フジテレビは経営危機に陥っている?投資家目線で徹底解説

フジテレビは不祥事を起こしてしまい「このままいくと経営危機に陥ってしまうのでは?」と気になっている人が多いと思います。

また、「フジテレビはこのまま潰れてしまうの?」と思っている人も少なくないようです。

そこで今回は投資対象であるのかは一旦置いて、フジテレビの経営の良し悪しについてつばめ投資顧問が解説していきたいと思います。

今回フジテレビが投資対象なのかについて触れない理由は、このような不祥事を起こす企業は長期投資の対象であるとは言い難いからです。

そのため今回はこれまでの経営を振り返り、そして将来がどうなるのかを解説します。

またフジテレビは、今後潰れてしまうのかについても紹介します。

こんな企業は買うな!ダメな企業の見極めでポートフォリオは大幅改善する

フジテレビの歴史を振り返る

まずは、フジテレビの過去から現在までを振り返ります。

ここではフジテレビが過去に番組で不祥事を起こした後、視聴率がどうなったのかについても解説しています。

この章を読むと、今回の不祥事後の視聴率の予測ができるでしょう。

フジテレビができた経緯

フジテレビは、1959年に初代のフジサンケイグループの議長である鹿内信隆氏が財界の支援を受けながら作った会社です。

フジテレビは、キー局のうち4番目に放送をはじめました。

最初がNHK、次いで日本テレビ、TBSが開局しその次にできたのがフジテレビです。

ちなみにいま財界として残っている会社は、日本航空や富士製鉄などがあげられます。

財界の後押しがあってできた背景もあり、フジテレビはスポンサーを引きつけやすい会社だといえます。

フジテレビ立ち上げ初期

フジテレビの立ち上げ当初は、苦戦することも多くあったようです。

まずテレビ局を立ち上げた当初、当時の一般市民が現代のように一家に一台ほどテレビを持っていなかったことが、苦戦を強いられる原因の1つだったといえます。

また民放の中で最初に作られた日本テレビが、強い競合として立ちはだかったため視聴率でなかなか勝てない時間が長く続きました。

風向きが変わった1980年代のフジテレビ

開局から約20年たった1980年代に、フジテレビが大きく変わる出来事がありました。

それは、フジテレビトップの交代です。

鹿内信隆の息子である、副社長の鹿内春雄氏が就任することになりました。

財界の支援で立ち上がった会社であるため、鹿内信隆氏が創業したわけではありません。

ですが、フジサンケイグループの株を鹿内家が多く持っていたため世襲のような世代交代がなされました。

鹿内春雄氏は、遊んでばかりで享楽的に生きている人だったようです。

そんな人でも世襲なので、フジテレビの中で偉くなります。

ただ鹿内春雄氏の社長就任が、フジテレビにとって追い風となる出来事となりました。

鹿内春雄の戦略

世代交代直後は、元々視聴率が取れていなかったので経営状況も苦しい状態でした。

そこで、もっとみんなが楽しめるような番組を作って視聴率を取っていかなければならないということで方向性を変えます

初代社長の鹿内信隆氏は当時、コストを削減してなんとか会社を成り立たせようとしていました。

行っていたコスト削減は、制作を自社でやるのではなく下請けに外注し安い経費で番組を作る方法です。

そのやり方では視聴者に楽しんでもらえる番組を作れないと思い、跡継ぎの鹿内春雄氏がこれまでの方針を見直す流れになりました。

具体的な施策として行ったのが、編成や政策などの部署を1つにまとめたことです。

複数の部署を「大部屋」として1つにまとめると、社内で垣根がなくなりました。

社員同士の交流が深まると好循環が生まれ、そこからいい番組がつくれるようになったわけです。

そのときに活躍したのが、後にフジテレビで重要な人物となる日枝久氏です。

フジテレビは世代交代を機に、視聴者に楽しんでもらえるようなバラエティー番組に力を入れるようになります。

1980年代からでてきた番組

1980年代以降にできた、人気番組をみていきましょう。

『オレたちひょうきん族』:1981年5月16日~1989年10月14日

『森田一義アワー 笑っていいとも!』:1982年10月4日~2014年3月31日

『ダウンタウンのごっつええ感じ』:1991年12月8日~1997年11月2日

『とんねるずのみなさんのおかげです(した)』:1988年10月13日~2018年3月22日

『HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP』:1994年10月17日~2012年12月17日

