2023年3月28日に令和5年度の税制改正法が可決、成立しました。それを受けて2023年4月3日、日本証券業協会から2024年以降のNISAに関するQ&Aが公開されました。
その中身を確認すると、制度の変更内容や具体的な申し込み手続きなど、今まで不明・疑問だった点が回答されています。今回はそのQ&Aの中から重要な点をピックアップして解説していきます。
来年のNISA改訂に向けて理解を深めていきましょう!
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目次
制度拡充の概要
まずは新NISAの変更点を確認しましょう。
制度の恒久化
従来のつみたてNISAは2042年まで、一般NISAは2023年までの制度とされていましたが、今回の改正で恒久化されます。さらにつみたてNISAは20年間非課税、一般NISAは5年間非課税という縛りもなくなり、購入時から何年後に売却したとしても利益に対する税金は課されないことになります。
一般、つみたての併用が可能に
従来のNISA制度はつみたて、一般のどちらかを選択して利用することができる制度でした。しかし改正により両制度を併用できるようになります。
年間投資額増加
つみたてNISA年間投資額上限が現状の40万円から3倍の120万円、一般NISAは120万円から倍の240万円となります。最大で年間360万円NISA枠を使用することができます。
生涯投資額の設定
新たなNISA制度は投資元本を基準に1,800万円まで使用することができます。このうち成長枠投資(=従来の一般NISA枠)は1,200万円まで使用することができます。
非課税限度額の再利用
従来のNISA口座で保有していた資産を売却した場合、非課税枠の復活は認められませんでした。何年保有しようが、何回売買しようが年間の上限である120万円を超えて投資することはできませんでした。
しかし新NISAでは、保有資産を売却した場合、新たに設定された生涯投資枠が復活します。つまり売却してしまえば、累計購入金額1,800万円を超えてNISAを使用し続けることができます。
表にすると以下のようになります。
つみたて | 一般
(成長枠) |
新NISA | |
制度の期限 | 2042年まで | 2023年まで | 恒久化 |
併用 | 併用不可 | 併用不可 | 併用可能 |
非課税期間 | 20年間 | 5年間 | 無期限 |
年間投資額 | 40万円 | 120万円 | つみたて:120万円
成長枠:240万円 |
生涯投資額 | 800万円 | 600万円 | 1,800万円
(成長枠1,200万円) |
売却後の非課税限度額の再利用 | なし | なし | あり |
それではここから、Q&Aの解説に入ります。
Q1なぜNISAを拡充するの?
2023年度税制改正において、「資産所得倍増プラン」の実現に向け、「貯蓄から投資へ」の流れを加速し、中間層を中心とする層が、幅広く資本市場に参加することを通じて成長の果実を享受できる環境を整備するとの観点から、制度の抜本的拡充・恒久化が行われました。
Q2いつから変わる?
2024年から変更となります。現行のNISA(旧NISA)制度は2023年12月31日をもって新規買い付けができなくなります。
Q3誰が使える?
NISA口座は、日本国内にお住まいの18歳以上の方ならどなたでも利用することができます。証券会社や銀行・郵便局などの取扱金融機関で、NISA口座の開設の申込ができます。NISA口座を開設された方が、給与等の支払をするものからの転任の命令等の理由により出国をして非居住者となられた場合は、出国後も引き続き NISA口座にお預けになっている上場株式や株式投資信託等について、非課税制度の適用を受けることができます。(所定の手続きが必要です)
Q4どこで手続きをする?何をすればいい?
2023年末時点で有効な一般NISA口座・つみたてNISA口座をお持ちの方は、その一般NISA口座・つみたてNISA口座を開設している証券会社などに、NISA口座が自動的に開設されますので、開設手続を行っていただく必要はありません。
現在NISA口座をお持ちでない方は、証券会社や銀行でNISA口座解説の手続きを行う必要があります。またマイナンバーを提出する必要がありますので、注意してください。
Q5NISAを使っている人の残高はどうなる?
旧制度は2023年まで買い付け可能ですが、2024年1月1日からは新規買い付けができなくなります。しかし旧制度で買い付けた資産の非課税期間は当初通り一般NISAは5年間、つみたてNISAは20年間となります。それを超えた場合は課税口座に自動的に移行されます。
また旧制度でいくら買い付けを行ったとしても、新制度からは0からのスタートとなります。旧制度を使っているか否かで新制度の投資額に変化はありません。
Q6つみたて枠をA銀行・成長枠をB証券と金融機関を分けることは可能?
不可能です。1金融機関に1NISA口座という原則は変わらないため、枠によって金融機関を分けることはできません。
Q7どのような商品が対象になるの?
つみたて投資枠の対象商品は、証券取引所に上場しているETF(上場投資信託)や、公募により発行された株式投資信託のうち長期の積立・分散投資に適した一定の商品性を有するものに限定されています。
成長投資枠の対象商品は、証券取引所に上場している株式、ETF、REIT(不動産投資信託)や、株式投資信託等です。ただし、整理銘柄・監理銘柄に指定されている株式や信託期間が20年未満、高レバレッジ型及び毎月分配型の投資信託等は対象から除外されています。また社債や国債も対象外となります。
取扱商品の詳細は口座開設を行った金融機関によって異なりますのでご注意ください。
重要な3つのポイント
今回つばめ投資顧問で作成したQ&Aは日本証券業協会が掲載している2024年以降のNISAに関するQ&Aと同協会のNISA相談コールセンターへの直接の問い合わせを参考にしています。
その中で私が特に気になった点を挙げます。
売却後の非課税限度額の再利用ができる(確定)
新NISAの概要が報道された当時は、売却後の非課税枠の再利用については報道各社によって取り扱いが異なりました。しかしこのQ&Aが公開されたことで、売却後の非課税限度額の再利用ができることが明確になりました。再利用が可能であれば、利益確定、損切り共に行いやすくなると考えます。
すでにNISA口座を保有している人の手続きは自動的に行われる
すでにNISA口座を保有している方は
「また開設手続きをしないといけないの?今の残高はどうすればいいの?」
といった疑問を持っていたのではないでしょうか?
しかし、すでにNISA口座を開設している金融機関に自動的に開設される、という新たな情報を得られました。
逆に考えると、「来年からはNISAで株式投資をしたいけれど、今つみたてNISAで利用している銀行は株式売買の取り扱いがない… ネット証券に変更しなくては!」という方もいらっしゃるかもしれません。
今の金融機関に不満がない方であれば嬉しいニュースですが、どの金融機関でNISAを保有するかは一度考える必要がありそうです。
今後の変更も
Q&Aが公開されたことで、新NISAの概要が見えてきましたが、特に投資信託などの具体的な対象商品の範囲については金融庁で議論中です。現在の情報も急な変更があるかもしれませんので、今後も情報を追って行きたいと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。
今後もつばめ投資顧問ではNISAの情報や企業分析などの投資情報について発信していきます。見逃さないようにメールマガジンの登録をお願いいたします。
執筆者
佐々木 悠(ささき はるか)
つばめ投資顧問 アナリスト 1級ファイナンシャル・プランニング技能士
東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。
協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。
銀行勤務時は投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。
2022年につばめ投資顧問へ入社。
プレゼント①『株式市場の敗者になる前に読む本』
プレゼント②『企業分析による長期投資マスター講座』第一章
プレゼント③『YouTubeプレゼン資料』
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