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三菱重工の業績はどうだった?今後を見通す際に注目すべきポイントも解説
2025年2月4日に、第3四半期決算発表がありました。
そこで「三菱重工の業績はどうだったのか知りたい」という声をよく耳にします。
また「三菱重工の今後の業績について気になる」という方も多いようです。
そこでつばめ投資顧問が、2月4日に発表された決算についてや三菱重工を取り巻いている環境に関して解説していきます。
また、三菱重工を長期投資の対象としてみる場合、注目すべき点についても紹介します。
ぜひ最後までご覧ください。
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三菱重工の業績は好調
2月4日に発表された決算で株価は動きませんでしたが、業績は過去最高益を予想していてさらに上方修正もされ好調です。
2020年までは、国家プロジェクトとして国産旅客機であるMRJの開発に挑戦していましたがうまくいかず撤退しました。
そのため2020年3月期は赤字となっていますが、そこから急回復し今回の決算発表で今期の純利益を4%上方修正しています。
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また今回の決算で、事業利益が38%の増加と当期利益が25%増えたことが発表されました。
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現在PER30.6倍と少々高い水準ですが、利益が次の決算でも30%近く増加するとしたらPERは23倍程度だと計算できます。
織り込み済みの可能性もありますが、今回の決算までの流れを見ると現在の株価はそこまで割高ではない水準だといえます。
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三菱重工の業績が好調な理由
今回の決算で、三菱重工は好調であることがわかりました。
この章では、三菱重工が好調な理由について深掘りしていきます。
三菱重工が好調な理由は以下のとおりです。
- エネルギー関連に追い風
- 防衛関連に追い風
それぞれ解説していきます。
エネルギー関連に追い風
三菱重工の業績が好調な理由として、AI市場の拡大で使用電力量増加に伴い火力発電のガスタービンの需要が増えたことが挙げられます。
ガスタービンとは、火力発電時にガスでタービンを回して発電する機械のことです。
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出典:関西電力「火力発電についてWhat’s 火力発電」
ちなみに、ガスタービンの世界トップシェアは三菱重工です。
以下ではガスタービンの需要が大きくなった理由について解説します。
データセンターの建設が増えた
エネルギー関連需要が大きくなった理由は、AI発展によるデータセンター建設が増えたことが挙げられます。
AIのデータセンターとは、AIを動かすために必要なサーバーのことです。
実物は以下のようなものです。
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出典:ソフトバンク株式会社「国内最大級の生成AI開発向け計算基盤の稼働および国産大規模言語モデル(LLM)の開発を本格開始」
データセンターは、かなりの電力を消費します。
AIを動かすだけでも多くの電力を使いますが、サーバーは使うと発熱するので熱を冷やす冷房の電力も必要です。
ちなみに、アメリカの一部の州では電力の25%をデータセンターで消費していると言われています。
データセンターの稼働には安定した電源が必要
上の節からも想像できるとおり、データセンターを稼働させるには安定した電力が必要です。
ですがデータセンターを建てるのに適した土地というのは、田舎や砂漠などなにもないところで元々人も少なく発電能力が低いです。
そのためデータセンターに安定して電力を供給させるためには、新たに発電所を建設する必要があります。
そこで環境に優しい太陽光や風力などの自然発電を利用したいのですが、発電量が安定しないことがネックとなり、24時間稼働し続けられる火力発電が見直されました。
高効率なガスタービンの需要が増える
ただ世界では、脱炭素といって地球温暖化防止のため二酸化炭素の排出量を抑える脱炭素化の取り組みが行われています。
なので、発電する際に二酸化炭素を排出する火力発電は、世の中の流れと逆行していて適した発電方法とはいえません。
ですが、三菱重工のガスタービンは高効率が売りとなっていて少ないガスでタービンを回せます。
このように脱炭素の流れがあるため、少しでもエコな三菱重工の高効率なタービンの需要が大きくなりました。
ちなみにライバル企業となるのが、エジソンで有名なアメリカのGEや、ドイツのシーメンスなど世界の大企業3社程度しかおらず、寡占市場となっています。
また仮説にはなりますが、三菱重工以外の会社は脱炭素の流れからガスタービンの研究を推し進めていなかったのではと考えています。
防衛関連に追い風
三菱重工は、日本の防衛装備品を製造しています。
防衛装備品とは、簡単にいうと自衛隊の航空機や戦車などのことです。
この防衛装備品の予算は、これまで日本のGDPの1%が目安とされていました。
