東芝の原子力事業を”Five Forces”で分析する


Warning: Undefined variable $echo in /home/tsubame104/tsubame104.com/public_html/wp-content/themes/albatros/library/shortcode.php on line 35

「株式投資で使えるMBAの知識」第2弾です。今回は”Five Forces(5F)分析”を使って、今話題になっている東芝の原子力事業を分析します。

株式投資で使えるMBAの知識(3つの ”C” 編)

2016.03.12

Five Forces(5F)分析とは?

5F分析とは、経営学の大家であるハーバード大学教授のマイケル・ポーターが開発した競争分析手法です。彼の代表作である『競争の戦略』は今でもMBAや経済学の教科書として親しまれています。

Five Forcesとは、文字通り「5つの力」のことです。競争を取り巻く環境を「売り手」「買い手」「業界内競争」「新規参入者」「代替品」に分けて、それぞれの力関係を分析するものです。

ざっくり言うと、5つの力が強ければ強いほど、その業界の競争は激しくなり、利益を出すのが難しくなります。逆に、5つの力が弱いほどその事業の競争はゆるく、利益を出しやすい構造となります。バフェットの言う「経済の堀」に通じるものと言えます。

株式投資において優良銘柄を選ぶときは、5つの力がなるべく弱く、有利な業界にいるかどうかを判断材料にすべきなのです。

東芝の原子力事業を分析

早速実践してみましょう。今回題材にするのは、粉飾決算で揺れる東芝です。5F分析は基本的に1つの事業の分析なので、今回は注力分野のひとつとされている原子力事業を分析します。

売り手:◯

東芝および子会社のウエスティングハウスが行っているのは原子力発電所の建設事業です。したがって、売り手は部品の納入業者になります。

原子力発電所の建設は非常に複雑で、細かい技術的な部分まで言及するのは難しいですが、調べる限り圧倒的な技術や力を持った納入業者は見当たりません。売り手の力は強くないと考えます。

買い手:×

原子力発電所を建設するのは、各国の政府です。日本は福島原子力発電所の事故で新規建設が難しい状況ですから、必然的に海外政府が顧客となります。

海外の中でも、これから建設計画が多いのは新興国です。日本経済新聞によると、特に多い国は中国、インド、トルコ、ベトナム、サウジアラビアとなっています。

これらの新興国が特に気にするのは建設に係るコストですから、入札で競争させることで価格を下げさせることができます。買い手が業者を選び放題なわけですから、買い手の力は強いと言っていいでしょう。

業界内競争:×

原子力事業はグローバルな競争となっています。東芝・ウエスティングハウス以外でも米GEや仏アレバ、最近ではロシアや韓国勢が力を付けており、今後は自国での建設が増えるに連れて中国勢も参入してくると見られます。

限られた原発の建設を巡ってこれだけの業者がひしめくわけですから、業界内競争は激しいと言っていいでしょう。どこも企業や国の威信を賭けて挑んでくるので、撤退が増えることも考えにくいです。

新規参入者:◯

原発の建設は複雑な上、莫大な資本を必要とします。新たに参入しようと思っても、簡単にできるわけではありません。

強いて挙げるなら、業界内競争でも触れた中国でしょう。それ以外の参入は考えづらく、新規参入者の脅威は強くないと言えそうです。

代替品:×

原発の代替品と言えば、火力発電や水力発電、太陽光発電などがあります。また、電力に代わるエネルギーが開発されたら発電所自体がいらなくなってしまうかもしれません。

アメリカではシェール革命により原油の価格が下落した結果、発電所は原発から火力発電にシフトしています。最近では世界的に太陽光発電所の建設も増加してきました。代替品の脅威は、技術の進歩にしたがって増えてくると言えそうです。

5F分析

結論!

東芝の原子力事業では5Fのうち3つに×が付きました。もちろん、全て◯が付くような事業はほとんどありません。また、5つの力がそれぞれ同じというわけではなく、他が◯でもひとつ×が付けばそれだけで厳しい競争となることもあります。

私は東芝の原子力発電事業は厳しい競争環境に置かれ、必ずしも魅力的な業界ではないと考えます。特に大きいのが買い手の力です。入札で競う業界では、最終的にコストギリギリまで下げた価格を出すことが多く、それは利益を出しにくい構造であることを意味します。

5F分析は絶対ということはありませんが、業界に対する理解を深めるのに力を発揮するでしょう。

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

詳細はこちら
サイト訪問者限定プレゼント
あなたの資産形成を加速させる3種の神器を無料プレゼント

プレゼント①『株式市場の敗者になる前に読む本』
プレゼント②『企業分析による長期投資マスター講座』第一章
プレゼント③『YouTubeプレゼン資料』

メールアドレスを送信して、特典をお受取りください。
メールアドレス *
※送信したメールアドレスに当社からのお知らせやお得な情報をお送りする場合があります。

※個人情報の取り扱いは本>プライバシーポリシー(個人情報保護方針)に基づいて行われます。
※送信したメールアドレスに当社からのお知らせやお得な情報をお送りする場合があります。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取扱いには十分留意してください。

気に入ったらシェアしてもらえると嬉しいです!

コメントを残す

Popular Article - よく読まれている記事Popular Article

  • 【日産自動車】株価下落で配当利回り6.4%は買える?
    今回は日産自動車についてです。 日産の株価は直近で大きく下げています。 ここまで下がった背景と、日産の今後について考えてみたいと思います。...
  • 3年で80%下落!エムスリーのしくじりはどこに?
    エムスリーの株価は2018年は2,000円程度でしたが、2020年に大きく上がり、2021年初頭には10,000円を突破しました。 しかし、...
  • 【メルカリ】株価はピークの半額以下。業績好調でも下落するのはなぜか?
    メルカリの株価が冴えません。
  • 【日本郵船・商船三井・川崎汽船】利回り5%以上も!海運株は買い?
    今回は、日本郵船、商船三井、川崎海運といった海運株を取り上げます。 海運株はコロナ禍に株価が上がり、一時的なブームで終わるかと思われましたが...
  • オリエンタルランド(東京ディズニーリゾート)の株価が下落している3つの理由
    2024年に入りオリエンタルランドの株価が大きく下落しています。 出典:株探 今回はオリエンタルランドの現状を詳しく分析し、投資リスクを考え...

Article List - 記事一覧Article List

カテゴリから記事を探す