信越化学の株価が直近1年間で30%以上下落していて「信越化学の株価は今後どうなるの?」と不安に思っている方が多いです。
また「株価が急落している理由を知りたい」という声が多数届いています。
結論からいうと、信越化学の株価が今後どうなるのか判断するのは現在難しい局面にあります。
そこで今回はつばめ投資顧問が、今後株価がどうなるのかを判断するポイントや株価下落の要因について解説します。
ぜひ、投資判断の参考にしてみてください。
目次
信越化学の事業内容
まずは、信越化学の事業内容についてみていきましょう。
ここでは、信越化学が製造している製品について解説します。
信越化学の主力製品
信越化学は日本を代表する化学メーカーであり、2つの主力製品を持っています。
1つ目は塩化ビニル樹脂です。
塩化ビニル樹脂は、建築物の配管などに使用される素材です。
信越化学は、塩化ビニル樹脂の世界シェアでナンバーワンを誇っています。
2つ目はシリコンウエハーです。
あらゆる半導体の基盤となるシリコンウエハーを製造しており、30%強の世界シェアを占めています。
シリコンウエハー製造企業は世界中に存在しますが、信越化学は品質面で優位性を確立しています。
純度においてほんの少しの不純物も許容しない高品質なウエハーを製造できる企業は、信越化学とSUMCOの2社だけです。
信越化学は高品質な製品製造と品質管理の徹底により、この分野でトップの地位を築いています。
信越化学の主力製品以外について
塩化ビニル樹脂とシリコンウエハー以外の製品でも、シリコーンやセルロース誘導体など成長要因となりえる製品を手掛けています。
ですが、これらの製品は主力2製品と比べて競合が多く、シェアも2桁%に達していない製品も多い状況です。
これらの製品は、まだ圧倒的な優位性を確立できておらず研究開発能力の強化が重要な段階にあります。
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信越化学の業績推移と成長要因
信越化学は特に2022年、2023年において業績が大きく成長しました。
2022年、2023年に業績が伸びた理由としては、主力製品である塩化ビニル樹脂とシリコンウエハーの需要が増えたからです。
塩化ビニル樹脂の需要が増加した理由は、米国では以前から住宅が慢性的に不足していたところ、コロナウイルスが蔓延したことにより人々の住宅需要が高まったためです。
そのため、2022年ごろからの米国の住宅着工件数増加に伴い、塩化ビニル樹脂を含む「生活環境基盤材料」の需要が急増しました。
信越化学は、過去に米国で塩化ビニル樹脂製造のための設備投資を行っていました。
その工場稼働時期が、需要増加の時期と重なったことで業績を大きく伸ばすことに成功しました。
もう一つの成長要因は、半導体シリコンウエハーの需要増加です。
コロナ禍でのパソコン需要増加やテレワークの普及、DX化の加速により半導体需要が大幅に増えたため結果として売上が伸びました。
信越化学の経営戦略
ここでは、信越化学の経営戦略についてみていきましょう。
信越化学の経営戦略として挙げられるのが、凡事徹底と不況期の投資です。
それぞれみていきましょう。
凡事徹底
信越化学の経営判断を行っていたのは、2022年に逝去された金川千尋氏です。
金川氏は、凡事徹底と少数精鋭での即断即決を重視している経営者でした。
凡事徹底ということで品質管理の徹底、コスト削減と品質向上の両立、納期の厳守、顧客とのコミュニケーションを通じた市場把握などを確実に実践していました。
住宅需要の増加時期に合わせて工場が稼働しはじめたことは、偶然ではありません。
米国の設備投資は、このような経営姿勢があったからこそできた経営判断の結果と考えられます。
工場建設は、通常2〜3年の計画期間を要するものです。
コロナウイルスの発生は予測できなかったかもしれませんが、米国の住宅需要の増加傾向は把握していたと思われます。
不況期の投資
信越化学は景気が悪化している時期や、資金繰りが厳しい時期に設備投資を増強する戦略を取ってきました。
これにより、景気回復時には十分な生産能力で需要を確実に取り込むことができました。
結果として、業界内でのシェア拡大に成功しています。
化学メーカーは、需要が高い時と低い時の差が大きいため売上の変動が激しい産業です。
一般的に、多くの企業は景気悪化時に設備投資を控える傾向にありますが、信越化学は逆のタイミングで投資を行っています。