ですが、2023年から2027年にかけて防衛費をGDPの2%へと上げることが国の方針として決まりました。
つまり足を置いている市場規模が2倍になるということで、三菱重工にとってはかなり大きな追い風となります。
また、防衛装備品が製造できる会社はIHIや川崎重工などと限られています。
そのなかでも、筆頭となる会社が三菱重工です。
このことから、三菱重工は大きな波に乗って業績が伸びています。
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三菱重工の成長要因となった強みを3つ紹介
三菱重工は2つの追い風を受けて大きく業績を伸ばしてきていますが、その恩恵を受けられたのは元々もっていた強みがあったからです。
ここでは、三菱重工の強みを含めた成長要因について解説します。
1.高い技術力
三菱重工の強みとして、高い技術力が挙げられます。
三菱重工は創業140年で古くからの歴史があり、これまで航空機や発電設備、ロケットなど多くの事業を手掛けてきました。
その中でもガスタービンの世界シェアはトップクラスで、三菱重工の技術力の高さの表れだといえます。
また歴史的な流れとして、1970年代には重厚長大から軽薄短小といった風潮がありました。
ですがそこで事業を撤退せずに技術を磨いてきたからこそ、競合が少ない寡占市場ができていまの地位を築けています。
2.国とのつながり
三菱重工は、国との結びつきが強いことから大型案件が多く社会的な信用も強いので会社として安定しています。
たとえば、防衛関連の受注や直近のロケット打ち上げにも三菱重工は携わっています。
また火力発電や原子力発電の技術を持っていて、国が主導となる案件が多いです。
ですが国から受ける案件なので、利益や効率を多少損なってでも国の意向に従わなければいけない部分もあります。
それでも、国とのつながりが強いことは大きな強みだと言えます。
3.構造改革が行えるようになってきた
三菱重工の成長要因として、近年構造改革が行えるようになってきたことが挙げられます。
2019年に泉澤清次社長が就任して、様々な低収益事業からの撤退や資産の売却などを行えるようになりました。
これまでは国との関わりも強く歴史ある企業なので、しがらみも多いことから事業撤退などが難しかったと考えられます。
ですが、泉澤社長になり近年では経営効率を高めるためのスリム化を行えるようになりました。
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2021年工作機械から撤退ということでニデックに売却、2023年にはMRJの開発を中止しています。
一方で、三菱電機と発電機分野で事業統合し経営資源を集中させる動きが見られました。
これが功を奏し、ある程度スリムになったところで追い風が吹いたからこそ利益を右肩上がりに伸ばせたと思います。
これを受けて経常利益率が元々3〜4%とかなり低かったのですが、直近では6〜7%です。
ROEに関しても以前は5~6%程度でしたが、2024年3月期には11.14%と10%を超えてくるようになりました。
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三菱重工の今後を見通す際に注目すべきポイント
三菱重工の業績が好調な理由や、会社自体の強みについてはわかったと思います。
ですが、重要なのは長期的にみて好調な業績がこれからも続くのかが気になるところですよね。
そこで、長期的にエネルギー関連と防衛関連の需要がどうなっていくのか予想する上で注目するべきポイントなどを解説していきます。
4つのポジティブな要素
まずは、ポジティブな要素からみていきましょう。
ここで紹介することを念頭において、三菱重工が今後も伸びていけるかを考えることが長期投資をする上で重要になります。
1. エネルギー需要は続く
三菱重工がこの先まだ伸びると考えられる理由は、データセンターの需要がこれからも増えていくと予想できるからです。
今後もAI市場の成長が見込まれていますので、データセンターを建てる必要がでてくるでしょう。
直近では省エネで動くDeepSeekの登場で、電力問題が解消される可能性があることも考えられています。
ですがこれまでのデータセンターが不要になるとも考えにくく、今後もAI市場の拡大に伴い必要に応じて建設されると推測しています。
そうなると、発電所も必要なため、三菱重工のガスタービンの需要も大きくなるでしょう。
2.原子力施設の強化も進めている
三菱重工は、原子力施設の強化を進めていることもポジティブな要因です。
脱炭素と安定電源を追求すると、どうしても現段階の技術では原子力に注目が集まります。
三菱重工は「実施可能な設計検討はほぼ完了」したことを公表しているくらい原子力施設の開発が進んでいることを発表しました。
そこで、三菱重工の中期経営計画を見てみます。
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ガスタービン事業、原子力事業を重点領域とし成長産業だと明記しています。
日本では原発事故の影響でイメージが悪いですが、アメリカでの建設となると話は進みやすいかもしれません。
3.日本の防衛強化において中核的な役割を担う
アメリカは、日本に対して防衛力を強化するべきだという要請をこれまで続けてきました。
防衛力強化の圧力があるなかで、いざ安全保障を考えて手を打つとなると三菱重工に受注されることになります。
