旅行需要回復でも株価が伸びない理由は?投資チャンスか?
      HISは儲かっている? HISは1980年創業の大手旅行代理店です。 格安航空券を仕入れパッケージプランとして販売し、当時敷居が高かった海外...

    Article List - 記事一覧Article List

    カテゴリから記事を探す