三菱商事の決算はどうだった?長期投資の観点からみた三菱商事の今後を徹底解説

三菱商事の決算発表が2月6日にあったけど「決算はどうだったの?」と気になりますよね。

また、三菱商事の決算を受けて「買うべきかなのか保有している人は売るべきなのか」今後の投資判断に悩んでいる人が多いようです。

そこで今回は、つばめ投資顧問が三菱商事の直近の決算発表について詳しく解説していきます。

加えて三菱商事を今後買うべきなのか売るべきなのか、どのような観点で判断すればいいのかを紹介します。

この記事を読むと、投資判断をより明快にできるようになるでしょう。

ぜひ最後までご覧ください。

三菱商事の直近の決算はどうだった?

まずは、三菱商事の決算がどうだったのかについて解説します。

また、決算を受けて株価はどう動いたのか見ていきましょう。

連結純利益が1,308億円の増益

 2025年2月6日に、第3四半期決算が発表されました。

内容を見てみると、前年同期比で連結純利益が1,308億円の増益です。

三菱商事に投資している人にとっては、ひとまず安心といったところですね。

第3四半期の決算がある時は、業績予想の上方修正や下方修正が出ることが多いですが、今回は据え置きとなりました。

株価はどうなった

今回の決算発表では大きな材料はなく、株価はほとんど動きませんでした

この1年の株価を見ると下げ続けていて、約10%下落しています。

2024年5月のピークから見ると30%以上下落していて、この高値で買って今不安になっている人も多いのではと思います。

三井物産の株価が下落、買い時か?三菱商事や伊藤忠商事との比較も

三菱商事を決算説明資料から分析

今回の決算発表は表面上増益となりましたが、深く分析をしてみるとそこまで好調ではなさそうです。

業績は約1,300億円の増益で大きく増えていますが、通期見通しは修正されませんでした。

つまり、第4四半期の業績があまり良くないといっているようなものです。

そこで、この章では増益であるにもかかわらず通期見通しが修正されなかった理由を深掘りしていきます。

なお、企業を分析する際は決算説明会資料を参考に分析をするのがおすすめです。

決算説明資料には利益が増減した理由など、細かく分析するための手がかりが多くあります。

投資初心者の方は、企業分析をする際当記事を参考に決算説明資料にも目を通してみてください。

好調ではない理由

ここでは、三菱商事が増益であるにもかかわらず、通期見通しが修正されなかった理由を深掘りしていきます。

見ていく箇所は、今回の純利益増加に貢献した以下のセグメントです。

  • 金属資源
  • 地球環境エネルギー
  • 食品産業
  • S.L.C

それぞれ解説します。

金属資源

金属資源のセグメントでは、資源を採掘するための鉱山に投資をして利益を得るビジネスをしています。

金属資源のところを見てみると利益は伸びていますが、詳細を確認してみましょう。

プラスの要因は豪州原料炭事業(炭鉱売却)と記載されています。

一方でマイナス要因をみると豪州原料炭事業(数量減少・市況下落)と書いてあります。

ちなみに、原料炭とは鉄を作る時に必要となる石炭のことです。

先ほど金属資源セグメントでは投資をしているといいましたが、投資しているからには買うこともあれば当然売ることもあります。

つまり、プラスの要因の豪州原料炭事業(炭鉱売却)は売却益です。

なので、これは一度きりの利益となります。

それに対してマイナス要因である豪州原料炭事業は数量減少、市況下落ということで、売れる量が減っていてさらに収益が低下しています。

原料炭の価格は、2021年から2023年にかけてウクライナ戦争などの影響で価格が大きく上がったタイミングがありました。

ですが、直近の価格は落ち着いていて2017年頃から見ると一番低い水準になっています。

このことから、原料炭事業の風向きはいま怪しくなってきているといえます。

地球環境エネルギーにも悪影響が出てきている

金属資源のセグメントの苦しい状況により、地球環境エネルギーセグメントにも影響が出ています。

一応増益にはなっていますが、詳細を確認してみましょう。

プラスの要因として、アジア・パシフィックLNG事業(過年度会計処理見直しに伴う減価償却減)とあります。

要するに、これは会計処理方法の変更ということで1回きりの利益です。

またマイナス要因を見ると、シェールガス事業の(市況下落)やLNG関連事業(スポット価格下落)がありいずれも市況価格が下落していて苦しい状況です。

食品産業

食品セグメントも、大きな増益になっていますが細かく見てみます。

プラス要因として海外食品事業(前年同期が減損の反動)とあり、これは前年同期比の数値が減損していたため当期は大きくプラスに見えることを表しています。