最近ではイギリスやイタリアなど西側の国々と協力して、次世代戦闘機を開発することも決まっています。
このように防衛力強化として措置を取る場合、国とのつながりも強いことから三菱重工へ受注が増え売上はさらに伸びると考えられるでしょう。
4.ライバルが少ない
火力発電市場は、寡占市場のため競合が少ないです。
そのためガスタービンの需要が増えると、どの会社も生産が追いつかなくなることが考えられます。
すると、受注が増えることによる売上増加など様々な恩恵を受ける可能性もでてくるでしょう。
ライバル企業が少ないことも、大きなポジティブ要素といえます。
さらに、新規参入できるような業界ではないことも非常に大きなポイントです。
懸念点
今後を見通す際に押さえておきたい要因を解説しましたが、もちろん課題となることもあります。
これまでの話を見てもわかるとおり、三菱重工の業績は外部環境依存が大きいです。
いまは防衛関連とエネルギー関連の追い風で業績がとても伸びていますが、この流れが弱まると業績が低迷する可能性があります。
ここでは、三菱重工の今後を見通す際に注意すべき点を解説します。
ガスタービンが今後も許容されるのか不透明
ガスタービンによる二酸化炭素排出が、環境へ悪影響だと強く再認識される可能性が少なからずあります。
また、原子力のイメージがさらに悪くなるニュースがでると原子力施設の設置は難しくなるでしょう。
いまはやむを得ず火力発電や原子力発電に頼っていますが、より良い技術が出てくればこれら2つの需要がなくなる可能性もあります。
一方でアメリカのトランプ大統領は、石油や天然ガスを燃やして産業を発展させることに前向きです。
そのなかで、高効率のガスタービンは脱炭素の流れに沿った製品でコスト的にも優れていることからアメリカ的にもポジティブなモノだと言えます。
なお、三菱重工自体も水素やアンモニアを利用した二酸化炭素を出さない発電方法を研究しています。
それがうまくいった場合、火力発電や原子力発電に代わるものとして使われるかもしれません。
国内政治リスク
防衛産業は、国の予算によって決まります。
現在の自民党政権下では、防衛予算を2倍にする計画を進めていますが今後も維持されていくならまだ三菱重工にとっていい流れは続きそうです。
しかしながら、政権交代が途中で起きると防衛費を増額する流れが停滞するかもしれません。
そのため、三菱重工の見通しを考える際は国内政治にも目を向けておく必要があります。
三菱重工は今後投資対象としてはどう?
これまでの話を踏まえて、三菱重工は投資対象としてどうなのかみていきましょう。
実際、三菱重工は収益基盤が安定しているわけではありません。
これまでのROEを見ても、かなり波があります。
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いい企業というのは、ROEが常に10%超えを維持できるような会社をいいます。
そのため、長期投資の観点から見た場合必ずしも成績優秀と言える会社ではありません。
なので三菱重工が、これからどう高収益の企業に変わっていくのかが重要となってきます。
そこで、三菱重工が今後投資対象になりえるのかを見極めるときに見るべき点をここでは紹介します。
期末決算と来期予想
今回の第3四半期決算を受けても株価は無風でしたが、今後株価が動くとしたら期末決算と来期の業績予想の数値がカギとなります。
好業績かつ将来の見通しが明るいなら、株価上昇も期待できるでしょう。
実際、世の中のデータセンター建設や発電所建設の流れが停滞している感じをあまり受けていないので短中期的に見て上振れもあると考えています。
株主還元の強化があるか
今後株主還元として配当が上がったり、自社株買いがあったりすると株価上昇が期待できるでしょう。
現在の配当性向は、30%程度で高くありません。
やはり株主還元が株価上昇に繋がりやすいので、投資家への還元があれば好材料となり得ます。
また、さらに構造改革が進んで根本から経営体質を変えられればもっと多くの利益を生み出せるようになる可能性も秘めた銘柄だといえます。
社長交代
2025年4月1日付で、泉澤社長から伊藤社長に社長がバトンタッチされます。
泉澤社長のときは構造改革を進めていましたが、次の伊藤社長はどのような動きを取るのかが注目するポイントです。
技術畑出身ということで、新規の技術開発などでは大きな力を発揮すると思われますが経営に関してはまだ未知数です。
社長がこれからどういった経営をしていくのか今後注目しておきましょう。
決算説明会で社長が話をしている動画を会社HPから確認できるので、チェックしておくのも重要です。
まとめ
今回の第3四半期決算で三菱重工は好調な様子を伺えましたが、すでに織り込み済みで株価は無風でした。
好調な理由は、エネルギー関連と防衛関連が強い追い風を受けていることによるものです。
長期投資家として今後の三菱重工をみるなら、今後世の中の移り変わりに柔軟に対応していけるのかを考えなければいけません。
そのためには、やはり経営力の見極めがかなり大事になってきます。
長期投資のコツはとてもシンプルで、いい企業を長く持ち続けると企業の成長に伴い資産はどんどん増えていきます。
いい企業の見極め方を身につけると、将来は明るいので勉強してみるのもおすすめです。
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