明らかになった市場の「トランプ依存症」。賞味期限は2020年!?

先週の株価はやや軟調な展開となりました。

米国ではトランプ大統領への弾劾(辞めさせること)への機運が高まっています。きっかけは、民主党の次期大統領候補となる可能性のある前副大統領のバイデン氏の息子に関する疑惑です。

大統領を弾劾に追い込む「疑惑」とは?

バイデン氏の息子がかつて在籍したウクライナの天然ガス企業における汚職疑惑について、バイデン氏がウクライナ当局の捜査を妨害しようとした疑いが指摘されています。

これだけを見ると、悪いのはバイデン氏のように見えますが、問題となっているのはこれを知ったトランプ大統領が政治的圧力を使ってバイデン氏に対する捜査をするようウクライナに働きかけたことです。具体的には、ウクライナへの軍事支援の撤回を示唆しています。

自らの政敵を落とし込むために、政府の権力、まして軍事力を使ったことは公私混同、大統領権限の私的濫用です。野党・民主党はここを問題視しているのです。

この問題が発覚すると、市場はネガティブに反応しました。トランプ大統領が罷免されるようなことがあれば、株価が下がる可能性が高いと踏んでいるのです。

トランプに翻弄され、いつの間にか依存するようになった株式市場

もともと、与党・共和党は市場寄り、対する民主党は反市場寄りとされます。しかしそれ以上に、投資家はいつの間にか株価の維持をトランプ大統領に依存するようになってしまったのです。

この1~2年間における株価の上げ下げは米中貿易戦争の緊張と緩和、ならびにFRBによる利下げをめぐる攻防を軸に動いています。いずれも、発端は大統領発言にあります。そして、結果として大統領は株価の上昇に成功しているのです。

これはとても危険な兆候ではないでしょうか。

そもそも世界経済には暗雲が立ち込めています。10年続いてきた株価上昇にもそろそろ調整が入ってもおかしくないのですが、そうさせまいとしているのがトランプ大統領です。

トランプ大統領が株価をそこまで意識するのは、次回の大統領選挙(2020年)に当選するためです。投資に熱心な米国では、株価と政権支持率は密接にリンクしていますから、株価の上昇は再選を目指す大統領にとって至上命題なのです。

市場もそれをわかっていて、それでも株価が上がるのならと乗っかっている向きがあります。政策の良し悪しは別にして、上がりそうだったらその流れに乗ろうとする。もはや市場は「トランプ依存症」に陥っているのです。

もしトランプ大統領が罷免されるようなことがあれば、モルヒネが切れた重症患者のように急激に痛みを感じるようになるでしょう。

また、再選したとしても、自身が立候補する3回目の選挙はありません。すなわち、政権2期目は株価を上げるモチベーションがなくなることを意味しています。(親族を後継者にしようとしない限り。)

つまり、いずれにしても「トランプ依存症」となった市場の賞味期限は2020年までということになるのです。

奇しくも、2020年は日本でもオリンピックが終わり「特需」が剥げるタイミングでもあります。今のような堅調な相場がいつまでも続くとは考えない方が良いでしょう。

投資で成功したければ「コントラリアン」たれ

このように、私は悲観的な見通しを話すことが多いのですが、別に悲観主義者というわけではありません。根っからの悲観主義者なら、株式投資、まして長期投資なんてとうの昔にやめています。

悲観的な話をするのは、今の市場が楽観に傾きすぎていると考えるからです。持ち株が上がるのは嬉しいことですが、だからと言ってこれに気を良くしていると痛い目にあいます。今買ったら高値づかみになってしまうかもしれないからです。

絶好の買い場は、間違いなく大半の人が絶望し、株価が大暴落したときです。この10年で見ても、リーマン・ショックやチャイナ・ショック、ブレグジットで大きく下がった時に投資していれば大きな利益をあげることができました。

チャート画像

次に暴落が来た時は、私は喜んで買い向かうでしょう。その意味で、悲観主義者なのではなく、逆張り主義者(コントラリアン)なのです。

コントラリアンでいることは、相場で利益をあげるための大きな資質であると確信しています。なぜなら、大勢が向かうところには残る利益が少なく、逆に誰もいないところにこそ、大きな利益が残っている可能性が高いからです。

これは投資だけでなく、商売についても同じことが言えるでしょう。例えば、ニトリや日本電産は不況期にこそ積極的な投資をすることで、競合他社を出し抜き大きな利益を出し続けています。

日本電産・永守社長は稀代のバリュー投資家!

2016.04.03

また、相場の格言にも似たようなものがあります。

人の行く裏に道あり花の山

この格言は何をおいてもまず最初に出てくるものです。

株価は上がるときもあれば、下がるときもあります。

長期投資では1円でも安く買うことが正解であることは間違いありませんから、あえて上がっている時に買う理由はないのです。

急いで金持ちになる必要がなければ、いつか来るべき「下がるとき」に備えて着々と知識とお金を蓄えておけば良いのです。これを徹底するだけでも、投資のパフォーマンスは明確に改善するでしょう。

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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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