2008年のリーマンショック時にも工場を新設しており、これらの不況期の投資が後の需要増加時に対応できる体制を構築することにつながりました。
また、需要過多の時期に過剰投資を行いその後の供給過剰による赤字に陥るリスクについても、信越化学は顧客との長期契約締結により対応しています。
「好況時も不況時も安定した供給量を保証する」という契約を結ぶことで、市場全体の変動が大きい中でも比較的安定した業績を維持しています。
信越化学は景気変動の影響を受ける
信越化学の主力2製品の需要は、景気に左右される傾向があります。
塩化ビニル樹脂は住宅だけでなく様々な用途で使用されるため、景気動向の影響を受けやすいです。
そのため、中国や米国の景気の影響も大きく受けやすいといえます。
信越化学のシリコンウエハーは、主にメモリやロジック向けです。
メモリやロジックの主な用途は、パソコンやスマートフォンなど産業機器向けが中心です。
これらの分野は現在あまり活況ではなく、需要回復の見通しがまだ明確でない状況だといえます。
AI半導体分野は急成長していますが、AI半導体向けウエハーはウエハー市場全体の需要において現時点ではまだ占める割合が小さいです。
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信越化学の株価急落の理由は?
足元での株価急落の理由は、2022年、2023年の急激な業績上昇が一服したことが主な要因だと推測します。
現在、塩化ビニル樹脂の需要が落ち着いてきています。
その主な理由は、中国の景気悪化による建設需要の減少や、北米住宅需要の一時的な活況が沈静化したためです。
このことから、株価は下落しているようです。
またシリコンウエハーについては、半導体業界の景気サイクルであるシリコンサイクルに沿って長期契約を結んでいるものの、現在は需要減速局面にあることも株価下落の原因と考えられます。
他にも、主力のパソコン・スマートフォン向け需要の回復見通しが不透明であることも株価が下げている原因の1つでしょう。
これらの要因から、市場は短期的な業績回復を慎重に見ていて下落を続けているようです。
信越化学の株価は今後どうなる?
信越化学の今後の株価についてですが、長期投資の目線でみるとポジティブな要因が少なからずある一方で、短期的にはネガティブな要因が混在しています。
長期的には、塩化ビニル樹脂とシリコンウエハーの市場自体は年平均5〜6%で成長すると見込まれており、この市場拡大の波に乗れる可能性が高いでしょう。
ただし、金川氏の逝去による経営判断の変化は今後注目すべき事項になります。
今後も絶妙なタイミングでの設備投資や顧客との良好な関係維持など、金川氏が主導してきた経営手法を継続できるか不明瞭だといえます。
また、短期的には足元の景況感が悪化していて、その影響を免れることはできないでしょう。
信越化学の投資判断で悩んでいる方は、これらの要因を中心に今後の株価の行方を予想してみてはいかがでしょうか。
信越化学のバリュエーション
信越化学は設備産業であるため、PBRでの評価が最適です。
現在のPBRは約2倍弱であり、過去平均と比較してみると平均的な水準だといえるでしょう。
PERは現在約16倍で、平均をやや下回る水準です。
2025年3月期決算の際に減益予想が出た場合、PERが上昇し株価に下落圧力がかかる可能性もあるためその点注意が必要です。
総合的に見ると、現在の株価は平均的な水準であり短期的な株価の動向は不透明です。
長期的な観点でみると、主力製品以外の成長が見込めれば上昇余地はあると評価できます。
また、将来の成長には絶妙なタイミングでの設備投資判断など、金川氏が主導してきた経営手法を継続できるかどうかがカギとなるでしょう。
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まとめ
今回は、信越化学について解説しました。
信越化学工業は優良企業としての地位を保持していますが、以前と比較して不確定要素も存在する状況です。
日本の産業を支える企業として長期的な成長が期待される一方、短期的には景気悪化懸念から弱含みの展開が続く可能性があります。
信越化学の長期的な見通しに関しては、現在判断が難しい局面で投資家自身の判断が重要でそれぞれの投資方針に基づいた意思決定が必要となるでしょう。
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