10倍株を分析して気づいた「3つの特徴」とその使い方(私はバフェットに近づけるか:後編)


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スルガ銀行(8358)への投資で急落銘柄への投資に限界を感じた私は、過去の10倍株やそれに匹敵する銘柄を分析しました。

炎上銘柄を買えば短期で儲けられる?私がはまった落とし穴(私はバフェットに近づけるか:中編)

2019.04.11

10倍株に共通する「3つの特徴」

具体的にはペッパーフードサービス(3053)ヤマシンフィルタ(6240)ニトリHD(9843)などです。

これらの銘柄に共通していることは、端的に言うと以下の3点です。

  • 利益を伸ばしている
  • 株価が伸びる前は見向きもされない(PER10倍以下)
  • 勢いがつけば必要以上に大きく上昇する(PER50倍など)

伸びる株の条件を見過ごしていた自分

利益を伸ばしている株が伸びるのは当たり前のことです。しかし、愚かにも私はここに重点を置いていませんでした。それは『株式投資の未来』に書かれている以下の内容がずっと頭にこびりついていたからです。

成長に目を奪われると、落とし穴に足をとられる。これにとらわれた投資家は、なんであれ次の波と思えるものに資産を注ぎ込む。だが時代の最先端を行く企業が、投資家にとってお買い得であることはめったにない。(成長性の罠)

ジェレミー・シーゲル『株式投資の未来』日経BP社、2005年

成長株には大抵高いバリュエーション(PER等)が付きます。しかし、やがて期待が剥げるとPERは低下し、また競争環境の激化によって利益も低下します。この本をお手本にするならば、安定した企業を低いバリュエーションで買うことが正解と考えられたのです。

確かに、それは一つの正解でしょう。この投資を続ければ、長い目でインデックスを上回れるかも知れません。

しかし、個別株を買う以上、インデックスを少し上回るくらいでは労力をかける意味がなくなってしまいます。インデックス投資が大量生産のテディベアなら、個別株投資は1点物の木彫りの熊を狙わないといけないのです。

「めったにない」は「まれにある」

引用に戻ると、最後に「めったにない」と書かれています。裏を返せば「可能性はゼロではない」ということです。

そこで、2番目の話になります。確かに知れ渡った成長株のバリュエーションは割高になりがちですが、そうでない場合もあるということです。

具体的には、まだ市場がその成長性に気づいていなかったり、これまで成長してきたけどそろそろ限界だろうと思われるパターンです。ペッパーフードやヤマシンフィルタは前者、ニトリは後者と言えます。

前者を見つけることは簡単ではないでしょう。常に企業の動向に目を見張る労力とセンスが要求されるのは間違いありません。

そうなると、より客観的に見出しやすいのは後者ということになります。すでに一定の地位を築いている会社が、成長性の鈍化などの懸念により、株価が低迷する現象です。

ある会社の成長が続くと、「もうこれ以上伸びないだろう」と投資家は勝手に思ってしまいます。コイン投げでずっと表が続くと、次はそろそろ裏が出るだろうと思ってしまうのと同じです。これを「ギャンブラーの誤謬」と言います。

しかし、実際の企業は、これまで勝っていれば利益が大きく積み上がっているため、それを原資に次の成長に向けた投資を行うことができます。こうして、勝ち組の企業はさらに勝ち組になるのです。これは資本主義の原則そのままと言えます。

ギャンブラーの誤謬により、成長企業でも低い評価になることが稀にあります。32期連続増益を続けるニトリですら、PER10倍に据え置かれる時期がありました。もちろん、株価には相場全体の環境も影響してきます。

したたかな投資家は、そのようなタイミングでいい企業を割安な価格で買っているのです。これを行うためには、日頃から良い企業を探し、タイミングが訪れたら思い切って買いを入れなければならないのです。それは決して多くはないでしょう。

直近でも、昨年のクリスマス頃に大幅な株価下落が訪れました。そのタイミングでは、考えられないような割安な株価が付いていたのです。買っていれば、今頃は大きく報われたことでしょう。

良い企業はやがて熱狂を呼ぶ

優良な成長株を割安な価格で仕込めたら、あとはひたすら待つだけです。株価は横ばい、あるいは下落するかも知れませんが、利益が伸びているならその投資が報われる可能性は高いでしょう。バフェットも以下のように言っています。

企業の実態がマーケットや株価に反映されるまでに、随分と時間がかかってしまうことがあるかもしれません。しかし、事業の成功が一般に認知されるのにどんなに時間がかかろうとも、その企業が期待通りの高い成長をする限り、問題はありません。むしろ、認知が遅くなった方が、投資家にとって都合がいい場合が多くあります。投資家にとってバーゲン価格が続くわけですから。

成長企業に投資していれば、市場がそれを認知すれば株価は上昇してきます。そして、事業がうまくいっているほど、株価は勢いを増します

時価総額がそこまで大きくないペッパーフードやヤマシンフィルタはもちろん、1兆円を超えるニトリでもPER30倍という「割高」と言える水準にまで上昇したのです。

逆に言えば、これほどの水準になってから投資しても遅いということです。ここでは再び、『株式投資の未来』にある「成長性の罠」をもう一度思い出さなければなりません。

「良い企業を持ち続ける」の真意

ここまで分析して、ようやく「損失の可能性は抑えつつも、一方でうまくいけば大きなリターンをあげられるもの」の可能性を見いだせた気がします。それは、

すでに知られているような優良銘柄が、投資家の気分や相場の流れで割安と呼べる水準にまで下がった時にしたたかに買いを入れ、あとは黙って企業の成長と相場の回復を待つ

ということです。少しはバフェットの考えに近づけたでしょうか。

すでに地位を確立している優良銘柄なら不測の事態を軽減できますし、利益を再投資することで、得意分野でさらに価値を伸ばすことができます。

投資家においては、取引回数は年に数回で済むでしょう。これなら、普段は仕事で忙しい人でも十分実践できます。時間が節約できるだけでなく、手数料や税金も最低限です。売らなければ譲渡税は取られません。

知っている優良企業なら、よくわからない新興企業をハラハラしながら買うよりも気持ち的に安心できるでしょう。自分の業界に近ければ、なおさら動向を理解できます。

私は、この方法で「普通の人」が投資に親しんでもらい、資産を増やして心に余裕を持ちながら暮らしてもらいたいと願っています。私の能力もまだまだ未熟ですが、少しずつでも改善しながらより良いアドバイスをしていきたいのです。

間違いなく言えることは、時間はあなたの味方だと言うことです。早く始めれば始めるほど、複利効果で資産を増やしやすくなりますし、あなたの能力そのものも向上するでしょう。

仕事をリタイアした時に、いきなり投資に手を出して退職金をパーにしてしまう心配もありません。

最終的には、泰然自若とした精神状態で投資や人生に臨んでいただくことが理想です。旅はまだまだはじまったばかりですが、ぜひ私とその道を歩んでみませんか?

あなたは1億円貯めて何をしたい?投資に不可欠な目標を設定する

2019.03.15

執筆者

執筆者:栫井 駿介

栫井 駿介(かこい しゅんすけ)

つばめ投資顧問 代表
株式投資アドバイザー、証券アナリスト
ビジネス・ブレークスルー(株)「株式・資産形成実践講座」講師

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