経営に特色のある2社を紹介<シップヘルスケアHD(3360)、システナ(2317)>

企業の将来性を見るにあたって、経営の考え方が重要なことは間違いありません。今や日本を代表する企業となったファーストリテイリング(9983)やニトリ(9843)も、独特な経営者がいたからこそ大きく成長しました。

この記事では、経営の考え方が特徴的な2社を挙げます。いずれも成長分野に力を注いでおり、中長期的な伸びが楽しみな会社です。

シップヘルスケアHD(3360)

「生命を守る人の環境づくり」をミッションに掲げ、医療施設の建設や医療資材の納入、有料老人ホーム、調剤薬局まで幅広く展開しています。

1992年に医療・保健・福祉のコンサルティング会社として設立され、その後はM&Aを繰り返して事業を拡大させてきました。連結対象の会社は約50社にのぼります。

【出典】マネックス証券

M&Aを繰り返している割には、実質無借金経営と財務状態は健全です。将来的な損失が懸念される「のれん」も、単年の純利益の範囲内にとどまります。

すなわち、同社は医療分野における「M&A巧者」なのです。成功率が3割と言われるM&Aをこれだけうまく使いこなせていることは一目置けます。成長企業として有名な日本電算(6594)も、モーターに特化したM&Aを繰り返し、を拡大させてきました。

【銘柄分析】日本電産(6594)の強みは「経営力」にある。カリスマ経営者が語った「尋常ではない変化」とは?

2019.02.24

特徴的なのが、経営方針にあわせて「スローガン」を掲げていることです。例えば「!!三段ロケットで三方良し!!」「!!自立自主!!ドレミファソラシド」「アコーディオン経営を健気に!」など、意味はよくわかりませんが勢いのあるスローガンを掲げています。

【参考】会社沿革

今は売上高成長率年5.6%の安定成長を掲げているようです。PERは20倍と、過去の水準を見てもそこまで割安感はありませんが、安定成長する医療分野においておもしろい企業だと見ています。

チャート画像

システナ(2317)

システム開発を手がける会社です。近年は自動運転関連の開発を中心に勢いがあります。

【出典】マネックス証券

沿革を見る限り、もともとはオンラインゲーム等の開発を行っていました。しかし、近年はゲームからはほとんど手を引き、BtoBシステムの開発が中心になっています。

なぜそうなったのか。それは経営方針から読み取れます。方針には以下のような文言が書かれています。

成長鈍化の事業は縮小撤退し、成長性の高い分野へ経営資源の迅速な移動を行う

会長メッセージ

すなわち、この会社はシステム開発力を武器に、より儲かる分野へ移動してきたのです。その結果、ゲームの開発から自動運転をはじめとするBtoB分野へと重心分野を変化させたのです。

動きの激しいシステム分野で変化できることは大きな強みになります。ITは全体としては間違いなく伸びる分野ですから、そこで成長分野を探し続けることは業界全体の成長以上の伸びが期待できるのです。

さらに、私が気に入ったのが有価証券報告書に記載されている以下の文言です。

今の金融バブルは早晩崩壊すると予測しており、重要なことはバブルに踊らない、高値掴みしない、むしろバブル崩壊後の混乱期にこそ大飛躍のチャンスありと、今は徹底した原価管理と地に足をつけたデータ経営を行うことであると考えております。

2019年3月期 有価証券報告書

この考え方は、長く成長を続ける企業の経営者が須らく持っているものです。ニトリの似鳥会長や日本電産の永守会長も「逆張り」を得意とします。どちらも市況が悪化したときに思い切った投資を行っているのです。

日本電産・永守社長は稀代のバリュー投資家!

2016.04.03

システナも、景気が悪化すれば一時的に業績・株価が停滞するでしょう。しかし、上記の言葉に従えばそんな時こそ大きなチャンスとなるのです。この考えを破らない限り、同社には長い目で期待できます。

現在のPERが35倍と割高な水準です。ここで高値掴みする必要はありませんが、相場が急変して皆が悲観的になったときがチャンスです。その時はしたたかに買いを入れられたらと思います。

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執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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