また、日本KFCホールディングス株式会社とPRINCESの株式を売却してプラスになっているとのことですが、これらも一時的な利益です。

大きな増益に見えている食品産業も、大半は一時的な利益によって生れています

S.L.C

S.L.Cとは、スマートライフクリエーションの略で生活に関係する分野を幅広く扱う生活産業グループのことです。

ここのプラス要因は、ローソンの株を売った時の金額が上乗せされています。

これが1,000億円を超えるかなり大きな金額になっています。

その結果、S.L.C事業も大きな増益となっていますがほとんどが一度きりの利益です。

一時的な利益の増減

全体で見ると増益となっていますが、一時的な利益によって増益をなんとか確保しているような状況だといえます。

ここでは、具体的な数値でまとめてみます。

プラス要因となった利益

具体的な数字で表してみると以下のとおりです。

  • ローソンの持分法適用会社化による評価益(+1,225億円)
  • PRINCES(海外食品事業)の売却益(+154億円)
  • 日本KFCホールディングスの株式売却益(+205億円)
  • 豪州原料炭事業の炭鉱売却益(金額不明)

ちなみに、これらを足すと今期の第3四半期の増益分1,308億円を超えてしまっています

マイナス要因となった損失

ここでは反対に、今期だけで出した損失も見てみましょう。

電力ソリューションセグメントの国内洋上風力発電事業で大きな損失を出しています。

洋上風力発電とは、海の上に風力発電を作る事業のことです。

出典:NewsPicks【真相】三菱商事が「522億円」の巨額減損を計上した

NewsPicksの記事ですが、三菱商事が国内洋上風力発電事業で522億円の巨額損失を計上したとあります。

国が発注した仕事でしたが、そもそも利益が残る事業なのかと当初から疑問視されており予想通りに損をすることとなりました。

この電力ソリューション事業の522億円の損失は一時的なものとなります。

この損失は今回限りなので、上の節の金額から減らすべき数字です。

当面は厳しくなるかもしれない

この一時的な利益の増減を見ると、特にローソンの持分法適用会社化による評価益(+1,225億円)が大きいです。

今期の一時的なものを除くとほとんど増益になっていないことがわかります

また、鉱山を売ってしまったことや原料炭価格が下がり続けていることを考えると、継続的な収益が次期以降は減ってしまうので当面は苦しくなるとみています。

三菱商事の株価は下落を続けていますが、株式市場はこの状況を見越していたとも考えられるでしょう。

次の第4四半期の本決算が発表される時に、来期の業績予想が公表されますが足元の状況を見ると厳しいのかもしれません。

【三菱商事】株価上昇!売るか?買うか?持ち続けるか?数字でわかる三菱商事の盲点とは?

三菱商事の特徴

ここまでは、三菱商事は当面の間苦しい状況に陥りそうだということを解説しました。

ですが様々な角度から見ると、必ずしも三菱商事が投資対象として悪いとはいえません。

ここでは、長期投資の観点で考えるとどうなのかを紹介します。

長期投資を行う上では、その会社がどういった特徴を持っているのかを押さえなければなりません。

そこで、三菱商事の特徴について見ていきましょう。

資源投資型のビジネスモデル

三菱商事は原料炭や鉄鉱石、天然ガスなどに投資しているため、資源価格が上がっている時には高い価格で売れるので儲かります。

ですが、資源価格が下がると掘るためのコストなどで利益が出なくなってしまうこともあります。

三菱商事の利益は大半が資源によるものなので、業績は資源価格の変動に大きく左右されてしまう特徴があることをわかっておきましょう。

上の画像をみてもわかるとおり、地球環境エネルギーと金属資源セグメントの2つだけで大部分を占めています。

ちなみに、これまで業績が良かったのは資源価格が上がっていたことが理由の1つとしてあります。

投資事業

三菱商事は様々な事業に投資して、そこから上がってくるリターンを積み重ねて利益を生み出しています

普通の会社は基本的に1つの事業に特化していますが、三菱商事は資源を含むいろんな事業に投資をする会社です。

投資なので洋上風力発電のように失敗することもありますが、トータルでプラスにして利益を得ることを目的としています。

三菱商事が投資した金額に対してどれだけ利益が上がっているのかを表すROAは4%程度で、リターンが高いわけではありません。

分散しているので急激な伸びはないかもしれませんが、安定していて大きな変動なく収益を得続けられることが期待できます。

総合商社のビジネスとは?三菱商事の強みをわかりやすく解説!バフェットが「100年後も生き残る」と称賛するワケ

三菱商事のPERの推移は?