『SMAP×SMAP』:1996年4月15日~2016年12月26日

『めちゃ²イケてるッ!』:1996年10月19日~2018年3月31日

『トリビアの泉 〜素晴らしきムダ知識〜』:2002年10月7日~2006年9月27日

このような国民的人気番組を制作できた理由として、人事の垣根を取っ払ったことにあると考えられます。

当時は負け組であるフジテレビの人たちが一体となって、視聴者に楽しんでもらえる番組を制作する空気を作れたのが大きな要因だったといえます。

それを推し進めたのが、2代目である鹿内春雄氏でした。

鹿内春雄の死去

ところが、1988年に鹿内春雄氏が43歳という若さで亡くなってしまいます。

春雄氏はもともと体が弱かったようで、ボストン大学を中退してアメリカから帰ってくる時も結核にかかっていたそうです。

そこで、鹿内信隆氏の娘婿として入っていた鹿内宏明氏が跡継ぎとして据えられました

その後のフジテレビ

先ほど、ジテレビの改革を引っ張っていった一人として紹介した日枝氏がクーデターを起こします

鹿内宏明氏は元々現場にもいなかったようで、宏明氏の経営ではダメだと思った部分があったのかもしれません。

そして、1992年に宏明氏は議長から引きずり下ろされました。

この件を投資家目線で見ると、バラエティー番組が人気で視聴率もかなり伸びていた時に内部が不安定になるのはよくありません。

特に権力争いのような社内抗争が起こっている会社は要注意で、投資をする場合は慎重になる必要があります。

フジテレビの上場

宏明氏が引きずり降ろされたあと、日枝氏が事実上のトップとなりました。

ですが、鹿内家はまだ株を保有しており株主として権力がありました。

その権力を嫌った日枝氏は、フジテレビと同グループのニッポン放送を上場させようと考えます。

会社を上場させるときに増資を行うため、鹿内家の持分が全体から見ると少なくなるので影響力が薄まります。

そこで1996年にニッポン放送を、1997年にはフジテレビを上場させました。

フジテレビの失敗

ここではフジテレビの失敗として、後になって尾を引いてしまったことについてみていきます。

ホリエモンによる買収

フジテレビとニッポン放送の上場が、堀江貴文ことホリエモンに付け込まれる隙となってしまいます。

ニッポン放送はフジテレビの株を持っていましたが、フジテレビよりも時価総額の低いニッポン放送を買収すると実質的にフジテレビを支配できるとホリエモンは気づきました。

そこで2005年にホリエモンが、ニッポン放送を買収しようとしましたが結果的には失敗しました。

フジテレビは上場させたからといって、意図しない買収をされるとは想定していなかったと思われます。

ちなみにこの件は、見方によっては新たな時代への変化のはじまりともとれます。

フジテレビは、これまで日本テレビとの競争でした。

ですが、この件でインターネットとの競争や融合などへと進んでいく新たな時代となっていくことを示唆した出来事の1つだったとも見られます。

社屋の移転

1997年にフジテレビは、社屋を新宿の若松町からお台場に移しました。

本来、単に本社を移転しただけなら問題ではありません。

ですがフジテレビのテレビ事業のコアは、テレビ番組を作っている人が生み出すアイデアです。

そもそもフジテレビがよくなってきたのは、番組を作っている人たちが大部屋の中で議論をしてきたことにあります。

だからこそ、視聴率ナンバーワンに躍り出たといえるでしょう。

ところが、移転により大きな社屋に移ったことで人の交流が生まれにくくなりました

お台場は交通の便がいいとはいえないため、社員が飲み会で交流することも少なくなりました。

