住友林業の株価は今後どうなる?株価が下落している理由についても解説

住友林業は2025年3月現在、PERが7.8倍、PBR1.04倍、配当利回り3.88%と割安で多くの投資家に人気の株です。
直近では、株価を下げていますが「住友林業の株価は今後どうなるの?」と気になっている方が多いようです。
結論からいうと、住友林業の株価は長期的にみると着実に成長していくと考えています。
そこで今回はつばめ投資顧問が、住友林業の株価がなぜ今後成長すると考えているのかについて紹介します。
また現在株価が下落している理由についても解説するので、ぜひ最後までご覧ください。

住友林業はどんな会社?

住友林業は、木材を核とした総合的な住生活関連企業です。
日本市場では木造注文住宅のトップブランドとして高い評価を受けており、特に地震に強い独自工法や環境に配慮した住宅建築に力を入れています。
事業領域は住宅建設にとどまらず、国内外での大規模な植林活動や森林経営、さらには再生可能エネルギー発電など環境関連事業も展開しています。
伝統的な林業のノウハウを活かしながら、現代の環境課題にも取り組む企業として、住まいづくりから地球環境の保全まで幅広い分野で活躍している企業です。

住友林業の業績

業績は2020〜2021年にコロナウイルスの影響で一時的に落ち込んだ後、売上・利益とともに右肩上がりで伸びてきています
特に営業利益はコロナ禍から約3倍にまで成長しており、株価もそれに追随する形で上昇してきました。
ここでは、直近の業績が伸びた理由について深掘りしてみます。

米国事業の急成長

足元の業績が伸びている要因は、米国事業の業績が好調だからです。
グラフのグレー部分は建築・不動産事業のセグメントで、これは米国と豪州の合計売上に相当します。
この部分が近年成長しており、全体の業績拡大を牽引しています。
住友林業は国内で住宅を建設・販売している会社というイメージも強いですが、売上を見ると実際には海外の比率の方が大きいです。
およそ売上の6割、経常利益では7割が海外の建築・不動産事業から生み出されており、そのうち約9割が米国市場からとなっています。
先ほどの業績グラフで急成長している部分は、ほぼ米国事業の伸びに起因しています。

住友林業の海外住宅事業における成長戦略

住友林業の業績が好調である背景には、住友林業の成長戦略があります。
ここでは、住友林業の戦略について深掘りしていきます。

M&Aによる海外住宅事業の成長

住友林業は、これまでM&Aで海外住宅事業を大きく成長させてきました
米国と豪州での住宅販売数のグラフを見ると、右肩上がりになっています。
これは2008年から2016年にかけて、住宅建設会社を戦略的に次々と買収してきたことが実ったものです。
たとえば、2008年に買収したHenley社は、最初ほとんど売上がありませんでしたが2010年からは安定的に販売戸数を稼いでいます。
このように、子会社となった各企業が発展を続けており、それぞれの成長が住友林業グループ全体の業績向上に寄与しました。
その結果、米国市場での事業拡大に成功しています。

世界金融危機後の市場状況を活かした戦略

この成長戦略がうまくいった理由としては、2008年のリーマンショックが背景としてあります
当時、アメリカの住宅建設業界は中小企業が多く、金融危機によってお金の回りが悪くなり、多くの会社が倒産していました。
そこで、お金に困っていた優良な住宅建設会社を住友林業が買収します。
アメリカには常に住宅需要がありましたが、住宅建設業者が減少していたため住友林業は競合が比較的少ない環境で事業を展開できました。
こうした戦略によって、住友林業は販売数と業績を拡大させてアメリカ市場での強固な地位を確立しました。

日本の住宅技術の強み

住友林業が米国で業績を伸ばせた大きな理由として、日本の住宅技術の高さもあります
米国の住宅建築技術は、日本と比べて約30年遅れていました。
そこで住友林業はこの技術差を活かして、米国市場で高い評価を得られました。
具体的には、耐久性や断熱性はもちろん、空間設計においても優位性があったことです。
日本は土地が狭いため、いかに収納や居住スペースを効率的に配置し広く見せるかという点で洗練された技術を持っています。
一方米国は土地が広いため、このような観点があまり重視されていませんでした。
そこで、日本の技術を取り入れることにより、市場での差別化に成功し人気を獲得できました。

住友林業の株価が下落している理由

業績が好調にもかかわらず、直近では株価が下落しています。
株価が下落している理由としては、以下の3つの要因が考えられます。

  • 為替変動によるリスク
  • 金利上昇
  • 営業利益率の低下

それぞれみていきましょう。

為替変動によるリスク

1つ目は、為替変動によるリスクです。
現在の円安環境では、住友林業の海外収益は円換算で増加しています。
ですが、今後はアメリカと日本の金利差縮小により円高転換が予想されています。
円高になれば、海外売上の円換算額が減少し収益に影響を与える可能性が高いです。
そのため、為替変動リスクが投資家にとって懸念材料の1つになっていると考えられます。

金利上昇

2つ目は、アメリカの金利上昇への不安です。
現在アメリカの住宅ローンの金利は、6〜7%と高い水準です。
コロナ禍では3%前後だった金利が、現在では2倍以上に上昇したことで住宅購入の月々の支払い負担が大幅に増加しています。
今後景気が悪くなると、高金利のまま住宅を買う人がさらに減る可能性が高いです。
またアメリカの高金利がいつまで続くのかわからないことも、投資家が心配している理由の一つといえるでしょう。

営業利益率の低下

3つ目は、足元で米国事業の営業利益率が低下している点が挙げられます。
営業利益率が低下している理由は「インセンティブの活用」という形で、住宅購入者に対する住宅ローン金利の補填を住友林業が自社負担で行っているためです。
つまり、住友林業がこのお金を出さないと、消費者が住宅を買えない状況です。
このことから、住友林業は苦しくなる状況が続くのではないかと投資家から懸念されています。

金利はどこまで上がる?住宅ローン・株式投資・円安への影響は?

住友林業の株価は今後どうなる?

住友林業の株価は、長期的には着実な成長が期待できそうです。
なぜなら、住友林業は買収した米国企業に日本の住宅技術を導入し競争力を高められているからです。
米国住宅市場におけるシェアは2%弱と小さいものの、分散した中小ビルダー市場で徐々に存在感を増しています。
景気変動による一時的な業績悪化はありえます。
ですが、米国の慢性的な住宅供給不足という構造的問題が継続しているため中長期的にはこの波に乗って成長していくと考えられるでしょう。
また、住宅建築業界は地域密着型の中小企業が多く、圧倒的な支配力を持つ企業が存在しない市場です。
そのため、住友林業が各地域のニーズに合った質の高い住宅を提供し続ければ、徐々にシェアを拡大できそうです。
米国の人口増加も継続しており、住宅不足という根本的な問題も存在しています。
こうした大きな潮流の中で存在感を示していることは、中長期的な成長の可能性も十分ありそうです。

まとめ

住友林業の株価は長期的にみると、着々と伸びていくと考えられます。
景気悪化時には業績と株価が落ち込む可能性はあるものの、財務的には健全な企業です。
調整局面が訪れた際には、投資機会となる可能性がある銘柄だといえます。
もし住友林業に投資の検討をしている方は、この記事の内容を参考にさらに深掘りしてみてはいかがでしょうか。
つばめ投資顧問では、このように個別企業の分析から投資にまつわることを紹介しています。
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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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