2019年のPERは、だいたい7倍程度となっています。

2024年に入ってから、大きく株価が上がった局面ではPERが15倍になっています。

やはり資源価格の変動リスクがあるという冷静な観点で見ると、PER15倍は高いです。

2024年2月現在、PERは約10倍です。

収益性は低く成長性が高いわけではないので、PERはこのくらいが妥当と考えます。

三菱商事の配当金利回り

配当金は、利益からでます。

PERが低いということは、利益に対して株価が低いことを表していますから配当利回りは高いといえます。

2024年2月現在の利回りは、約4%と高水準です。

さらに三菱商事は、累進配当を宣言しています。

累進配当とは、基本的に配当を減らさずに増やし続ける方針のことです。

注意点として、累進配当は緩い約束のようなものだと思っておきましょう。

仮に資源価格が下がって大赤字になれば、配当を減らすことも普通です。

累進配当は確実なものではありませんが、配当金目当ての投資家にとっては悪い話ではありません。

三菱商事を長期投資の観点から投資判断

ここまで、三菱商事の特徴について解説してきました。

事業的には様々なところに投資をして利益を得ている会社ですが、投資先が資源に偏っている部分もあり資源価格に業績が左右される企業だといえます。

そのためリスクが高いと見られていて、PERは低めとなっています。

ですが、配当金利回りは高く比較的安定して増えていく可能性のある銘柄です。

これらを踏まえ買うことを検討している人、売るべきか検討している人がそれぞれどの観点から判断すればいいのかについて長期投資家目線で解説します。

買おうか悩んでいる人

三菱商事の株を買おうか悩んでいる人は、配当金か値上がり益に着目して選ぶことがおすすめです。

ここでは、これら2つのことについてみていきます。

配当金

三菱商事をいま(2025年2月)に買えば、約4%の配当が得られます。

将来事業利益が増えて企業が拡大していくと考えている人は、配当が増えていく可能性もあるため配当金目当てで買うのもありでしょう。

三菱商事の将来に期待して、株価の変動を無視しようという考え方も悪くありません。

ただ過去の株価水準から見ると2024年2月現在は極端に割安ではないため、短期的な株価変動には注意が必要です。

値上がり益

短い期間では下げることもあると思いますが、長い期間で見ると市況価格の影響で業績がよくなるときに株価も上昇していく可能性はあるでしょう

ただ先ほども三菱商事が好調ではない旨を解説しましたが、業績が悪くなるかもしれないので目先で急激な上昇はしばらく見込めない可能性が高いです。

原料炭や鉄鉱石の価格が下がっている理由として、中国の景気が弱いことが原因の1つとなっています。

中国では、近年マンションなどを次々と建設していましたが景気の悪化により建物の建設は減っています。

このことから不景気が続くと、鉄の需要が減るので原料炭や鉄鉱石の価格が下がる可能性が大きいです。

また三菱商事は海外の資源に投資しているため、円安メリットを受けて利益が上がっているところもあります。

ですがアメリカのトランプ大統領は金利の引き下げを発言していて、日銀は金利を引き上げていることから日米金利差縮小で円高になっている動きもあります。

なので短期的に見ると、下落する可能性が十分あると考えておいた方がいいかもしれません。

ですが、ここ1年間株価は下がり続けているのですでに織り込まれている可能性もあります。

そのため今買っても上がらないとはいいませんが、割安な水準ではないことは頭に入れておくのがよさそうです。

売却しようか悩む人

決算を受けて、保有している株を売却しようか悩む人は以下の観点から決めるのがおすすめです。

  • 精神的不安を感じる
  • 短期的な業績悪化と株価リスクを避けたい
  • 三菱商事自体に投資価値があるのか

それぞれみていきます。

精神的不安を感じる

業績が悪くなれば株価は下がるので、安心して保有していられるかという問題もあります。

将来が明るいと思っていたとしても、業績が悪化すると不安になりますよね。

それで心が落ち着かないなら一旦売却して様子見するのも選択肢の一つとしてはいいかもしれません

やはり、売らないと冷静になれない部分もあると思います。

そのため、多く持ちすぎていると思ったら一部売ってみるのも一つの手です。

短期的な業績悪化と株価リスクを避けたい

これまで解説したとおり、株価が下落していて業績も悪くなりそうだからということで前もって売っておくのもいいでしょう

ただ、将来になって「自分が持っていたあの銘柄どうなったかな」と思ってふと見ると大きく上がっていたりする場合があります。