また、フジテレビがよくなるきっかけとなった大部屋も移転により廃止されています。

このように、フジテレビが不安定になるきっかけの1つがここでできます。

過去の不祥事から視聴率の推移をみる

今回の不祥事が、フジテレビの視聴率にどの程度の影響を与えるのかを考えてみます。

まずは過去に起こした不祥事を紹介し、その後視聴率はどうなったのか見ていきましょう。

発掘あるある大事典

発掘あるある大事典とは、フジテレビの系列の関西テレビが撮っていた番組です。

主に、データ検証を元に健康のための食事について紹介する内容を放送していました。

その中で納豆ダイエットというものを紹介した際に、検証の時の数字を誤魔化してあたかも納豆に特別な効果があるように見せていたことが発覚します。

この結果、視聴者の信頼を失い2007年に番組は打ち切りとなりました。

ほこたて

ほこたてとは、交わることのないトップ同士を戦わせて勝敗を決める番組です。

たとえば、絶対に穴が開かない金属にどんな金属にも穴の開けられるドリルで穴をあけようとするとどうなるのか検証し、勝ち負けを決めるような内容です。

ですがある企画の中で、どちらかを勝たせようとするやらせをしていることが判明しました。

そのため番組は2013年に打ち切りとなり、フジテレビに対する信頼がさらに落ちるきっかけとなりました。

その時期の視聴率の推移

このような不祥事が起こる中、フジテレビの視聴率はどうなったのか見ていきましょう

    

 出典:日本と世界の統計データ テレビ各局の視聴率推移

2006年までフジテレビの視聴率は首位でしたが、不祥事がおきた2007年あたりから下がりはじめます。

そこから右肩下がりとなり、テレビ東京を除くと最下位となっています。

ですが、これだけ視聴率が落ちてもフジテレビは改革ができませんでした。

考えられる理由としては、過去の成功体験に縛られすぎたが故にいい番組を新たにゼロから作れる能力がなくなってきたことが原因と思われます。

過去の例から見ても、今回の中居正広氏の不祥事でさらに視聴率を落とすと予想できます。

低迷フジテレビは誰のせいで「誰も観たくないチャンネル」になったのか?

フジテレビが経営危機に?フジテレビの現在の経営状況について解説

ここでは、フジテレビが経営危機に陥ってしまう可能性があるのか業績の面から見ていきましょう。

今回の中居正広氏の問題で、フジテレビが潰れてしまうのかについても解説します。

競合他社との売上比較

ここでは、フジテレビと競合他社との売上を比較してみましょう。

以下の表は、直近の売上の推移をまとめたものです。

 

2015年 2024年
フジテレビ 6,400億円 5,600億円
日本テレビ 3,600億円 4,200億円
TBS 3,400億円 3,900億円
テレビ朝日 2,700億円 3,000億円
テレビ東京 1,200億円 1,480億円

 

各社売上高を伸ばしている中、フジテレビだけが売上を落としています

また今回不祥事を起こしてしまったため、来年さらに売上を下げる可能性がありそうです。

フジテレビは潰れてしまうのか

中居正広氏の不祥事があったので、現在フジテレビのスポンサーがほとんど離れてしまっている状態です。

そのため、「フジテレビは潰れてしまうのでは?」と巷では囁かれています。

ですがフジテレビの経営を見ると、現状そこまで悪い状況ではありません

営業利益を見てみましょう。

営業利益を競合他社と比較したものを表でまとめます。

 

2015年 2024年
フジテレビ 250億円 330億円
日本テレビ 420億円 420億円
TBS 150億円 150億円
テレビ朝日 150億円 120億円
テレビ東京 50億円 90億円

 