投資では辛抱強く我慢して持ち続けられた人の方が、最終的に利益を得る確率が高いという話もあるので、株価リスクで売却する場合この点気をつけた方がいいかもしれません。

三菱商事自体に投資価値があるのか

先ほど、三菱商事の収益性はあまり高くはないと解説しました。

企業が効率よく稼げているのか計れる、ROEを見てみます。

ROEは10%を継続的に超えてくれば優秀だといえますが、直近の2024年3月期は11.27%と高いです。

その前は15%程度あったので比較的高かったのですが、少し遡ってみると2021年3月期はコロナウイルスの影響もあり3%となっています。

2016年に関しては赤字で、この時は資源価格が下がってしまったことからトータルでみると9%ぐらいです。

三菱商事は資源価格に売上が影響されてしまうことから、安定した収益を上げ続けられないところがやはり懸念点となるでしょう。

投資する際は、このことを考えておく必要がありますね。

【三菱商事】ピークから30%下落!買って良い人、ダメな人

まとめ

今回は三菱商事の決算発表を分析して、原状や今後どうなりそうなのかについて解説しました。

三菱商事は、数字上では好調に見えますが詳しく詳細を見ていくと苦しい状況であり当面はその状態は続きそうであることがわかりました。

これを踏まえて、どんな投資をしたいのかを自分のスタイルに合わせて考えることがとても大事です。

かなり割安な時に買うのも人によってはありだと思いますが、本当の長期投資という意味で資産を伸ばし続けたい人はやはり収益性の高い企業を買った方がいいかもしれません。

つばめ投資顧問の有料サービスでは、この記事で紹介したようなことを自分で考えられる投資家を育てたいと考えています。

もし気になる方は、ぜひ無料メルマガから登録してみてはいかかでしょうか。

無料メルマガに登録すると電子書籍『株式市場の敗者になる前に読む本』をはじめ、様々な投資に関する大事な情報をお届けしています。

メルマガに登録して、この機会にぜひ読んでみてください。

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

詳細はこちら
サイト訪問者限定プレゼント
あなたの資産形成を加速させる3種の神器を無料プレゼント

プレゼント①『株式市場の敗者になる前に読む本』
プレゼント②『企業分析による長期投資マスター講座』第一章
プレゼント③『YouTubeプレゼン資料』

メールアドレスを送信して、特典をお受取りください。
メールアドレス *
※送信したメールアドレスに当社からのお知らせやお得な情報をお送りする場合があります。

※個人情報の取り扱いは本>プライバシーポリシー(個人情報保護方針)に基づいて行われます。
※送信したメールアドレスに当社からのお知らせやお得な情報をお送りする場合があります。
※上記は企業業績等一般的な情報提供を目的とするものであり、金融商品への投資や金融サービスの購入を勧誘するものではありません。上記に基づく行動により発生したいかなる損失についても、当社は一切の責任を負いかねます。内容には正確性を期しておりますが、それを保証するものではありませんので、取扱いには十分留意してください。

気に入ったらシェアしてもらえると嬉しいです!

コメントを残す

Popular Article - よく読まれている記事Popular Article

  • オリエンタルランド(東京ディズニーリゾート)の株価が下落している3つの理由
    2024年に入りオリエンタルランドの株価が大きく下落しています。 出典:株探 今回はオリエンタルランドの現状を詳しく分析し、投資リスクを考え...
  • 【住友化学】株価60%暴落の2つの理由 PBR0.4倍だから買って良い? 
    日本の株式市場が盛り上がる中、大きく株価を下げている企業があります。 それは、住友化学です。 出典:株探 24年2月2日の第3四半期決算では...
  • ヤクルトの株価下落が止まらない!その原因と今後の見通しをアナリストが解説
    今回はヤクルトについてです。 ヤクルトの株価が下落し続けていますが、その理由と今後の見通しについて解説したいと思います。 長期的に成長してい...
  • 【東京メトロ】ついに上場!今年最注目のIPO、買うべき?
    東京メトロがいよいよ上場ということで、買うべきかどうか迷っている方も多いのではないでしょうか。 私が証券会社に勤めていた頃に上場をお手伝いし...
  • 銀行株は今後どうなる?そろそろ売り時?
    今回は銀行株についてです。 銀行株が上がりましたが、もう売るべきなのか、まだ持ち続けるべきなのか、悩んでいる方はぜひお読みください。 売るか...

Article List - 記事一覧Article List

カテゴリから記事を探す