これを見るとフジテレビの売上は下がっていますが、利益は残っていて経営はうまくされています。

また、途中で波はありますが10年の中で利益を増やしているのはフジテレビとテレビ東京だけです。

あくまでも1つの面からの話ではありますが、うまく経営されていることからもフジテレビがすぐに潰れてしまうことはなさそうです。

経営状況がいい理由

世間からのイメージとは違い、数字でみるとそこまで悪いわけではなさそうです。
上手く経営されている印象を受けます。

そこで、なにがフジテレビの経営を支えているのかさらに深掘りしてみましょう。

不動産事業

フジテレビの売上は、テレビを中心とするメディア・コンテンツ事業が約75%を占めています。

ところがこの利益の構成費を確認すると、メディア・コンテンツ事業は全体の43%であるのに対して都市開発観光が54%あります。

つまりフジテレビはテレビで一定数儲けてはいますが、それ以上に不動産で儲けているわけです。

フジテレビの不動産といえば、フジ・メディア・HD傘下のサンケイビルです。

フジテレビは財界の後押しで作った会社であるため、昔から持っていた土地などが今も利益を支えているとわかります。

ちなみサンケイビルは賃貸や売買を行っていて、安定した収益基盤を築いています。

メディア・コンテンツ事業

メディア・コンテンツ事業でも、半数を割っているとはいえきちんと利益を出しています。

どのようにメディア・コンテンツ事業で、利益をだしているのか詳しく見ていきましょう。

メディア・コンテンツ事業では、BSフジやフジテレビオンデマンドを手がけるフジクリエイティブコーポレーションで利益を出しています

またイベントや映画でもお金を儲けています。

以下の画像を見ていきましょう。

テレビでの集客力を使い、アレグリアのイベントを開催しています。

また、映画の「東京リベンジャーズ」などもフジテレビの収入です。

他にも「踊る大捜査線」など、かつてのコンテンツが今生かされていることで利益に繋がっています。

ですが、今回不祥事を起こしたフジテレビジョンの営業利益は2.3%しか残っておらずほとんど利益が出ていない状況です。

視聴率もあまり取れない一方で、社員の給料が高いなどフジテレビ自体の経営は苦しくなっています。

超割安のテレビ局。上昇はあるか?

フジテレビの将来性は?

これまで過去を振り返り、現在までみてきました。
この章では、将来のフジテレビの行方やどうすれば将来よくなるのかについて解説します。

フジテレビは現状過去の遺産で保っている

フジテレビは昔のように、面白い企画をゼロから作れないと将来性としては厳しいです。

フジテレビが今なんとか稼げているのも、過去の遺産があるからでしょう。

たとえば、BSがかつての人気番組である「踊る大捜査線」などを放送しニッチな視聴者を捉えてうまくやっていることが大きいです。

また不動産は手堅いですが、これがあるから逆にフジテレビ本体の改革に着手できていない部分もあると思います。

グループ規模でみてうまくいっているとしても、フジテレビ自体は今現在行き詰まっていて対策を打たないといけない状況だといえます。

この現状を打破しないことには、将来はさらに苦しくなる一方でしょう。

なにかしら手を打つ必要がある

現状としてフジテレビは危機的な状況にあり、ここに大きなメスを入れないといけない状態です。

実際、テレビ自体のパワーはまだあるといえます。

テレビの視聴率が下がってきたとはいえ1%の視聴者が見たら、日本の1%なので100万人が見ることになります。

YouTubeの動画で100万回再生されると大ヒット動画です。

現状のフジテレビは、いま持っているはずのパワーを完全に無駄にしているといえます。

いまの時点でグループ全体に影響を及ぼすほどではありませんが、フジテレビを使えばもっとフジ・メディア・HDは今後もっとよくなるでしょう。
逆にそれをやらない経営者は、間違いなく無能だといえます。

まとめ

フジテレビは2代目の議長である鹿内春雄氏がフジテレビの礎を作り上げ、80年代90年代はうまくいっていました。

ですがその後は、日枝氏をはじめとする反鹿内派によるクーデターにより経営が不安定になりました。

また、社屋の移転などにより足腰が弱まってきている状況です。

経営体としてはうまくやっているが故に、本体にメスが入っていないのではないかと思います。

ここにメスを入れられたら、ある意味まだフジテレビは力を持っているといえるでしょう。

一方で今回手を打てないなら、イメージが地に落ちているのでそのまま消えてしまう恐れもあります。

そのため、いまフジテレビがやるべきことは多くの視聴者にイメージの大改革に取り組んでいる印象を与えることです。

つばめ投資顧問では、このように経営の本質に切り込んで投資をできる人を育てたいと思っています。

ご自身でも企業の本質を見て投資したい方は、ぜひこの機会につばめ投資顧問への入会を検討してみてください。

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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